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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
悪魔が死神と出会う時編
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魔王の演説 2

続きです!


「僕は触れたモノを殺すことが出来る。だが、この力はほんの一端でしかない」


 日本最高峰の牢獄、その最深部。

 そこを天井から他のフロアに風穴を開けて、伊達正明は自分と仲間達を移す映像配信用魔具へと、その先にいる数多の魔法使い諸君へと語り掛けていた。足元には灰と骨になった囚人達だったモノが転がり、そしてその奥の牢屋には一人の男がガタガタと震えながら言葉も発せずに涙を流している。

 正明は志雄の重力操作でこじ開けた天井から差し込む日の光を浴びながら言葉を続ける。その光景は皮肉にも舞台に立った役者にあてられるスポットライトの様だった。


「僕の使うこの力は、スキルではない・・・・・・魔法だ。触れた者の、いや、正確には僕の身体にまとわりつく何かに見つかったと言った方が良いだろう。それらは、生者、死者、物、事象、概念、記憶、摂理、因果、もしくは宇宙、あるいは神に至るまで、その存在や認識に至るまでの一切合切を無害な虚無へと還す事が出来る。僕がその気になれば、この地球すらも殺すことが出来るだろう」


 淡々と正明は即死魔法の概要を明かしていく。

 その放送に信憑性などを追及する者は沢山いるだろう。受け入れられない者、愚直に信じる者など様々だろ。だが、正明はお構いなしに話を続ける。


「信じるか? それとも、拒否するかは諸君の自由だ。殺人鬼の戯言、虚言、妄想と処理すれば安心して今夜も眠ることが出来るからな。だが、僕がこのトレライ・ズ・ヒカイント最強のラヴィリンス国立魔法使い収容施設の最深部に到達したのは、紛れもない事実だ」


 彼はポケットから左手を出すとカメラに向ける。


「小さな手だろ? 何のことは無い、僕は自慢でも自虐でもなく腕力でのケンカはからっきしダメだ。でも、僕のこの手や身体のどこかに触れただけでどんなに強くても敵や魔法は死んだよ。だが、これは話の本題ではない。本題は・・・・・・そもそも、何故魔法使いには過剰なまでの差別的な考えが根付いているのかだ。この日本だけじゃ無い、中国は? ロシアは? アメリカは? それだけじゃ無い、その他の国々は? 何処も同じだ。全てが同じとまではいかないが、学生は天才の紅と凡才の蒼に分けられる。大人たちはそれを強者と弱者関係なしで煽る」


 仮面から覗く蒼い光が一層強くなる。


「それは、遠い、遠い昔の出来事・・・・・・紅の英雄と蒼の魔王物語に起因している。あれは、世界を未知の力で奪い取ろうとした魔王に、一人の天才魔法使いが英雄となって立ち向かって見事魔王を討取ったと言う英雄譚。あの物語は、事実を元に作られた話だ。この、トレライ・ズ・ヒカイントに保存されている白い魔導書に記された古代文字を解読した結果浮かび上がったと言われているのは、子供達でも知っているだろう」


 静かな、ただし凛として人々の背筋を氷柱でなぞるかのような不気味な説得力があった。

 素人でも気付くのだろうか? この人物は嘘を吐いていないと言う確信の様な感覚を。もし、それがあるとしたなら見ている人々はその感覚に飲まれているのだろう。


「アレは半分本当で、半分は嘘だ。蒼の魔王は危惧したんだ。膨れ上がる一握りの天才達が抱く選民意識の果てに広がる殺戮を・・・・・・今の僕達の様に」


 その言葉に仲間達は手元に武器を召喚してガギン! と音を立てる。

 正明は小瓶を4個ほど浮かせると、魔法陣を展開してその中から漆黒の本を取り出した。とは言っても手に取っていない、掌から少し離した場所に浮遊させている。本を操り、開く。

 すると、蒼い光と共に莫大な魔法陣がフロアを包んで行く。

 

「後の世に向けて残された物語は1つだけ、それは御立派な英雄譚。そして、この本は物語とはとても言えない・・・・・・言うなれば、日記だ。とある女性の日常と、恋と、転落と、愛と、闘いの日々を書き連ねたものだ。この中にある言葉を引用して、真実へと話を紡ごう」


 正明は本をパン!! と閉じる。

 そしてハッキリと、そして染み渡るように呟く。


「君達は間違ったんだ。遠い過去に一度だけ・・・・・・私のように、信じる者を」


 正明達は知る由も無かったが、その言葉に街の人々は、そして海を跨いだ異国の人々すらもその言葉に嫌な予感を覚えた。

 魔方陣は消えることなく悲しい音色を奏でながら少しずつ完成に近づいていく。子守唄をオルゴールにしたような音色、冷たくて寂しい音が何かを型どっていく。


「魔法使い、元々は人類だった人々よ。僕はこの事を打ち明ける・・・・・・この人類史は」


 魔方陣が完成した。

 荘厳な鐘の音が響き、正明は呟く。


「一度、全ての文明が滅んだ事がある。今より優れた技術と魔法と共に」


 荒唐無稽。

 証拠などない、だが、それが起きたとするなら? 何がそれを引き起こした?

 その答えは、既に正明が独白していたのだ。


「この僕が、俺が所有する即死魔法の力によってな」


 神は何をしているのだろうか? 何故、この存在にそんな力を渡したのだ? 柔肌に触れただけで全てを殺す魔法を何故、このような怪物に渡したのでしょうか?

 人々は死神の飼い猫に心をがんじがらめにされていた。


「その証拠は、いつか見つかるだろう。そう遠くない未来に、いや、既に見つけているなら公表するがいい! 僕は全てを知っている! 魔法使いの根底を! 遥か昔、そのさらに昔に何が起きたのか!? 何故に魔法が存在しているのか!? そうだ! 僕は、俺は、ここに居る仲間達は! 既に街の中を騒がせるだけの集団ではない!」


 正明は叫ぶ、力強く、雄々しく、そして美しく。


「世界は・・・・・・再び動き出した。諸君が信仰する英雄譚は魔法時代の始まり? その通りだ。終わった後の物語だ! 始まりの前の終わりを知らないだろう?」


 正明は再び本を開く。


「中国がある土地には、かつて世界でも最高の魔法テクノロジーを持つ大国があった。その塔は今でも王の墓に眠る。アメリカにはかつて美しく、洗練された町が並んでいた。その町は一部だけをその時のままに我々を迎え入れる。そして、この日本にはかつて王が腰を落ち着けた城があった。街と言っても過言ではない程に巨大な城が」


 世界に波紋が広がる。

 いきなり現れた真実が、瞳を開ける。


「その城の名は」


 正明は今、自分を見て焦っているであろう男に、一番恨みを持って彼を睨み返す男へと言い放った。


「トレライ・ズ・ヒカイント」

始まりの前にあった終わり

始まると同時に終った恋

戦いの歴史が紐解かれし時

彼女は、彼は聴く。

笑い声、泣き声


お帰り、大好きな人

ただいま、誰より殺したい人

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