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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
悪魔が死神と出会う時編
104/289

RPGにかわる 2-3

パニッシャーとナイトは外部装甲なのでいつでも替えが届くのよ


 鳴神華音はガス室エリアを走り抜けると、ただならぬ気配に足を止めて銃を構える。遠山タケルも魔理もその気配に足を止める。

 まるで複数の人間が言い争いをしているような。

 それか、死ぬと解っている大勢の人々に助けを求められているかのような。

 得も言われぬ不快感。


「これほどとはねぇ、アイツら・・・・・・本気だとここまで怖いんだ」

「な、なに? これ、吐きそう」

「魔理ちゃん、出来れば目を閉じた方がいいよ」


 1年前の華音なら泣きながらうずくまって吐いていただろう。

 目の前には、


「ひっ、あ、いやあああああああああ!!!」


 魔理は頭を抱えてその場にしゃがみ込んでしまった。

 そこに広がっていたのはおびただしい数の死体だった。焼かれ、頭を撃ち抜かれ、首が斬り落とされ、毒物に悶えて、喉笛を掻き切られ、何かの力で押しつぶされ、更には自殺している囚人までいる。

 容赦のない殺しっぷりだ。

 そして、自殺している囚人は全員がとんでもない恐怖に引きつった顔で死んでいる。


「う、おお・・・・・・女の子を入れたがらない訳だ。魔理ちゃん、転移魔法で戻れるけど・・・・・・どうする?」

「ひっ、あ、うわあああああん!」


 魔理はすっかり戦意喪失していた。

 最近両親を焼き殺されたばかりの少女にこの現場は荷が重すぎるのだろう。華音は魔理に寄り添うと静かに歌い出した。

 この凄惨な現場には似つかわしくない優しい声色の子守歌だ。それを聴いた魔理は次第に泣き止むと、華音の腕の中で眠ってしまった。


「魔理ちゃんはあくまで普通の女の子だからね。この雰囲気、もしかしたらこの人達の」

「信じたくないけど、まぁ、そうだろうね」


 ここまで凄惨な殺し方をする意味はあるのだろうか、だが、1年前のように拷問された形跡のある死体は1つも見当たらない。

 魔理を転移魔法で入口まで退避させると、華音は拳銃を仕舞う。


「どうしたの?」

「この通路では連中に出くわすことは無いと思うの。わざわざ殺した相手の死体を突きに来るような性格はしていないと思うから」

「でも警戒は必要だぜ?」

「呼んでいる気がするの、あのウサギは私達を攻撃しなかった。その気ならば、殺せたのに」

「そうだね、彼女の袖に隠されていた注射器。いつでも俺達の急所に滑り込ませるなんて、造作も無かっただろうし」


 遠山はホバーで通路を進みながらそう言うが、華音の手が震えている事に気が付いた。


「ねぇ、本当は華音ちゃんも怖い?」

「え? あぁ、震えていたんだ・・・・・・ふふっ、怖いよ? でも、前に飼い猫が人を殺す所を見たことがあるから少しは耐性が有るのかな?」

「1年前のライブでもスペクターズに守られていたからね。それに、連中はよく君の歌をハミングしながら戦っているの知ってた?」

「そうなんだ」

「嫌じゃない? 狂った殺人犯が自分のファンだなんて、気味が悪くてしかたないよね」


 華音は必死に自分の感情を押し殺す。

 確かにこの現状を作り出したのが、自分の友人達であり、自分が愛している人間であっても、今は敵でいなければならないのだ。華音は彼女達が人を殺す事を趣味で始めた訳ではない事を知っている。本当は誰よりも優しくて、明るくて、楽しくて、凄い人々なのにこんな認識を受けているのは華音はとても悲しかった。


「私のイメージが崩れるのは、嫌かな」


 華音は遠山から視線を外してそう呟いた。


「そうだよね、殺人犯と友達だなんて思われるのは嫌だよね」


 気のせいか、遠山の言葉には影がかかった物がある様な感覚がしてならなかった。


(正明、この殺戮に答えがあるの? 見せしめ何だろうけど・・・・・・何を伝えたいの?)


 華音は自分の足元に転がる、目を開いたまま絶命してる囚人の目をそっと閉じた。



「完全に、のびてる。一撃」

「おーい! 加々美! 起きろ!」


 巧は大声でそう言うと、気絶している狼マスクを軽く蹴りつける。すると、加々美は凄まじい速度で跳ね起きるとクナイを構えて巧に飛び掛かるとその喉元に刃を突き付けた。

 顔色一つ変えない巧は加々美の頭を撫でる。


「おお、相当ビックリした様だな」

「あれ? 巧ちゃん? アイリス・・・・・・うぼぁ、私負けた? うわーい、クソがぁ」


 やる気の無い言葉に加えてダルそうにして加々美は巧の胸を掴むとモミモミし始める。


「ブラのせいで揉んでてもいい気分じゃない」

「殺すぞ? 痴漢狼!」


 巧は顔を赤くして頭突きを喰らわせようとするが、加々美は軽々と避けてしまう。だが、いつの間にか巧に掴まった彼女は組み伏せられて右腕をひねられてしまった。


「うぎゃあああ! 折れるぅううう」

「あ、やめて、それ以上いけない」


 感情の無いアイリスの静止が入ると巧は加々美を解放する。


「時間を止めたなぁ!? 汚い、流石兄弟達、汚い」

「モンキーが人間に追いつけるか」

「おい、それは止める前のだぜ!」


 加々美はそう言いながらRPGに視線を移すと突然興奮してコックピットに飛び乗った。


「おおお!! 発動したんだ! RPG! さて、私のステルス機能は健在? うん、出来る。さて、あの黒岳にリベンジじゃあ!」

「待って、まずは、宗次郎を探して・・・・・・空を、1人で抑えている」

「マジで!? ヴァルキュリアとか、軍人もいるでしょ!?」

「時間の問題って事だろ!? 俺も助手席で援護・・・・・・ぐふっ! うおぁ発作が」


 巧はコックピットへと飛び乗る。それに加々美はケラケラと笑う。


「調子に乗ってスキル使うからだよ」

「うるせぇ! スキルだけなら俺が最強なのに、クソ! 精神汚染が」


 怒る巧を他所に、加々美はパワードアーマーを浮上させる。


「RPG! 天道加々美、行きまーす!」

「同じく、神井巧、出撃をする!」


 天井をいとも簡単に粉砕し、飛んでいくRPGを見送ったアイリスは最奥へと歩みを進める。

 最奥の地下にある空間に仲間が集結する。



 飼い猫の戦い方は通常の魔法戦の常軌を完全に無視していやがる。

 魔法がワンテンポ遅れて放たれ、リズムが食い違うのだ。ナイトのパワー、パニッシャーの連射力と機動力、全てにおいて俺が奴を上回っている。魔力も俺は無尽蔵に生成できるし、魔法の威力も俺の方が勝っている。

 なのに、なんだ? アイツに攻撃が一度もヒットしない。

 魔法を分解する力、更には魔力を奪う力もあるが、それだけじゃ無い。それにはキャパシティーがあって俺の魔法を完全に分解も奪い取れも出来ない。それなのに、なんで、攻撃が入らないんだ!?


「ふー、チッ・・・・・・バカ威力が高いな。ネタ切れ直前なのに」

「ネタ切れ?」


 飼い猫は剣を飛ばしながらそう呟く。

 俺は剣を魔法でへし折りながら、奴の攻撃を見る。アイツ、魔具で攻撃してばっかりだ。


「飼い猫! なら、これならどうだぁああ!」


 俺は防御魔法を何重にも纏って奴に突っ込んだ。小細工による力なら、一気に懐に飛び込まれたらヤバいんじゃないか?

 最速のパニッシャーで突っ込む、転移魔法は妨害してあるから逃げられないぞ!

 次々と剣が飛んでくるが、俺の防御魔法には小枝の様な物だ! 奴のがら空きの懐に潜り込んだぞ!


「気絶していろ!」


 俺はナイトになって俺は剣を彼女へ振り下ろす。

 防御魔法を砕いてから当身で沈めてやる!


「不味いな」


 忌々し気に飼い猫はそう言うと、口笛を吹く。華音のREDBARONだな、この旋律は。

 だが、俺の一撃はどんな防御魔法も砕く! 防げやしないぞ。


「翔太郎! 後ろよ!」


 え? 美樹!?


「ばぁーか」


 俺の剣は一瞬だが止まってしまう、その時だ。

 剣を掴まれたその瞬間に、剣は粉々に砕け散ってしまった。


「そ、そんなバカな。衛が作った最高峰の兵器だぞ」

「甘いんだよ、お前は!」


 飼い猫は小さな掌に浮かべた小瓶を俺にかざすと、そこから俺の力を吸い取る雷を繰り出して来た。


「うおおおおお! くっ、魔力を吸っているのか!?」

「良い魔力だ。ッチ、この調子だと・・・・・・手に負えるのか?」

「意味わかんねーこと言ってんなよ!」


 俺は腰の拳銃を引き抜くと彼女へと連射する。

 その魔力弾を身を低くして分解しながら飼い猫はジリジリと引いて行く。今だ! ここで一気に攻め立てる!

 

「パニッシャー!」


 俺は魔力を一気に生成して高濃度の砲撃を彼女へと撃ちだす。


「まだ、まだ、まだ・・・・・・」


 小瓶と複数の魔法陣を浮かべながら飼い猫はブツブツと呟いて、砲撃の直撃の一瞬前に叫ぶ。


「今だぁ!!」


 パキィイイイイ・・・・・・


「決まった!」


 美しい音の後に砲撃は情報へとそれたが、その瞬間に召喚されていた巨大な鉈の斬撃が俺の両腕を狙って振り下ろされて来た。飼い猫が掴んで振ったものではない、魔法で召喚された物質を操るようにして襲って来たのだ。

 俺は後ろへ飛ぶが、右の砲身が斬られて曲がってしまった。


「いい加減に沈め! 飼い猫!」


 左のブースター兼砲身から魔力弾を高出力で連射すると、飼い猫は魔法陣を一気に大きく展開してそれを防いでいる。が、それは即席の防御魔法だったようだな。胴体に数発受けて彼女は軽々と吹き飛んだ。

 だが、魔法で身体を操る彼女は半自動で体制を立て直してしまう。

 その瞬間に俺の背中に衝撃が走った。振り返るとオレンジ色に発光する魔法陣が浮かんで俺の身体を受け止めていた。

 爆裂魔法!?

 俺は爆破に巻き込まれると、飼い猫の方角へ飛ばされるが、彼女は俺の身体を虫でも払う様に魔法で退けて天井の瓦礫の山へと放り込んだ。


「痛ったいな・・・・・・もう持たない。狐! 撤退!」

「ネタ切れ?」

「その通り! 予想以上にタフすぎる」


 俺はパニッシャーの勢いで飛び出すと俺はそのままナイトになってランスを奴に突き立てる。

 

「リカバリー速いな」


 飼い猫は懐から取り出した瓶に入った薬品を飲むと右手をかざす。すると、蒼い炎が撃ちだされて大爆発を引き起こした。


「ぐぉおおおお!? なんだ!?」


 炎を掻い潜って飛び出した時には飼い猫と化け狐の姿が消えていた。


「・・・・・・クソっ! 逃げるな、飼い猫!」


 美樹と真紀も辺りを見渡している。奴らは忽然と、姿を消したんだ。気が付くと、軍の連中は全滅していた。死人はいないが、特殊な戦闘訓練を受けた兵士をこうも一方的に始末できる実力を秘めた連中という訳ではないらしいな。

 その証拠に九群の化け狐は椿に敗けて、死神の飼い猫は俺を戦闘不能に出来ずに逃げた。

 天才の集まりではあるが、戦闘能力は俺や椿、黒岳よりは低いのか?

 だが、脅威なのは・・・・・・戦いではなく、殺しの力は俺達の誰よりも優れている。強いから殺されない訳ではないからな。

 俺はその場に座り込むと、真紀に手伝ってもらってナイトを解除する。


「ありがとう、君が居ないと俺は脚を引っ張るだけになりかねない」

「ううん、翔太郎君がいなかったら危なかったよ。こっちこそ、ありがとう」


 明るく笑う彼女に、俺の中に沈み込んでいた戦いでの濁った感情が浄化されて行く様だ。

 その美しい蒼い瞳が、俺の心をいつも救ってくれるような気がして仕方ない。



「身体の魔法陣は切れたし、霊薬もそろそろ中和剤の効果容量を超える」

「ははっ、みんな強すぎでしょ? 私も冬鬼と夏鬼以外は全部やられたもんね。鉄扇のバフ効果付けても全滅とか、真紀ちゃんも強くなったね」

「それに、翔太郎君もね・・・・・・即死魔法を武器破壊に使う羽目になるとは思わなかったよ」


 正明はため息を吐くと、最奥の道をゆっくりと歩いて行く。

血で汚れた可憐な君

私の愛した人達よ

闇へと潜るは未来のため?

傷つけたくない、そう叫んで

それでも貴女は止まらない


仲良しでいよう?

そして、引き金をひいた

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