四季物語
夢物語
・夢物語~冬~ 冬物語
雪がちらつき、街を歩く人々が分厚い防寒具に身を固める季節。
そんなどこにでもある風景が、この街でも広がっていた。
冷たい風が物静かに吹いている。
空には何か白っぽいものが舞っているが、残念ながらまだ積もってはいない。
例えるに、別れの季節。
冬の始まりはいつからだろうか。
木々に残った枯れ葉が、全部散ったら?
暦的に十一月から?
単純に寒くなったら?
防寒具が必要になったら?
周りの友達が、もう冬だね。と言ったら?
それとも、雪が降ったら?
……冬の始まりは人それぞれだ。
・夢物語~春~ 春物語
桜咲き、ほとんどの人々が新しい生活に夢見る季節。
道路の両端には桜並木が広がり、通りゆく人々の足を止めさせている。
家では、学生たちが、真新しい服に身を包み、傷一つない鞄を持ち、履きなれていない靴を履いて、一歩ずつ、外の世界に足を踏み出す。
ほとんどの人にとって、始まりの季節。
春の始まりはいつからだろうか?
雪が解けたら?
暦的に四月から?
きれいに桜が咲いたら?
新学期が始まったら?
暖かくなってきたら?
恋が始まったら。なんて言う人もいるかもしれない。
・夢物語~夏~ 夏物語
陽光が降り注ぎ、皆一様に薄着になる季節。
街が、色とりどりの洋服の色から、肌色に染まり始める。
水のあるところに人が殺到し、冬の間部屋にこもっていた人々は部屋よりも外を選ぶ。
大多数が活動する季節。
夏の始まりはいつからだろうか?
暑くなってきたら?
海ではしゃぐ子供の姿が見えたら?
木々が青く茂ったら?
もちろん、恋が実ったら。なんていう意見もあるだろう。
・夢物語~秋~ 秋物語
今まで質素だった葉が、己の存在を示すかのように、紅く、色づく季節。
この木枯らしの季節が終われば、またあの季節がやってくる。
もうすぐそこまで、その足音が聞こえている。
一部の人が、振り返り、思い返す季節。
秋の始まりはいつからだろうか?
木々が紅く色づいたら?
食べ物がおいしくなったら?
終わりが見えてきたら。なんてことも言えるだろう。
……秋の終わりは、人それぞれだ。
こうして……また、あの季節がやってくる
・夢物語~?~ 始まりの物語・終わりの物語
すべてが始まり、終わる。ウロボロスのごとく繰り返される季節。
終わるものは始まり、始まるものは終わる。
その循環は終わることなく永遠に流れ続ける……
始まりも終わりもなく、すべての人にとって、ただ、課程のみが存在する季節。
すべての、始まりと終わりは、こうして起こる。
~全ての、始まりと終わりを待つ人々へ~