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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
悪魔が死神と出会う時編
105/289

第四話 魔王の演説

人類の皆さんに、残念なお知らせがあります。

君たちは・・・


 俺はパニッシャーとナイトの外部装備が簡単に追加で送ってもらえる事に驚いていた。てっきりオーダーメイドで作ったワンオフ装備かと思ったが、違うのか。

 と、感じていたがどうやら御堂衛の変態技術者はワンオフを量産とか言うバカをやっていたようだ。

 桜子もノリノリだったんだろうな。


「さて、どうすんだよ? 軍の皆さん」

「セフィラの三神翔太郎さんか、御父上の事も良く知っているよ」

「今はそんな事を言っている場合じゃないだろ? 俺達、オーダーにも秘密の作戦は見事に完封されたな」


 俺は軍の連中と刑務所の入り口まで退避していた。

 いや、もっと言えば追いやられていた。それもそうだ、黒岳が片腕を吹き飛ばされて帰って来たんだからな。魔法使い最高峰のセフィラの一角である黒岳が瀕死の重傷を負ってんだからな。今は救護テントで手当てを受けている。意識はハッキリしていやがるからアイツも化け物だけどな。

 それもあるが、空もあのパワードアーマーに占拠されちまった。

 オーダーも殆どやられた。落下した女の子達は重傷者もいる。良く死ななかったなと思えるぐらいだ。後でみんなの様子は見に行かないとな。


「あのパワードアーマーは規格外も良い所です。こちらの攻撃は完全に封じられて、しかも空に居た時には透明になっていたとも聞いています! アイツ等、どうやってあんなに高性能なパワードアーマーを作ったんだ!? ギルドが裏に居てもあんなに高価な兵器は売ってもらえない」

「あれ、もしかしたら連中のスキルを使っているんじゃないか?」


 俺はパッと見での持論を言う。


「スキル? 魔具にスキルを反映させる、そんなモノは有りませんよ?」

「ギルドは技術独占の組織。もしかしたらってのもある、それに現時点であんなに汎用性の高い魔具を作り出すのは不可能だ。なら、スキルを反映させるて操れる魔具が1つあると考える方が自然だ」

「なっ・・・・・・さすが、セフィラ。なんていう洞察力だ」

「ただの仮説だ。褒められた物じゃねーよ」


 俺の横でふふっと得意げに笑う美樹が見えるが俺は空に鎮座するパワードアーマーを睨み付ける。

 

「あの野郎、のんびりと飛びやがって! 爆裂魔法も避けられるし、銃は効かない! どうすれば」


 軍人が叫ぶと同時に俺の身体の周りに壊れた装備の追加が降りて来た。

 俺はそれを装着して、パニッシャーになるとビットを身体の周りに浮遊させて注文しておいた高出力魔導ライフルを二丁持ち、浮いている奴を監視する。


「・・・・・・美樹、俺と一緒に来い。真紀は待機だ。奴は、飼い猫じゃない」

「なんで解るのよ?」

「アイツが乗っていたら目立つ場所にいない。後ろから爆弾が撃ち込まれてとっくに壊滅だ。椿がいれば魔法は怖くないが、彼女は黒岳と同様にダメージが酷い。奴は俺達だけでやるぞ」


 その言葉に軍人が驚きの声をあげる。


「たった二人で!? 無茶だ! いくらセフィラとはいえ、いや、セフィラの黒岳さんを倒した兵器なんだぞ!?」

「関係ない。俺が行かないと、怪我人は増えるだけだ! 奴が飼い猫じゃないなら勝てる」


 俺はそう言うと、空へと飛びあがった。



「自動攻撃モード、オン!」

「これなら時間は稼げるだろうな」


 加々美と宗次郎は空の敵を一掃するとのんびりとそんな会話をしてRPGから飛び降りる。巧は転移魔法で既に正明の元へと向かっていた。

 自動攻撃はその通りのシステムだが、弱い訳ではない。

 それこそ火力を惜しげもなく放つため、始末に負えないのだが、人間には敵わないだろう。


「さて、時間は!?」

「残り時間は後5分!」

「いそぐぜぇ! 俺が最後かよ!」


 宗次郎は着地直前で加々美の手を握って背中から黒い翼を片翼だけ出して落下の速度を殺すと、ゆっくりと着地する。

 その時、二人はとある人物とばったりとかち合った。


「うわ!? じ、人狼さま! それに闇鴉さま! お、おおおおお会いできて光栄の極みです!!」


 ツインテールの女の子だ。

 パワードスーツで顔は隠れているが、ボディラインがハッキリと現れたデザインだから女の子だと解る。宗次郎が興味深そうに眺めているが、彼女は銃を抜くと二人に襲い掛かって来た。

 二丁拳銃の攻撃を宗次郎は弓矢で撃ち落とすと弓をまるで棒のように使って彼女に接近戦を挑む。

 ツインテールの女の子は銃剣で棒術を捌くが、その隙に凄まじい速度で獣人化した加々美が彼女を跳ね飛ばした。空中で拳銃を向ける女の子より先に宗次郎の打撃用の矢が彼女の腹部に命中する。


「がっ!?」

「んー、速いね。でも、ハングリー精神にかけるんじゃない? 俺達は人数で勝ってるぞ?

「飼い猫のファンだった子だよね? 手堅い戦闘スタイルだよね。でも、二丁拳銃ってロマンチストだよね」

「さ、流石です! 私なんかじゃ追いつけない強さ、これでこそ死神の飼い猫に付き従う者の実力です!」


 その言葉に宗次郎と加々美は短く笑う。


「ふふっ、付き従うね。俺達はアイツの手下と思われているんだな」

「それもそうかな? まぁ、リーダーはアイツだからね」


 女の子は不思議そうに首を傾げる。

 加々美はふらふらと立ち上がる女の子スーツを再び見ると仮面の裏で目を細めた。何かが吸収されているかのような、そんな感じを連想させる波紋が見えたからだ。それは宗次郎も同じく見ていたようだ。


「飼い猫さまはやっぱりリーダーなんですね!?」


 女の子はパワードスーツのマスクを解除して顔を見せて来る。

 その顔を見て加々美と宗次郎は思い出したかのように声をあげた。


「あぁー! 十年前にま、いや、飼い猫の奴が助けた女の子だ!」

「え? 可愛くね? よし! 俺がお持ち帰りして、ピストン機構とは何たるかの授業をしてやる!」

「こんなスケベより私が持って帰って、おもちゃ箱のラインナップを網羅させてやるわい!」


 女の子は何を言っているか解らないのだろう、首を傾げている。


「冗談だ。俺でもJKに手を出す勇気はない! 干される! アイドルの汚い性事情みたくなる!」

「私も、そっちじゃないからね? おもちゃなんて持ってないからね? 本物が良いと思ってるからね?」


 2人は意味の解らない弁明をすると彼女の背後へと魔法を撃ち放った。

 そこには軍人が二名、忍び寄っていたのだ。


「え!? 軍の人!? なんで!?」

「あー、君。はぐれたね? 狐の使い魔にこんな所まで流されて来たんでしょ?」


 加々美はそう言うと、クナイを抜いて女の子の腰について行る小型の魔具を破壊する。すると、彼女の側方へと衝撃波が放たれる。


「君が受けた衝撃で間違いないね。危ないなぁ、隙あらばぶち込むつもりだったでしょ?」

「・・・・・・敵わないですね、あははは」


 女の子は軽く笑う。

 加々美はクナイを仕舞うと、そのまま奥へと進んで行く。


「何処に行くんですか!?」


 女の子の問いに、宗次郎は何でもないように一言。


「飼い猫の所。RPGを捨て駒にしたって言いにな」


 2人は後ろをついて来る彼女を気にも留めずに歩いて行く。

 この先に待つ正明は多分だが、この事態に気が付いている。



「うおおおお!」


 俺の剣戟をパワードアーマーはガトリングの銃身で弾くとブースターを吹かして回転すると俺に回し蹴りをぶち込んで来やがった。信じられない動きだ! まるで巨大化した人間と戦っている様だ! 

 剣で蹴りを防ぐが、直ぐに姿勢を戻した相手は頭部から弾丸をばら撒く。

 俺はナイトを解除すると落下を利用してパニッシャーに変わると、二丁のライフルを構えて奴のコックピットに撃ち込んでやる。

 だが、俺のビームは装甲の放つ力場に吸収されて左腕からビームを撃って来やがった。


「化けモンかよ。美樹!」

「了解!」


 美樹の射撃がパワードスーツの腕を貫いた。

 腕を半ば分解じみた展開を見せるその射撃機構! まさか、中までも防御を固めている訳じゃないだろ!?

 俺の読みは正しかったようだ。奴の左腕は美樹のライフルの射撃を受けて爆発四散した。


「今だ! 最大火力!!」


 パニッシャーのブースターを変形させ、ライフルを構えて魔力を最大限に収束させてぶっ放した。

 四本の光魔法の収束は一本の高熱の奔流となってパワードアーマーを貫く。だけでなく、奴は部品の欠片も無く溶けた。ドロドロになった部品が赤い光を放ちながら地上へと落ちて行き、海の方角へ飛んで行った俺のビームは大量の水を瞬時に蒸発させ、大爆発を引き起こしていた。


「なぁー!?」


 美樹が素っ頓狂な声をあげる。そして、地上で見ていた軍と警察関係者のみんなも一斉に大声で「「えぇー!!!!????」」って叫んでいる。

 そんなに驚かなくても良いだろ? 俺が魔力を無限に生成できるのを知っているのに。


「ふぅ、無人か・・・・・・戦闘スタイルが奴らっぽくなかった。メンバーの誰かが乗っていたらこうはいかなかったな」

「あ、あんた・・・・・・前にみたサッカー場を吹き飛ばしたやつ、アレ以上の力よね? 今の砲撃・・・・・・信じられない速度で」


 美樹が引きつった顔で爆発が起きて虹が出ている海の方を指差してそう言う。


「あぁ、奴は速かった。それに動きもまるで人間だ。だが、アイツの動きには魂が無かった。父さんがガキの頃に教えてくれた明鏡止水って奴だな」

「そんな事じゃ無いわよ! 今の超兵器クラスの砲撃の事よ! 個人でこんな魔法を使用した魔法使いなんて記録にないわよ!? あの黒岳だって、珍しいスキルと異常な戦闘能力でセフィラになったんだから! 魔法の火力が危険視された魔法使いはアンタと、飼い猫ぐらいなものよ!」


 俺はハイハイと聞き流して地上に降りると、パニッシャーを解除する。真紀に手伝ってもらったが、やっぱりコントロールが難しいな。


「勝ったね、翔太郎君」


 真紀が特に驚いた様子も無くそう言う。


「ああ、君は驚かないんだな?」

「驚いてるよ? でも、それで翔太郎君の価値が変わるとは思わないよ? 宝物でも無いし、怪物でもないよ? ここに居るのは翔太郎君だからね」


 周りを見るとみんなが俺を尊敬の眼差しで見つめている。まるで英雄でも見ている様だ。

 でも、真紀はいつもと変わらない。笑顔がまるで太陽のように思える、それにその表情は俺を特別扱いしない。人間として見てくれている、三神翔太郎を見てくれている。


「ん? どうしたの?」

「あ、いや・・・・・・ありがとう」

「ふふっ、さっきの言葉はお姉ちゃんの受け売りなんだけどね?」

「正明か、彼女は凄いな。君をそんなに強くしたのは間違いなく彼女なんだろ?」

「そう! 凄いんだよ!? 絶対諦めたりしなし、どんなに追い詰められていても最後には切り札を隠し持っているの!」


 真紀がキラキラした目で姉の話に食いついて来た。


「大好きなんだな」

「うん! 自慢のお兄ちゃん!」

「え?」

「ん?」


 数秒の沈黙の後に真紀が顔を真っ青にした。


「ち、違うの! 口が滑って、あぁ、違う! お兄ちゃんじゃなくて、お姉ちゃんで!」

「・・・・・・真紀、もう遅いと思うぞ? 道理で、男の名前なはずだ。アイツ、男だったんだな」

「うぅ、お兄ちゃんに怒られる。怒るとすっごく怖いの」

「俺が無理矢理聞いたんだ。それに、正明が女って思われていた方が都合が良いのか?」

「お兄ちゃんは、その・・・・・・実は、女の人として、育てられたから・・・・・・複雑なの」


 俺はそれ以上聞かないようにした。

 かなりアイツも大変な過去があるんだろうことは解ったからな。


「え? あの双子の片割れが男!? あの顔で!? あの体で!? これも驚きよ。アンタと全く同じ顔してるじゃない、身体も胸が無いだけで大差ないわ? 裸を見たことあるの?」

「あるよ、兄妹なら普通じゃない?」

「無いわよ、兄がいたとしても・・・・・・いたけど、見たくも無いわ! それに、飼い猫に殺されてとっくにいないわよ」


 美樹の言葉に真紀はハッキリと泣きそうな顔になっていた。直ぐにその表情を飲み込むようにして少し悲し気な顔になる。


「ご、ごめんなさい」

「ん? いいわよ。アンタが効いたわけじゃ無いし、死んで当然の屑よ。お父様は、生きて罪を償って欲しかったけど」


 その時だった。

 泣きながら魔理が奥から走って来る。


「魔理!? どうしたんだ!?」

「っ! 翔!」


 魔理は俺に抱き着いて来た。パワードスーツの装甲だと彼女が傷つくかもしれないから解除して受け止める。彼女も蒼いヴァルキュリアを解除する。

 俺の腕の中で号泣する魔理の頭を撫でる。酷く震えている、余程恐ろしいものを見たんだろうな。


「どうしたの!?」

「いやだぁ、やだぁ・・・・・・し、死体だらけだった・・・・・・ぐしゃぐしゃで、みんな目を開けたまま死んでた」


 その言葉で俺は入り口で感じたあのヴィジョンを思い出した。現実だったんだな。

 真紀が奥の方向へ視線を送る。その時だった。


<魔法使いの諸君。この放送を誰が、どのぐらいの人数が見ているか知らないが・・・・・・言いたいことがある。僕を知らない奴もいるだろう、だけどこの話は聞いて欲しい>


 施設内放送からこの声が流れているんだろう。

 だが、奴の映像なんかは無いぞ!?


「魔導ネット、テレビ、ラジオ、様々なジャンルで取り上げられているぞ!」


 軍人の一人が魔力で映像を作り出してくれる。

 そこに映っていたのは、鋼夜の鬼・境界の人狼・九群の化け狐・魔医学の兎・魔封じの身代わり羊・魔眼の闇鴉。

 そして、


              <僕の名前は、死神の飼い猫だ>


 静かな自己紹介だった。良いスピーチになるだろう、だが、その撮影現場に囚人だったであろう人骨が転がっていなかったらだが。

 まるで、悪の幹部と総裁の集合の様だった。

 その中で飼い猫は身体も小さく、パッと見では威厳の様な物はない。

 だが、他のメンバーよりもずば抜けて恐ろしかった。

知らないのは幸福である

背けるべくして背けなくてはならない

その先にある路が

まやかしでも

知らなければ、幸福である


君たちは信じる者を一度、間違えたのだ

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