金色の獣と歩む道《序章》
昔々、アレイヌス王国に一人の姫がいました。その姫は、5番目に生まれ、兄弟の中で唯一魔力がありませんでした。
この国では、魔力量で優劣が付けられます。魔力が無いということは、人間的に魅力が無いことと同じでした。
家族は姫をいない存在として扱っていました。使用人たちは、表面上は姫に好意的に接していました(魔力は無くとも曲がりなりにも王族だからでしょう)。よって、姫は普通であれば、城からおい出されてしまう所を、不幸中の幸いにも城から追い出されることはなく、理不尽な仕打ちを受けることもありませんでした。
あるとき、この姫を殺すために雇われた暗殺者がいました。この暗殺者は城に侵入し、姫のいる部屋にたどり着きました。
そして、部屋に入り、姫を拘束し、殺そうと刃を降り下ろそうとしました。
このとき、姫は
「死にたくない!生きたい!」
と強く思いました。すると、その思いに反応してか、姫の前に光が満ち溢れ、金色の毛を持つ大きな獣が現れました。その獣は、姫のドレスの裾を噛んで持ち上げ、外に出て走りだしました。
しばらくの間なすがままにされていた姫でしたが、獣が立ち止まった瞬間、獣に自分を下ろすように伝えました。獣は人の言葉がわかるのでしょうか、姫のことを一瞥すると、姫を地面に下ろしました。
姫は獣に、ここは何処か、何故自分を助けてくれたのか、ということを聞こうとしました。しかし、助けてもらったお礼を先に言うべきだと思い、お礼を口にしました。獣は笑ったのか、一瞬目を細めました。
獣がなにかを唱えるかのように、口を動かした次の瞬間、獣の体を光が包みました。姫は突然の光に、目を閉じました。少ししてから光が収まったように感じ、目を開けると、そこには金色の髪をした男性がいました。姫は獣が消え、人が現れたことに驚きました。ぼうぜんと男性を見ていると、その人は、姫を見て、愉快そうに笑いました。
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