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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
悪魔が死神と出会う時編
101/289

スタイン・スタイン・ルビー 2

暴力は人類のニトロ

繁栄と悲劇を、加速させる


 俺は鋼夜の鬼へと力一杯に剣を振り下ろす。

 速度も力も乗った一撃は彼女を大きく吹き飛ばすと壁をぶち抜く。魔力でのブーストの前では、俺の方がパワーは上だ! パワードスーツのアシストと合わせてやっとかよ!


「うっ、腕が折れるかと思いましたよ。とんでもないバカ力ですね」

「終わりだ、鋼夜の鬼。俺は人を殺したくない」

「私も貴方を殺す気は毛頭ありませんよ? しかし、なかなかどうして・・・・・・楽しくなってきましたよ!」


 鋼夜の鬼はそう言うと拳を構えて突撃してきた。

 俺は盾を小さくして彼女のパンチをいなすと、ランスで更に追撃を加える。肩口から血を吹きだして鋼夜の鬼は通路を転がった。


「っく! はぁ・・・・・・強いですね。いや、でたらめな力をダダ漏れにしている。決壊したダムのように、始末に負えない」


 俺はランスの腹で鋼夜の鬼を殴って気絶させようとするが、彼女は身体をブレイクダンスのように倒れた状態から回すとランスを蹴り上げて俺の胴体を殴りつけた。

 その瞬間、俺の身体は床へと沈み込んだ。


「うおおおお!? 重いっ!」


 重力、コイツのスキルは・・・・・・重力の能力!

 しまった油断した!


「さて、ん? っち、解りましたよ。私が変わります」


 這いつくばる俺を前にして鋼夜の鬼は舌打ちをすると、空間の中へ吸い込まれる様に消えて、代わりに出て来たのは。


「よう、三神翔太郎。俺に会いたかったか?」


 小柄な体格、細い体、漆黒の仮面に猫耳フード。

 なんて事だ、まさか、この事件の主犯がお出ましとはな!


「死神の、飼い猫」


 俺は鋼夜の鬼の重力から解放されるとゆっくりと立ち上がる。


「お前とは話そうとしても、何を話せばいいか・・・・・・お前は、本当に何者なんだ?」

「おかしい奴だな。俺が何者かって? 特別でもないさ、ただの犯罪者だ」


 死神の飼い猫はそう言うとその場に寝転がってしまった。


「うわぁああ、疲れた」

「は?」

「屑共を殺して、なんかエロい格好の看守と戦って、昔殺した女の元カレを失血死させたり、色々あったよ。バカ共は俺の顔見ると、自殺していくんだぜ? 失礼だろ」


 俺は背中を冷たいものが走るのがハッキリと解った。

 コイツ、やっぱりおかしい。それなのに、なんでだ? コイツを悪党だと思えない。なんでだ?


「さて、鬼と戦っていたのか? はぁ、良かったな俺が変わって」

「俺が勝っていた」

「重力を受けたろ」

「振り払えた」

「その前にお前の両足が潰れていたな。アイツの常套手段だ、身体の一部に莫大な重力をかけてその部位を潰す。そんなのはどうでもいい、お前達なんでここに来た? 軍は? 警察は?」

「てめぇの仲間に潰されたよ!」


 そう言うと飼い猫は突然飛び起きると、とんでもなく大きな声で叫んだ。


「はぁ!? 負けたの!? 軍が? 狐の使い魔に!?」

「聴いていないのか? お前達の仲間は突入部隊を壊滅させたぞ?」

「いやいや、無理に決まってんだろ。軍だぞ? 単騎で・・・・・・クソがぁ! 豚のクセに頭は回りやがる!!」


 突然飼い猫は激昂すると細い腕で、てしっと壁を殴る。

 すると、壁にクモの巣のようにヒビが広がる。


「みんな! 集まれ! 倒せたってなんで報告しなかった!? 敵の罠だ!」

「何言ってんだよ!」


 飼い猫は俺の方を見ると叫ぶ。


「逃げろ! 死ぬぞ、殺されるぞ!!」


 なに? こいつ、ホントに意味が解らん!


「なんだ!? 何なんだよ!?」

「外に出て見ろ、解る。取りあえず、逃げるんだ・・・・・・無差別かよ。俺達の真似しやがった」


 飼い猫はするりと空間の中へと消えて行った。


「無差別? 真似? おい、まさか!」



「・・・・・・逃げなくて良かったから、正解と、思ったんだけどなぁ」


 アイリスはのんびりとした口調でそう呟くと、周りに群がるガスマスクの特殊部隊に大鎌を構える。一斉に向けられた銃口が、彼女に火を噴いた。

 鎌を回し、彼女は銃弾を弾く。

 ガス室にしたエリアの毒素はパワードスーツの遮断能力を飛び超えるが、このガスマスクは魔法での防御が強固に施されている。皮膚吸収で毒は回るが、かなり時間がかかるだろう。

 解毒剤なら完全に無効化できるが、この部隊はそれも理解しているのだろう。一部の兵が接近戦を挑んで彼女の上着を奪い取ろうと動いている。


「解毒剤の、存在、知ってるね・・・・・・見てた?」

「魔医学の兎は確保、いや! 鹵獲しろ! 奴の能力は多くの人間を救う資源だ!」


 軍人の言葉にアイリスは仮面の奥で少し嫌悪の表情を浮かべた。

 

「救えない。命は、欲望では、満たされやしない・・・・・・私は、満ち足りるため、この力を使う。命を、数にするな」


 アイリスは仮面の電子回路をピンクに輝かせて鎌に注射器型のカートリッジを差し込む。滴り落ちる強力な毒が、強大な殺意の刃が隊員達を睨み付けた。



「なにっ!? 本隊では無かったのか、軍め・・・・・・某らの襲撃をデータ収集に使ったな」


 椿がそう言うと京子は彼女に組み付いて爆発する人形を放つが、彼女の身体の周りでその人形は崩れ去って行く。

 そして、使い魔達を特殊部隊がなぎ倒していく。


「・・・・・・ふぅ、ヤバいね」


 京子は呟くとナギナタをクルクルと回した。

 彼女の使い魔は椿のスキルの前には無力だ。眷属招来で夏鬼と冬鬼を出すのも良いが、この空間では京子自身も巻き込まれてしまう。

 深紅の瞳を輝かせながら、銀色の閃光が彼女に迫る。



「私は、逃がされたという訳ですか」


 志雄の目の前にはズタボロの看守長が立っていた。画像では見ていたこの監獄での随一の実力者だった男だ。

 そこには八雲もいた。


「どんな手を?」


 志雄が八雲に聴くと、首を振ると看守長を見る。すると、看守長は恨めしそうにつぶやく。


「妻を、人質にするなんて・・・・・・屑め」

「なるほど、屑な戦法ですね」


 恐らく一方的に戦意喪失まで追い詰められたのだろう。


「さっきの飼い猫の言葉、イレギュラーだね。突入部隊に存在をアピールするつもりが、倒せるぐらい弱かったからね。でも、それがどうしたんだろうね?」

「・・・・・・とにかく、目的は達成ですね」


 八雲と志雄の目の前の牢屋の中には、ガタガタと震える一人の男。辺りの犯罪者たちとは違って暴力とは無縁の人間に見える普通の男だ。


「正明はなんで、牢を壊さなかったんです?」


 やけに静かでただっ広い空間に志雄の言葉が吸い込まれていった。



「境界の人狼か・・・・・・お前は、弱いな。以前の魔封じの身代わり羊の方が、歯ごたえがあった」


 加々美は口から流れる血を吐き出すと、大きく息を吸いながら身体を起こす。

 その口元には笑みが浮かんでいた。


「弱い? はははっ、羊ちゃんは強いからね。私はそこまで強くないよ? でもね、あー気付いてるね? その顔は」

「何を言っているんだ? お前達は誰も意味不明過ぎる」


 加々美は黒岳を指差すと、一気に中指を立てる。

 その瞬間に床から溶岩のトラバサミが黒岳の脚を狙った。彼は飛んで回避するがそこに既にあった透明なガラスの剣が現れる。辛うじて串刺しを回避したが、その時に加々美は彼の心臓付近に加速を付けて飛び膝蹴りをぶち込んだ。

 黒岳はそれでも彼女の脚にナイフを突き刺す。

 加々美はその脚を狼に変化させると、驚異的な瞬発力で彼を蹴り飛ばした。


「いったぁああああ! この、変態野郎!」


 加々美は叫ぶとナイフを抜いて黒岳に投げつける。

 彼はスタンロッドで弾くが、ナイフの軌道の真後ろに隠れていたクナイは肩口に突き刺さった。それを加々美は蹴りつけると、更に奥にまで刃をめり込ませてしまった。


「ぐぅあ!? っく! なんだ、動きが」

「いったぁ・・・・・・帰って寝たい。ヌイて寝よう」

「そんなモノ、お前にはないだろ」

「セクハラするんだね、兄弟達。ド変態、最低、麗しい乙女の脚にナイフ突き刺して、脳内では私を犯すんだ?」

「よし、殺すか。下品な女は苦手でね」

「真面目のフリしたムッツリ男は、私も嫌いでね!」


 加々美は姿を消すと、腰のナイフを抜く。

 魔法が、効かない。それどころか、放った魔法が正明が使う分解のように霧散してしまう。それどころか、奴は回復していく。

 この謎を解かないと、加々美は負けると感ずいていた。



「さて、少し・・・・・・早いけど、切り札を切るしかないか」


 正明は突入した時のビークルの前でそう呟く。

 それと同時に天井の穴から大勢の特殊部隊の構成員が飛び降りて正明に銃を構えると躊躇なく発砲するが、それよりも速くビークルから飛び出した小さな魔具が展開した防壁で銃は無効化された。正明は口笛を吹き終わると大きく息を吸うと仮面の下顎をガバッと開く。

 その瞬間に大音響の女性の悲鳴のような不快な音が辺りに撒き散らされた。

 これは彼の声ではない。


「さて、お前達を一か所に集結させてからと思っていたが、致し方ない。一掃するとするか」


 左目を輝かせた猫はビークルを蹴りつける。

 すると、そこには1つの脅威が姿を現して竜巻のように手の付けられない暴力となった。

何度も見たようだ

だが、これが始めてなのは解る

知らないのだ

わからないのだが、見たようだ

見られた様だ


あぁ、私の未来だ。予言するまでもない私の終末

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