7/37
鴉が教えた予兆
塚本は清明村を襲った悲劇について語る。
「十年前の今日村外れにある研究所の所長馬場大輔が家族全員を刺殺して家に放火した。研究所では医薬品の研究が行われていて、産業廃棄物が森に流れる水を汚していった。村民たちはその研究を止めさせる抗議活動を行った。何度も抗議活動を行ったが馬場は聞く耳を持たなかった。そんな矢先にあの心中事件が起きた。村民は全員思っただろう。これは橘炎帝の呪いだ。陰陽師伝説は本当にあったと」
塚本はお茶を飲んだ。
「それからこの事件は波紋を呼ぶ。あの研究所の研究員は次々と不審な死を遂げていき、呪いだと叫んで一人は逃亡するも交通事故で死亡。三年後には全員が死亡した。正確には一人は行方不明だから生き残りはいる。また馬場一家にも生き残りがいる。あの日末っ子の馬場茜は友達の家に泊まっていた。その日以来わしは彼女の親代わりになった。茜は半年前東京で仕事を始めたので今はいない」
塚本の家を出た時鴉たちが空を飛び立った。まるでこれから起こる惨劇を予言しているかのように。