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フェステが暗躍する  作者: アンバーハウス
ロミオとジュリエット
13/18

ディープ・オペレーション/終焉の足音

 東の空に、まだ太陽の輪郭も覗かぬ頃。

 俺は店の外に出て、薄暗い通りを眺めながら、冷たく湿った朝の空気を大きく吸い込んだ。

 そろそろ窯に火を入れて、朝売りの分のパンを焼き始めないといけない。早朝と、昼前と、夕方――パン職人にとって最も忙しい時間帯が、もうすぐ始まる。

 しかし、その前にもうひとつ、重要な仕事を済ませる必要があった。

「お……来たな」

 朝もやの向こうから、かっぽかっぽとのどかな音が近付いてくる。ロバに引かれた、薪屋の荷馬車だ。

 うちの店は近所の薪屋と契約を結んでいて、毎朝よく乾いた薪を、その日に使う分だけ届けてもらうようにしていた。まとめ買いをして工房に積んでおくということもできるが、湿気やカビなどを予防するのが大変だし、うちのような狭い家だと、薪を置いておくスペース自体がなかなかない。毎日一定の薪を消費するパン屋としては、この定時配達サービスは非常に便利だった。

「おはようございまーす。いつも通り、ブナの薪を三束お届けに上がりましたー」

「ああ、おはようさん。毎日ご苦労様」

 荷馬車に乗ってきた薪屋の若者と挨拶を交わしながら、商品を受け取る。

 いつもなら、これでおしまいだ。他の配達先に向かっていく荷馬車を見送って、薪を工房に運び込むというのが、普段の俺の行動パターンである。しかし、今日は違う――何年もしたことのない連絡を、今この時にしなければならない。

「ああ、そうだ、きみ、昨日もらったこの薪なんだがね、返品させてくれないかな。どうも中で、虫が涌いてるみたいなんだ……さすがに、こんな薪でパンを焼いたりはできないよ」

「えっ? ――『虫が涌いて』しまいましたか?」

「ああ。『虫が沸いて』いるんだ」

 決められた合い言葉を、含めるように繰り返して。俺は一本の薪を、薪屋の若者に渡した。

 もちろんそれは、昨日の夜に細工をした、手紙入りの薪である。そしてこの薪屋こそが、『上』と直接つながっている連絡員なのだ。

「いやはや、大変失礼いたしました。おわびに、明日の分の薪にサービスさせて頂きます。いや、本当にすいません……この薪は、こちらで処分しておきますので」

「気にしなくていいよ。他の薪は全部質が良いしね……まあ、その薪については、『しっかり責任を持って処理して』欲しいな」

「ええ、もちろんですとも。まったく申しわけない」

 若者はペコペコと頭を下げながら、受け取った薪を、馬車の荷台にしまい込んだ。

 これらのやり取りは、誰が見ても自然なものだ。質の悪い薪が届くことはたまにあるし、それを返品するのも当たり前のこと。これまでにも二、三度、湿った薪を取り替えてもらったことがある。『上』への連絡でも何でもない時に、だ。

 だから、この連絡方法が怪しまれることは、絶対にあり得ない。もし、帝国騎士団あたりが我々の計画を嗅ぎつけて、俺の周りを監視していたとしても、あの薪屋に注意を向けることはないはずだ。ましてや、薪の中に埋め込まれた手紙を、どうして発見できよう?

 大事な大事な手紙を託された荷馬車は、来た時のようにかっぽかっぽと去っていく。その後ろ姿を見ながら、俺はため息をついた――これで、今日の一番大きな仕事は終わったわけだ。

 と、安堵の気持ちに浸っていると、店の扉がかちゃりと開き、ジュリエットが顔を出した。なぜか、お金を入れる革袋を片手に握り締めており、少し慌てたような表情だ。

「あら、薪が届いたのね。相変わらず重そう……こんなのをいっぱい載せた車を引かされるなんて、ロバさんも大変ねー」

「いやぁ、どうだろうな? よく乾いてるから、見た目よりは軽いし。それよりどうしたんだ? そんなもの持って」

「あっ、そうだった! 実はね、精算台に入れてある銅貨のストックが、思ったより少なくって! このままお店開けたら、朝のピークの途中でお釣りが切れちゃうかも知れないの! だから、今のうちにささっと両替してくるわ!」

「おいおい、大丈夫か? こんな朝早くちゃ、銀行もまだ開いてないだろ」

「アンペルバール・インペリアル・ホテルのクロークに頼むつもり! あそこなら二十四時間人がいるし、前に泊まってた時の知り合いがいるから、たぶんワガママ聞いてくれるわ!

 じゃっ、そういうわけで、行ってきまーす!」

 そう言って、彼女は薪屋の荷馬車を追うように駆け出していった。木のサンダルが固い土の地面を蹴る音が、静かな早朝の街にこだまし、遠ざかっていく。

「……朝から元気だなぁ、あいつ」

 俺はもう一度ため息をついて、薪の束を三つまとめて抱え上げる。いい加減、パンを焼かなければならない。

 背後では、ほんのりと桜色の朝焼けが生じ始めていた。



 朝が昼に変わり、昼は夜に変わり。

 少しずつ、しかし確実に時間は過ぎていく。

 俺が細工をした薪は、無事に『上』の方々に届いたらしい。なぜそれがわかるかというと、薪屋に手紙を託してから三日ほど経った頃、例の金貨を使った通信によって、「訴えの件について、速やかに調査を開始する」という旨の返事が来たからだ。

 それだけでもかなり安心できるが、さらにバルサザー老人率いる衛士隊も、平行して【緋色のランタン】を追ってくれていた。

 俺たちを脅かすテロ組織は、裏社会と表社会、両方の手と目によって、追い詰められつつあった。

 その成果がよりわかりやすいのは、やはり身近な衛士隊の方だった。彼らは、妻のジュリエットを通じて俺に接触しようとした怪人物、『シスター・ロザリンド』の行方を追跡していた。

 彼女の容姿は、ジュリエットの証言によってある程度明らかになっている。修道服を着た、金髪の若い女。目立つなりではないが、それほどありふれてもいない。探せば、目撃者はそれなりに見つけられるはずだった。

「実際、その見通し通りになった。手がかりは簡単に得られたよ」

 六月も終わりに近付いたある日、ジョージ・バルサザー老人は、いつかと同じように髪を刈り上げられながら、俺に調査結果を語ってくれた。

 この問題は、ベンヴォーリオやマーキューシオには内緒で取り組んでいるものなので、定例会議では話題に出すことができない。そこで、俺と老人は床屋で待ち合わせて、調髪してもらいながら話し合うことにしたのだ。

 隣り合った席に腰掛け、てるてる坊主みたいなピンク色のクロスを着せられた状態で話をするのは、何だか滑稽なようだが、まあ、内心さえ真面目であればそれでいいのだ。そういうことにする。

「シスター・ロザリンドは、教会に籍を置いているちゃんとしたシスターではなかったよ。大司教様に確かめてもらったんでな、間違いない。

 お前の奥さんが会ったのは、モグリかカタリか、どっちにせよニセモノのシスターじゃ。まあ、僧侶だとか薬売りだとかは、悪者の変装としては昔からありふれておるでな、特に意外とは思わんが」

「じゃあ、そこで手がかりは切れた、ってことか?」

 髪にベタベタしたものを塗られながら、俺は尋ねる。

 老人は髪を切ってもらっているだけだが、俺はちょっと冒険して、白髪染めをしてもらうことにしたのだ。歳も三十半ばになると、頭にちらほら白いものが混じるようになる。俺は黒髪だから、正反対の色合いのそれが余計に目立ってしまうのだった。

 まだまだ若々しい気分でいたい俺としては、老いの象徴である白髪を看過しておくことはできない。どうせ床屋にいるのだから、この機に一掃してもらうことにしたのだ。

「おいロミオ、こっち向きながらしゃべるのはやめろ。カラリストの姉ちゃんが、毛染めを塗りにくそうにしとるじゃないか。

 それに、人の話もよく聞くもんだ。わしは、手がかりは得たと言うたじゃろう。ロザリンドがニセ修道女とわかった時点で、調査対象を宿屋に切り替えたさ。

 そしたら……ふん、バカにしておる。我々がケツを追いかけとるそのお嬢さんはな、ロザリンドという名前をそのまま使って、安アパートの部屋を借りておったのよ! 大家に見せてもらった契約書には、『ロザリンド・ギベレッツ』とサインしてあった。お前さんが受け取った【緋色のランタン】からの手紙と照らし合わせてみたが、完全に同じ筆跡じゃったな。そのミス・ギベレッツこそ、我々が求めるシスター・ロザリンドの正体で間違いあるまい」

「下宿と名前を突き止めたってことは、もうロザリンド自身の身柄も押さえたのか?」

「いんや、それはまだじゃ。というか、逃げられた公算が高い。

 昨日の午後、部下を三人ほど連れて、ロザリンドの部屋に踏み込んだんじゃがな。きれいさっぱりもぬけの殻じゃった。向こう三十日分の部屋賃が、すでに支払われておったにも関わらず、な。どうやらあちらさんも、自分が追われ始めたということに気付いちまったらしい。

 大帝都門の門番どもが言うには、まだロザリンドらしき女がアンペルバールを出た形跡はないそうだ。つまり奴は、寝床を変えたってだけで、今もこの広い帝都のどこかに身を潜めておるっちゅうことになるが……まあ、もうお前にちょっかいを出しに来ることはなかろうよ」

「追われているのに気付いたってことは、俺を陰謀に巻き込むことが難しい、ということにも気付いたはずだ、ってことか」

「いかにもいかにも。衛士隊に守られているお前に接触するのは、ネズミ取りの上に乗っているチーズに手を出すようなものじゃからな。しばらくはこれで安心じゃろうて。

 わしの方からはそんなとこじゃ。お前は何か、情報はあるか?」

「うん、まあ、ないことはないが……髪が仕上がってからにしよう。『上』からの伝言で、少し微妙な問題があるから」

 こちらがそう言うと、老人も突っ込んで尋ねてくることはなく、床屋のハサミに身を委ねて口を閉ざした。『上』の話となると、これまでの話とは事情が違って、他人の耳があるところで気軽に口に出せるものではない。

 一時間後、調髪を終えた俺たちは、床屋の裏の寂れた路地で、誰にも聞かせられない情報の受け渡しをすることにした。

「それで、ロミオ? お前のところに降りてきた、『上』の伝言ってのは、どんなもんじゃ?」

「うん、それがだね。真剣にテロ組織を追跡しているあんたたち衛士隊には、ちょっと聞かせにくい話なんだが……『上』が調べたところによるとね、マンチュアナ鉱山事件の生き残りの中で、帝国への反逆を企んでいるのは、俺ひとりだけらしいんだよ」

 こそこそと囁いたその言葉を、はっきりと聞き取れなかったのか、それとも聞こえた上で意味が理解できなかったのか――バルサザー老人は眉間にシワを寄せ、首を傾げていた。

「どういうこっちゃ? もう少し詳しく説明せい」

「オーケイ。でも、そんなに難しいことじゃないよ。

 シスター・ロザリンドからの手紙には、【緋色のランタン】は、マンチュアナ鉱山事件の生き残りだって書かれてただろ? でも、『上』の人たちが調べて回ったところ、俺以外の被害者たちはみんな、帝国への復讐なんか考えず、穏やかな暮らしを回復することを選んだらしくてね。テロ組織に協力している形跡のある人間は、ひとりもいなかったんだと。

 つまり、なんだ。【緋色のランタン】は、少なくとも、マンチュアナ鉱山事件とは何の関係もない、カタリの集まりだってわかったってことでさ……」

「なんと」

 俺のその言葉には、さすがの老人も呆れ返ったようだった。

「自分自身の動機も偽るような奴らに振り回されとるのか、わしらは!

 ……しかしこうなると、奴らが本当に帝国を憎んでいるのかどうかも、ちと怪しくなってきたのう」

「ああ。『上』も、あんたと同じ疑念を抱いているらしい。本気で帝国への攻撃を企てるのなら、嘘の動機を掲げて仲間を募るなんて、するはずがない。同じ悲劇を経験してるかどうかなんて、ちょっと話せばわかることだからな。俺がもし、奴らに同調して、組織の仲間入りをしたとして、嘘の動機で誘われたって気付いたら、間違いなく協力する気をなくすよ」

「じゃあ、どうして【緋色のランタン】は、あんなでたらめな勧誘の手紙を書いたんじゃ?」

「わからない。だが、『上』がもっと調べを進めて、【緋色のランタン】の全体像を掴んだら、その答えも出せるかも知れない。結論は次の連絡待ちになる、な」

「ふーむ。じれったいもんじゃのう。もっとちょくちょく、『上』と情報交換ができればええのに。向こうが具体的な指示を出してくれれば、わしは衛士隊の仕事として調査を手伝えるんじゃぞ」

「気持ちはわかるがね。『上』はあくまで、秘密の保持を重視してるようだから。支援してもらっている以上、俺たちは彼らの意に沿うように行動しなければならない。

 だが、なんとなくだが……この件は、もう俺たちが動かなくても大丈夫な気がする。敵はだいぶボロを出しているようだし、わざわざ何か対策を取らなくても、勝手に収束するんじゃないかな……」

 俺のこの予想は当たっていた。さらに七日後、『上』からの金貨通信が届き、【緋色のランタン】問題が完全に解決したことを知らせてくれたのだ。

 それはちょうど、マーキューシオ邸での定例会議の直前であった。区切りもいいので、俺はこの機会に、ベンヴォーリオとマーキューシオにも、この空騒ぎについての情報を公開することにした――ふたりを仲間はずれにしていたことに関しては、自分でも心苦しく思っていたし、空騒ぎは空騒ぎで、我々の計画に利用できる可能性のあることに気付いたからだ。

「……ふむ、話はわかったよ、ロミオ。あなたもなかなか、厄介な立場に立たされていたみたいだね。

 まあ、それを私たちに黙っていたことについては、今度の会議に美味いおつまみを持ってきてくれれば、許すとしよう」

 ことのあらましを聞き終えたベンヴォーリオは、アンチョビを詰めたオリーブの実をかじりながら、気楽にそう言ってくれた。

「そ、それで。『上』の方々は、そののっぴきならない問題が、どんな風に解決したと言ってきたんですか?」

 突き出たお腹をテーブルに乗せるように、身を乗り出して聞いてきたのはマーキューシオだ。彼にとって重要なのは、あくまで【緋色のランタン】という不安要素であり、俺が彼に隠し事をしたことは、まるで気にならないようだった。

 すでに秘密を知っているバルサザー老人は、何も言わずにワイングラスを傾けているだけだ。ただ、その表情は、不機嫌そうに歪んでいる。彼は一ヵ月以上、必死に【緋色のランタン】を追ってきた。だが、その仕事が――結局のところ――あまり意味がなかったとわかって、すっかりふて腐れてしまったのだ。

 三者三様の表情が並ぶテーブルを見渡して、俺は小さく咳払いをした。

「よし、オーケイ。それじゃ、簡単に説明しよう。

 最初の報告の時点で、『上』の人たちは、【緋色のランタン】が、マンチュアナ鉱山事件の被害者からできているのではない、ということを看破していた。

 では、実際はどういう連中の集まりなのか? それを探るため、唯一舞台上に登場しているメッセンジャー、シスター・ロザリンドを中心に、調査を進めていくことにしたわけだ。

 彼女が宿に残した『ロザリンド・ギベレッツ』の署名が本名とは思えないが、そのファースト・ネームが、うちの家内に名乗ったものと一緒であるということから、少なくとも『ロザリンド』という名前に、ある程度の愛着――というか、使いやすさを感じているらしいことがわかる。となると、アンペルバール以外の場所でも、同じ名前で活動しているのではないだろうか。

 そう考えた『上』の方々は、各地の衛士隊に連絡を取った。帝国だけでなく、他の三国にも使いを走らせ、『ロザリンド』という名前の、金髪の女テロリストに心当たりはないか、と問い合わせて回った。

 ベルホルム、リルロッサ、ジャゼでは、何の成果も得られなかった。ユカニム大教国でも、最初は反応がなかったが、……ぷぷっ……ああ、まったくくだらない……国際テロリストのリストには、『ロザリンド』の名はないが、軽犯罪を犯した前科者としてならば、衛士隊の記録に似た名前がある――と知らせてきたんだ」

「軽犯罪?」

「そうだよ、ベンヴォーリオ。ほんの数ヵ月か数年、牢屋に入れば済む程度のくだらない罪さ。

 ええと、大教国中央衛士局の犯罪者リストには、こうある……ロザリンド・ギベレー。十九歳の時、詐欺、恐喝、公文書偽造の罪で捕まり、懲役一年三ヵ月の刑を受ける。刑期を終えて出てきたのが、二年前。目下の消息は不明。外見的特徴は、ジュリエットの目撃証言とほぼ一致する……と、こんな感じだ」

 しーん。と、場が静まり返った。

 バルサザー老人は、すでにオチを知っているために、むっつりと押し黙って。ベンヴォーリオは、ことの真相を察して、呆れ顔になって。マーキューシオだけ、よくわからないらしく、きょとんと目を見開いている。

「よし、もう少し詳しく説明しようか。このギベレー嬢が監獄にぶちこまれる原因になった犯罪だがね、具体的にはこういうものだったんだ。

 まず、大教国騎士団の名を騙って、善良な一般市民に手紙を出す。魔街攻略遠征のために、寄付金を募りたい……って感じでね。

 この手紙で求められているのは、ごく少額の寄付だし、大教国騎士団は人気がある。多くの人が何も疑わず、指定された銀行口座に金を振り込んだ。

 これだけでもなかなかの稼ぎだが、そこで終わらないのがギベレー嬢の欲深いところだ。彼女は寄付をした人々に対し、さらにこんな手紙を送りつけるんだよ……あなたがお金を振り込んだのは、ある危険なテロ組織の資金源となっている口座だ。そこに金を入れた以上、あなたはテロ組織の協力者ということになる。すでに、振り込まれたお金でテロが行われてしまったので、騙されたという言いわけは通用しない。あなたは逮捕され、裁きを受けることになるだろう。

 しかし、今のうちに自分のしたことを認めれば、軽い罰金刑で済ませられる。裁判を受ける必要もないし、刑務所にも入らずに済む。前科もつかない。犯罪者となって破滅するのが嫌ならば、こちらの指定する罰金を口座に振り込むべし……とね。

 この二回目の脅迫的な手紙で要求する金額は、一通目よりはだいぶ大きい。一通目が数千から数万エイン程度だとしたら、二通目は数十万から百万エインの間だ。しかし、まあ、裕福な人間なら充分払える。だから、前科者になるよりは――って気持ちで振り込んじまった人も、かなりいたらしいな。この二段構えの詐欺手紙で、ギベレー嬢は半年のうちに数千万エインを集めたそうだ」

「は、ははあ。何となくわかってきましたよ」

 マーキューシオが、肉の多いあごを撫でながら、小さく頷いた。

「つまり、今回の【緋色のランタン】からの手紙も、ほとんど同じやり方なんですね?

 ロミオさんがその気になって、シスター・ロザリンドに連絡を取っていたら、どこかから『お前はテロ組織の一員だ、衛士隊に通報されたくなかったら口止め料を払え』と書かれた手紙が送られてくるって仕組みだったんだ。そうでしょう?」

「ああ、そう考えて間違いないだろうな。ユカニム大教国にいた頃のギベレー嬢は、まったく弱味のない人間を騙して、弱味をでっち上げることから始めていた。一度捕まって、帝国に流れてきた彼女は、また詐欺で金を稼ごうと考えたが、今度はよりやり方をブラッシュ・アップして、本当にテロに参加しかねない下地がある男を標的に選んだんだ。

 俺の過去を知ったから、こんな茶番を思い付いたのか? それとも、俺を標的に選んでから、過去を調べたのか? どちらなのかはわからないが、もし引っ掛かっていれば、嘘じゃない本当の弱味が生じていただろう。そして、身に覚えのあることで脅されちゃ、ちょっと逆らえない。俺はいい金づるにされちまってただろうな。

 まったく、恐ろしいことを考える女もいたもんだよ。先にこっちのチームに入っていて、本当に助かった」

 すでに自分たちでテロ計画を練っていたからこそ、新しい誘いに乗らずに済んだ。仲間や『上』が優秀だったから、早々にギベレー嬢の化けの皮を剥ぐことができた。今回の件で、騙されることの恐ろしさと、頼れる仲間を持つことの大切さを再確認できた気がする。

「まあ要するにだ、ロミオ。【緋色のランタン】ってのは、ロザリンド・ギベレーという詐欺師のでっち上げた架空の存在で、我々の計画の邪魔になる可能性はまったくない……という結論でいいのかな?」

「そういうことさ、ベンヴォーリオ。いや、それどころか、【緋色のランタン】は、思いがけない味方になってくれるかも知れないんだ。

 いいかい、彼らは存在しない組織だ。もちろん、帝国に挑む気もないし、アンペルバール教会の大聖堂に放火することもあり得ない。

 しかし、それを知っているのは、ここにいる四人と、『上』の方々、そしてギベレー嬢だけだ。帝国の人々……特に衛士隊の連中は、【緋色のランタン】の実在を信じていて、警戒している。いつテロが行われるか、いつ火が放たれるかってビクビクしてるはずだ。

 そんな状態で、俺たちが大聖堂を爆破したら、どうなる? 言うまでもないよな……間違いなく誰もが【緋色のランタン】の仕業だと信じてくれるさ! 俺たちに疑いの目が向くことは、けっしてない!」

 おおっ、と、ベンヴォーリオとマーキューシオが目を見張る。

「そうか。僕たちは、思わぬところから生け贄の羊を手に入れたんですね?」

「その通り。架空のテロ組織……これほど、罪をなすりつけるのにちょうどいい存在があるか、って話さ。

 特に俺なんかは、【緋色のランタン】からの勧誘を拒絶し、衛士隊に通報した人間だからな。世間的には、テロ組織の敵と認識されてるはずだ。なら、その当人がテロを起こすなんて、誰も思わないだろう。

 まあ、強いて問題があるとすれば、今も逃げ回っているシスター・ロザリンドこと、ロザリンド・ギベレー嬢だ。俺たちがどんなにうまく濡れ衣を着せても、彼女だけは、【緋色のランタン】に罪がないことを知っているわけだからな。

 だが、脅威、といえるほどの脅威にはならないだろう。彼女はお尋ね者だから、【緋色のランタン】が実在しないということを、大声で訴えることができない。まあ、捕まってもいいという覚悟で、姿を現すということも考えられないではないが……その場合は……あんたに任せていいだろうね、じいさん?」

「ああ。もしロザリンドが自首してきたり、ヘタこいて捕まるようなことがあったら、そん時はわしがこっそり始末するさ。拘留中の容疑者が、牢屋の中で病死するのは、よくあることだ」

 何の感慨もなく、バルサザー老人は言ってのけた。こういう汚れ仕事の話を、眉ひとつ動かさずにできる彼は、やはり頼りになる。

「まあ、そんな感じで、問題はすべて解決し、逆に大きな武器が手に入った。

 しかし、この武器――【緋色のランタン】を利用した欺瞞には、賞味期限がある。あまり長く行動を起こさなければ、世間はこのテロ組織の存在を忘れてしまうだろう。俺たちは来年の一月に本望を遂げるつもりでいるが、いざ事件を起こした時に、それが【緋色のランタン】の仕業だと思われないのでは、意味がない。

 そこでだ。これから一月までの半年の間に、【緋色のランタン】の名前を使って、ちびちびと小規模な放火事件を起こして回るというのはどうだろうか。被害が大したことなくても、しばしばニュースになっていれば、人々の記憶からは消えずに済むんじゃないかと思うんだが」

「ああ、それはいいアイデアかも知れないね、ロミオ。私たちのストレスを発散させる、という意味でも。

 何年も待ち続けて、話し合いを続けるだけというのは、少しくたびれるものだから。細かいことであっても、何か行動を起こせるというのは、気晴らしになるよ」

「そうですね、ベンヴォーリオさん。それに、実際に火と火薬を使うなら、本番の予行演習にもなると思います。やっぱり練習しておくのとそうでないのとでは、安心感が違ってくるでしょう。

 問題があるとすれば、捕まる危険をいくらか冒さないといけない、という点でしょうか。放火事件の方で尻尾を掴まれてしまうようなことがあったら、本末転倒ですから」

「ふん、それこそわしに任せておけばええんじゃよ、マーキューシオ。衛士であるわしなら、どんな証拠も隠滅できるし、偽の手がかりを現場に置いてやったりもできる。捕まる心配は、まあ考える必要はあるまい」

 俺の提案は、どうやらご好評頂けたようだ。その小計画はその場で可決され、そのまま、誰がいつ、どこに放火をするか、シフトを決める相談になだれ込んだ。

 その過程で、放火が【緋色のランタン】の仕業であることを示すために、オリジナルのサインを作って現場に残してはどうか、という案まで飛び出した。もちろん、俺たちは真剣に検討した――まさか、大の男が四人も揃って、シンプルかつ斬新で洒落たサインのデザインについて、何時間も頭を悩ませることになるとは! あとで思い返すと少し情けない気もするが、充実した会議であったことは間違いない。

 そう、俺たちは充実していた。

 トラブルは解決され、計画はどんどん洗練されていく。仲間たちのモチベーションも高く、時間的余裕もたっぷりある。

 半年も先の話ではあるが、悲願が成就するであろうことは間違いない。――疑いや不安は、どこにもないのだ。



「あなたは少し人使いが荒いと思います。ミズ・フェステ」

 ローレンス・ヴェロナット司教は、疲れきった表情でそう言った。

 普段、シャルロット・フェステと会う時の彼は、緊張と警戒で全身を強張らせているが、今回ばかりは椅子の背に体重を預けて、全身から力を抜いている。疲労が、職業意識をわずかながら上回ってしまっているのだ。

 実際、ここ四十日間ほどのローレンスは、ひどく忙しかった。アンペルバール教会訪問の件で、先方と打ち合わせをしなければならなかった時に、ロミオが送った謎のテロ指導者への手紙を追跡するという、絶対に逃せない緊急の仕事が重なったせいだ。

「その手配が済んだと思ったら、ロザリンド・ギベレーとかいう架空の人物のデータを、大教国の犯罪者リストに挟み込め、なんて言うんですからね!

 政治局のお偉方を説得するために、何通の手紙を書いたことか。ああいう細工が必要だったんなら、もっと早いうちに言って下さいよ」

「それは本当にごめんなさい。でも、得られた情報は、あなた様が待ち望んだものだったでしょう?」

 ローレンスの文句を、シャルロットは涼しい顔で片付ける。

 彼女が飲んでいるのは、その態度に相応しい、クールなミント・ラムだ。この日の二人の密会場所は、いつもの大教国料理の店ではない。アンペルバール教会のそばにある、静かなバーだった。

 カウンターに並んだローレンスとシャルロットが、お互いのグラスを軽くぶつけ合ったのが、ほんの数秒前。それは祝杯だった。とうとう、求めていたものを手に入れたことを祝うための。

 ローレンスは、自分の分のジンジャー・ビールで口を湿して、やや不本意そうに、シャルロットの言葉に頷く。

「ええ、確かに、あなたからの知らせを受けた時は小躍りしましたよ。まさか、薪をくり貫いて、その中に手紙を潜ませるなんて! 普通だったら、まず気付けなかったでしょう。それを見逃さなかったあなたには、本当にいくら感謝してもし足りない。

 実際、どうやって探り出したんです? きっと敵も、この細工をする時は、誰にも見られないように最大限の注意を払っていたと思うんですが」

「私の『福音』を、フルに活用しただけですわ。

 仰る通り、ロミオ・ピュラモッシは、卵を守る白鳥のように警戒していました。実を言うと、危うく見つかりそうになったぐらいです。

 でも、運良く彼の目に私は映らなかった。いえ、見られはしましたが、気付かれなかったと言うべきでしょうか。哲学的な表現ではありませんよ?」

「要するに、ぎりぎりの綱渡りに成功したということですね。なんにせよ、うまくいって良かった。

 薪屋の従業員の追跡は、逆にかなり楽だったそうですよ。向こうには、バレているはずがないという油断があったんでしょうね。

 追跡を担当したぼくの部下が言うには、手紙入りの薪は、途中で五人ほどの手から手へリレーされてから、最終的にある貴族のもとに届いたそうです」

「その貴族というのは、どこの? リルロッサですの? それとも、ジャゼ?」

 濡れた瞳で問いかけるシャルロットに、ローレンスは浮かない表情を作ってみせた。

 呆れたような、哀れむような、あるいは脱力したような――。探し求めた答えを得られた人間が浮かべる表情としては、ずいぶんと不自然なものだった。

 彼はため息とともに、その理由を口にした。

「いえ、それがですね。馬鹿馬鹿しい話なんですよ。

 どこの国の貴族か、とお尋ねでしたね。お答えしましょう、ベルホルム帝国なんです! まったく、とんだ茶番としか言いようがない……帝国を攻撃するこの陰謀の裏にいたのは、他ならぬ帝国そのものだったんですよ!」

 この真相には、さすがのシャルロットも目を細めた。

「どういうことですの? 詳しい説明を頂きたいわ」

「ええ、ええ、話しましょう。ロミオからの手紙を受け取ったのは、モンタギュー伯爵という帝国貴族でした。名前ぐらいは聞いたことがありませんか? 生え抜きの軍人で、帝国軍の対外特殊作戦部隊、『ディープ・オペレーション』の隊長を務めている人物です。

 彼の部隊は、戦場で敵と真正面からぶつかるような、正々堂々とした戦闘は行いません。他国に対して情報的な工作を仕掛け、政治的、経済的な損失を与えることが、主な仕事なんです。謀略のプロフェッショナルと言えば、わかりやすいでしょうか。

 世間を騒がせたいくつかの金融危機、政治家のスキャンダル、暗殺事件……その多くは、彼らの仕業だと言われています。ロミオ・ピュラモッシが被害に遭った、マンチュアナ鉱山事件があるでしょう? あれも実は、『ディープ・オペレーション』の企画したものです」

「つまり、ロミオという名のテロリストは、よりによって自分の仇に雇われている……ということ?」

「そうなります、可哀想なことにね。モンタギュー伯爵という人物は、悪魔のような知恵の持ち主ですよ。自分で痛めつけた相手だからこそ、どんな言葉をかければ怒りを煽れるか、良くわかっているんです。

 顔を隠した伯爵の煽動によって、帝国への復讐心を固めたロミオは、何も知らずに伯爵の道具となりました。今となっては、彼や彼と行動している工作員たちには、哀れみの気持ちしか湧きません。もちろん、だからといって放っておくわけにはいきませんが、より義憤をもって対処すべきは、『ディープ・オペレーション』のモンタギュー伯爵であると、はっきりわかりました」

「まったく同感です、ファーザー・ヴェロナット。

 でも……どうして、そのモンタギュー伯爵は『聖杯』の爆破などを企んでいるのでしょう?

『ディープ・オペレーション』は、当然、ベルホルム帝国の国益を守るための組織のはず。帝国の宝である『聖杯』を破壊することには、デメリットしかないと思うのですけれど」

「そこのところも、うまい仕掛けがありましたよ。うちの諜報係が、十日かけて情報を集めてくれました。

 モンタギュー伯爵はね、別に『聖杯』の爆破を目的としているわけではないんです。彼が求めているのは、『ジャゼ共和国の人間によって、帝国が攻撃された』という事実なんですよ。

 爆破テロによって、自分たちが少なくない傷を負う。その直後に、実行犯であるロミオたちを逮捕し、そのプロフィールを、ジャゼ共和国の政治家たちに突きつける。

 自分の国の人間が、他国の人たちに迷惑をかけた、というのは、それなりの弱味になるでしょう。共和国は帝国に対し、一歩譲った態度をとらなくてはならなくなるはずです。逆に、帝国はそれにつけ込んで、いろいろな要求ができる――領地を寄越せと言うでしょうか。技術を分けろと言うでしょうか。あるいはもっとシンプルに、侵略の大義名分に使うかも知れませんね――この爆破事件はジャゼ上層部による陰謀であり、我々は卑劣なテロに対して反撃を行う権利がある――といった感じで。

 何にせよ、メリットは大きいですよ。あなたは先程、ベルホルム帝国の国益と仰いましたが、それを言うなら数百億、いや、数千億エイン規模の利益が見込めるでしょうね。マンチュアナ鉱山事件の残りかすを再利用して、それほどのものが得られるなら、陰謀としてはむしろ最上等の種類のものと言えるんじゃないでしょうか」

 シャルロットは、少し考え込むように目をつぶって、やがて頷いた。

 国益。確かにそれは、個人にとっての復讐の念に負けず劣らず、大きな動機だった。

 そして、国益が動機だとすると、なぜモンタギュー伯爵が、『聖杯』を爆破するなどということを考えたのか、その理由もわかってくる。

「……つまり、『聖杯』は爆破されないのですね? ロミオたちが破壊させられるのは、きっと偽物なんだわ。

 でないと、話が通じませんもの。たかだか数千億程度のために、たった二つしかない神器を犠牲に捧げるなんて、馬鹿げてますから」

「その通りですよ、ミズ・フェステ。犯行の日、大聖堂の祭壇に安置されるのは、職人が『聖杯』そっくりにこしらえた、ただの金細工の杯です。

 これなら爆破されても、帝国の懐は痛まない。大聖堂は崩れ落ち、偽の『聖杯』もバラバラになるでしょうが、本物の『聖杯』は、奇跡的に無傷で瓦礫の下から発見された――という触れ込みで、皇帝のもとに返されますよ。

 彼らの負担は、偽の『聖杯』の代金と、大聖堂の修理費用だけ。そんなのは、のちにジャゼからむしり取れる金額と比べれば、はした金と言わざるを得ません」

「ああ、もう、本当にうまくできてますわね。モンタギュー伯爵の才能には、敵ながら感心します。

 でも、密告状には、首謀者は三人と書かれていたのですよね? この喜劇をプロデュースしている、残りのふたりはどこの誰なのです?」

「それはまだ不明です。しかし、そう遠からず明らかになるでしょう。作戦の進行状況から考えて、この時期にスリー・トップが接触を持たないはずがない。

 遅くともあと三ヵ月以内に、モンタギュー以外の二名もあぶり出してみせます。そして、その時が来たら……ミズ・フェステ……あなたには、工作員の監視とは違う仕事を頼むことになるでしょう」

「……………………」

 ほんのわずかな時間、気まずい沈黙が、ふたりを包んだ。

 ローレンスのジンジャー・ビールは、その場の雰囲気を読んで無言でいたが、シャルロットのミント・ラムは、氷とグラスを触れ合わせて、カランという涼しげな音を立てた。まるで、ローレンスに言葉の続きを促すかのように。

 彼は諦めて、伏し目がちに口を開いた。

「卑怯な、汚れ仕事です。意味はおわかりですね?

 ぼく個人としては、あなたにはやらせたくないです。女性の仕事としては、その――あまりに、血なまぐさいことですから。

 しかし、ぼくに指示を出す立場にいる人たちは、あなたにやらせるのが望ましいと言っています。大教国にも暗殺要員はいますが、国外の人間に委託できるなら、それが一番良いというわけです。

 もちろん、まだ何も決定してはいません。でも、先ほども言いました通り、血なまぐさい仕事ですし――それに、ここまで一緒に仕事をしてきたあなたにも、できれば選択の機会を持ってもらいたい、と思うんです。

 だから……もし、あなたが望まないならば……ぼくはその意思が容れられるよう、上の人たちに働きかけるつもりでいます。いかがでしょう、ミズ・フェステ?」

「お気遣いありがとうございます、ファーザー・ヴェロナット」

 短い礼とともに、くっ、とグラスを大きく傾けて。シャルロットはミント・ラムを飲み干した。

 そして、その灰色の目に親しみを込めて、年若い司教を見つめ。ゆっくりと、首を横に振る。

「でも、その必要はありません。いつか命じられたなら、私はためらわずにその仕事を引き受けるつもりです。最初から――」

 言いかけて、彼女はふと言葉を止めた。優しげな眼差しが、すっと逸らされる。

 ローレンスに聞かせてもいいことと、そうでないことの区別を間違えそうになって、シャルロットは恥ずかしくなったのだ。最後まで責任を持って仕事をするためにも、心の内側を軽々しく表に出すべきではない。それはプロとして、最低限わきまえるべきことだ。

(そう、彼にわざわざ言うことではないわ)

(『最初から、命じられなくてもそれをするつもりでいました』なんて。彼に話したって、首を傾げられるだけよ)

(遠からず殺せる。『聖杯』を蔑ろにする異端者たちを。私は最初から、その機会だけを待っていたわ)

(この大地に住まう人類として……ユカニム教徒として……『純水派シンシアラ』として、天使様の恩恵に仇なす者に死を。それは当然の義務であり、運命)

(そう。当然だから言う必要はない。当然だから、断ったりなんかするわけがない……)

 シャルロット・フェステには、疑いも不安もない。

 ただ自分の信じるがまま、天使に仕えるのみである。



 朝が昼に変わり、昼は夜に変わり。

 少しずつ、しかし確実に時は流れていく。

 終わりの日は、すぐそこまで近付いていた。

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