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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
悪魔が死神と出会う時編
103/289

RPG に変わる

うわー、久しぶり

1


 俺はパニッシャーの砲撃で飼い猫のパワードアーマーを攻撃するが、奴はいとも簡単に逃げ回る。そうこうしていると化け狐の召喚した鬼の炎が飛んでくる。

 ビットでシールドを張るが、それすらも打ち抜かれてしまう。


「クッソ! 強い、何だあの使い魔は! 美樹、撃てるか!?」

「やってるわよ!」


 飛びながら美樹は化け狐の鬼へライフルからビームを放つが、氷の鬼が放つ氷の粉末の壁にビームが曲げられてしまう。光魔法を収束して放ったヴァルキュリアのビームを氷の結晶を曲げてしまうのか?

 あの鬼は知性があるのか? 魔力で作った怪物が、知性? いや、化け狐が命令を飛ばしているんだろうな。

 俺はパニッシャーのスラスターで飛んで撃ちながら叫ぶ。


「飼い猫! なんでこの刑務所を襲った!?」

「これは俺達にとって大きな意味を持つ、邪魔をするな。君を殺したくはない」

「言うじゃねぇか! 舐めるな!」


 俺はナイトに姿を変えると落下の速度と共に奴の装甲に剣を振り下ろす。

 だが、飼い猫はコックピットを開いて姿を現すとバズーカを構える。


「魔法を使わない兵器は意味なんか持たないぞ!」

「戦いは恋の様な嘘と本音の応酬だ。努力なしでモテるバカには解るまい」 


 飼い猫はそう叫ぶ。怒りから来るそれではない、まるでバカにして笑っているかのようだ。

 その時だった。俺の真下から魔力で形成された枷が飛んできた。剣の軌道を変えて必死に迎撃するが、俺の左脚と右腕に巻き付く。

 その枷は巻き付いた腕と足の力を一気に奪い去る。


「っち! これが本音かよ!」

「いや、これが本音だ」


 飼い猫はパワードアーマーから飛び出して来た。

 何をしているんだ? 操縦士がいないと、このパワードアーマーは鉄くずだ。

 彼女の両手にはバズーカ、腰にはいつものホルスターに入った小瓶、そして、漆黒に蒼い星を浮かべたような凶悪な仮面。

 後ろには、


「オレがやればいいんだな?」


 誰だ!? いつの間にかコックピットには人が乗っていた。目深にかぶった帽子で顔は見えなかったが、女の子の声だった。


「何処見てんだ? 三神」

「しまっ!」


 俺が何かを言い終える前に俺の視界はブレたテレビ画面のようになった。そして、強い衝撃と爆音が俺の思考を刈り取る。

 顔面に砲撃を喰らったのだ。


「通常兵器も使い方で変わるのさ」

「か、変わるが、俺も気合いじゃ敗けねーよ!」


 俺はパニッシャーを起動して召喚したライフルからビームを照射する。

 飼い猫は焦った様に防御魔法を張ろうとするが、遅い!

 ビームは右肩に当たると、彼女の身体を墜落させた。


「クソ、やっとぶち込んでやったぞ」


 だが、その直後にパワードアーマーが前腕から伸ばした光の剣を4本回転させながら俺の腹に突き立ててきやがった。

 つんざくような金属音に加えてパニッシャーの追加装甲が剥がれ落ちていく!


「うおおおお!」

「一息つくのは遅いぞ」


 俺はナイトになると剣を奴の腕の中に召喚してやる。すると、内部から魔力が暴発してパワードアーマーの右前腕が砕け散った。

 その瞬間にパニッシャーに変わってブースターでの砲撃を喰らわせようとしたが、氷に身体を捕まえられた。化け狐の鬼の力か!


「ナイスだ」


 パワードアーマーは左腕をバガッと開くと紫色の魔力弾をぶっ放して来た。俺はその直撃を喰らってコンクリートの床へと勢いよく落とされた。

 身体が痺れている。

 これは、毒か!? 致死性はないが、身体の自由が少し奪われた! それでも化け狐の兵隊は容赦なく襲い掛かって来る。

 俺は斬りかかって来る兵士をナイトで倒しながら、真紀を見た。

 鮮やかな体術で使い魔を倒している。それに魔法を使っているが、それも最低限だ。


「なんて、綺麗な戦い方だ」

「感心するのは良いが、俺を忘れていないか?」


 俺は声の方向に剣を躍らせるが、それは漆黒に金の装飾が施された剣に受け止められた。その剣は一本だけではない、何十本もが広がってまるで翼のように見えた。

 飼い猫の身体の周りを浮遊する剣は彼女を守るように整列する。


「無傷かよ」

「いいや、しっかりと痛いよ」


 彼女はぐぃっと服をめくって白いお腹を見せて来る。仮面とこんな状況じゃ無ければ少しドキッとするだろうが、そこには壁の骨組みの一部が突き刺さって、そこからは大量の出血の後があった。

 目を背けたくなる怪我だ。


「はぁ、霊薬がぶ飲みしていて・・・・・・正解だよ。僕じゃ痛みで死んじゃうからね」


 飼い猫は骨組みの鉄骨を引き抜くと、指二本分程の大きさしかない瓶の中にある液体を飲む。するととんでもない勢いで傷口がふさがってしまう。

 回復魔法、いや、回復薬って所か?


「真紀とは大違いで、意外とダメージを負うんだな」


 俺はそう言うとランスを引き抜く。

 飼い猫はその言葉を鼻で笑った。


「彼女に惚れたのか? まぁ、それも無理の無い事だ。可愛くて、強くて、笑えばそれだけで救われる。ふふっ、僕は笑えば人が死ぬ・・・・・・お前にも、彼女にも、俺の事は理解出来やしない」


 飼い猫の声は少し寂しげだったが、奴が一言呟いた。


「RPGに変われ」


 その瞬間、パワードアーマーは凄まじい速度で通路に急降下すると刑務所の奥へと飛び去って行く。


「何を命令した!?」

「ロール・プレイ・ゲームだよ、三神翔太郎君」


 飼い猫は左目を輝かせて小瓶を両手に浮かせると魔法陣をいくつも張ってかまえた。

 こんな量の魔法陣は非効率的だ。美樹、お前の授業の成果を見せてやるぜ!


「俺は、勇者か?」

「俺は、魔王だ」


 飼い猫はそれだけ呟くと、蒼い炎を撃ち放って来た。



「RPG、回って、くる」


 大鎌に毒のカートリッジを差し込んでアイリスは正明の報告に口元を緩める。

 作戦名、RPGに変わる。

 この作戦は、作戦と言うにはあまりにも杜撰だが。言うなれば、殲滅戦の開始を意味する。

 容赦なく叩き込まれる弾幕を交わしながらアイリスは機会を伺う。

 軍はアイリスをフロアの隅まで追い詰める。


「生け捕りにしろ! こいつの技術を持ち帰れば良い金になる!」

「拉致で得た金が、良い金、ね。笑える、皮肉」


 アイリスはそう言うと鎌についているトリガーを引く。

 すると鎌の刃から霧状になった毒物が散布されるそれは敵の装甲を直接脆くする腐食性の高い代物だ。アイリス自身は白衣の内側に隠された中和ガスを噴射する魔具でダメージを無効化する。


「ぐぉ!? 酸か!?」

「ち、違うぞ! くそ、魔法術式が崩されている! 霊薬だ、吸うな! 中毒死するぞ!」


 中毒死する霊薬を使うなら毒を使う。

 心の中でそう呟くアイリスだが、頭上に現れた影に彼女は躊躇いなく跳躍した。そこには右腕が破壊されたRPGの姿があった。


「私が、乗る」

「よし! オレは姿勢制御に戻るぜ!」


 コックピットの巧はそう言うと後部座席へと吸い込まれて行った。空いた座席にアイリスが着地して装甲が閉じて彼女の視界は裸眼よりも開け、敵の使う術式や魔法の発動情報が彼女へと一気にフィードバックされる。

 この機能は正明が作成した技術だ。

 常人が使うと脳が不可に耐えられないが、人外化施術での身体強化は脳すらも強くしている。天才になれる訳ではないが、情報量の負荷には十二分に耐える事は可能だ。だが、正明は霊薬で補強している状態だが。


「な、なんだ!? コイツは、パワードアーマー!?」

「知っているのか!?」

「そうか、噂でしかないからな。俺も小耳に挟んだだけだ! 上層部で極秘裏に作っているパワードスーツの上位互換兵器。冗談じゃないぞ、国が秘密で作っている兵器を・・・・・・なんで殺人犯のグループが持ってんだよ!?」


 何やら軍人たちは驚いているようだが、アイリスにはまるで関係の無い話しだ。

 彼女はパワードアーマーの左腕を展開すると毒の魔力弾をチャージしてぶっ放した。フル装備の軍人には殺傷にいたる攻撃ではないが、装甲が溶かされた今の彼達には最悪な攻撃となるだろう。

 死にはしないが、死ぬ程痛い攻撃となる。


「うわあああ! 撃て! 撃ちまくれ!」

「パワードアーマーって言ってもこの弾幕なら潰れるだろ! おい! 爆裂魔法を喰らわせろ!」


 アイリスは爆裂魔法の術式を組み始めた隊員に魔力弾を撃つが、周りの連中が死守する。ガトリングで薙ぎ払えるが、取り出す前に爆裂魔法の直撃を受けるだろう。


「おい、スキル使うか?」

「3秒、お願い」

「オレがタイミングを見るから、アイリスは上手く避けろよ!」


 パワードアーマーの表面に魔法陣が複数個浮かび上がった。高精度な限定範囲の爆裂魔法だ。

 流石は軍。魔法陣がオレンジ色の光を放ったその瞬間、世界が凍り付いた。

 爆裂魔法は何もない所で破裂し、パワードアーマーは隠し腕を展開し、天井に張りつくと可変機構によって身体をひねって逆さにガトリングガンを構える。

 

「消えた!? 何処だ!」

「上から反応! 嘘だ、なんで索敵魔法に転移魔法が探知されなかったんだ!? なんで我々の妨害術式が効かないんだ!?」


 アイリスは淡々とコックピットでトリガーを引く。

 彼らの謎は解けないままわずか1分程度の戦闘で部隊は戦闘不能となり、壊滅した。


「転移、してない。移動しただけ」

「ははっ! このロボット最高だぜ! 俺の発作も抑えてくれるし!」

「私の、霊薬。ガス状にして散布しているから、ある程度ならスキル使える、でも、無理は禁物」

「解ってるよ。オレ、役に立てる場面が少ないからな。嬉しくてよ」

「ふふっ、可愛い、ね」

「笑うなよー!」


 アイリスはパワードアーマーのスキャン能力で加々美を探す。

 

「いた、のびてる」

「おいおい、負けたのか!?」

「ボロ負け」

「からかいに行こうぜ!」

「賛成」


 パワードアーマーは空間の中へと消えた。

窓からそっと、エスケープして

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