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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
悪魔が死神と出会う時編
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魔王の演説 3

結果は聞いた。

証拠は見るしかない


 悪魔の囁きか? それ以上か? 荒唐無稽な告白に俺は口元を緩めていた。


「なんだそりゃ? 即死魔法? 中学生の黒歴史ノートの主人公みたいな設定だな」


 軍人たちがそう言うと中には笑い始める人間もいた。

 俺もそんな感想を抱いた一人だ。奴は危険だが、それは無い。命だけじゃなく、記憶とか概念まで? そんな事は不可能だし、魔法の領域じゃない。

 奴は自分を大きく見せたいだけの目立ちたがり屋君だったのか?

 命を一瞬で奪い去る魔法は確かに脅威だが、魔法すらもその力でかき消したりするわけがない。


「死神の飼い猫もおかしくなったわね。聞いているこっちが恥ずかしいわ」


 美樹も頭を抑えて呆れたような声を出している。

 魔理は黙って画面の死神の飼い猫を見つめているが、即死魔法の件には首を傾げていた。その中で顔色を変えていた人物が数人だけいた。

 黒岳、椿、真紀の三人だった。


「おい、どうしたんだ? そんな顔して、奴の言葉を信じたのか?」


 俺がそう言うと、黒岳は瞳を紅く光らせた。


「奴が、冗談や虚勢を張っている様に見えるのは幸せだな。アイツは、これっぽっちも嘘を吐いてなんかいないぞ? 今頃、国の上の連中は顔面蒼白なはずだ! アイツ・・・・・・宣戦布告のつもりか」

「奴の言葉には背伸びはない。某は奴と対峙してみたから解る! 奴が、なぜあのような猛者共の頂点に立ち、我々と対等に渡り合えるか。その理由は今の魔法の存在であろう」


 黒岳と椿はそう言うが、それでも証拠がない。

 真紀は思いつめた表情で何も言わない。彼女のスキルとは真逆の力だ。


「真紀、大丈夫か?」

「大丈夫・・・・・・少し、怖いって思っただけ」

「安心しろ、そんな力なんて存在しない。アイツの嘘だ」


 俺は真紀を元気づけようとしてそう言うと、彼女はポツリと言う。


「逃げるのは簡単、真実を受け入れる事に比べれば」


 その時の彼女の顔は、正明ととても似ていた。



「かつて人類は二分された。大いなる力を持つ人間と、弱い人間。当然、弱い人間は負けた。戦争じゃない、自分にも負けたんだ。弱い自分でいる事に甘んじて居場所も尊厳も秘めた才能すらも奪い取られたんだ。どんなに魔法と科学が進歩しても人間は変わらなかった。何も、変わらなかった」


 正明は悲し気に呟くと足元のドクロを拾い上げる。

 

「原初の人類には魔法の技術は無かった。そんなある日、とある男が彗星の如く舞い降りて魔法を人々に教えた。だが、人間は自由を手に入れる術を知らなかった。そんな人間に、とある女が野火を広げるが如くに科学を与えた。人間達はたった数年で、繁栄を極めたんだ。だが、滅びた。科学を与えた女が、夫であった魔法使いから得た知識を自分だけの物として完成させた即死魔法で大半の力有る者共を抹殺したんだ」


 正明の手の平でドクロは砂になって崩れ落ちていく。


「だが、それに抵抗する者もいた。紅の英雄と魔法の才能を持つ者達は強大で恐ろしい力を秘めた彼女を殺そうとしたんだ。彼女は死に、多くの強者が倒れた。そして、彼女が倒れてその後ろにいた弱者は殺された。即死魔法は人類の四割を殺したにすぎない。だが、後の戦いの後に、人類は1割まで減ったのだ。それは何故か? 強者が弱者を呪い、自らの欲を満足させるために殺したからだ」


 正明は手のひらについた砂を払うと画面を睨む。


「そして、これらの歴史は繰り返す。広がり続ける選民意識、不自由に甘んじる弱者、暴走する強者の群れ。また、俺はこの力を使う事になるのか? また、間違えるのか? この放送を聴いている者に告げる」


 正明はそこで魔装を発動させる。

 単なるフェイクだが、この姿の威圧感は衰えない。

 漆黒の鎧、蒼い宝石が敷き詰められたようなライン、大きな体躯に白銀の剣。


「魔法が嫌でも、不得意でも、たとえ、魔力が無くても。魂までを、戦う意思を敗北させる理由には断じてならない!」


 正明は剣を地面に突き刺す。


「認識を改めろ、魔法が不得意なだけで劣等と罵られた者共よ! 動け! 叫べ! 殺されても、不幸になっても! 変わるのだ! 世界は、人類は、魔法使いは、君たち弱者の手に委ねられる!」


 威厳溢れる男の声だ。

 大気が震えたようにも見えた。


「人を殺すだけの歴史を変えるんだ!! 権利を、自分の居場所を、確かに心に秘めた人間らしい愛情も、全てを取り戻す戦いの狼煙を挙げろ! 戦いは、殺しは、血を流すのは・・・・・・この、死神の飼い猫・・・・・・いや、我々、WELT・SO・HEILENに任せろ」


 その名前を出した正明は変身を解く。


「いつか、証拠が見られる。トレライ・ズ・ヒカイントよ勝負だ、200年前の様に、2000年前の様に! 勝負だ! 僕代では、逃がしたりしない・・・・・・歴代最弱の僕が、相手だ!」


 正明は即死魔法を発動する。

 普段は目に見えない、光も、匂いも、音も持たない即死魔法が意図的に見せられる。それは、悲鳴のような金切り声。

 そして、蒼く光る一筋の光に黒い闇が彼の手の平に現れる。

 星を飲み込むブラックホールの様な手がカメラを音も無く粉砕する。そして、その演説、いや、宣戦布告は終了した。


「・・・・・・早速、効果ありだな。親父が来ているぞ? どうするんだよ、正明」


 キセルを吹かして巧がカメラの死角から現れる。

 その問いに正明はサラリと答える。


「逃げようか」

何年ぶりだろう

愛しい人、覚えてる?

変わったね、背も低くなった

でも、その蒼い目は何千年たっても美しい

甘えたがりの君


なんで・・・俺を捨てたの?

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