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石碑の意味
喜田は塚本の家に向かった。塚本の家は昔ながらの日本家屋である。塚本はお茶を出し陰陽師伝説について話しだした。
「この村に伝わるいいつたえだ。平安時代この村には橘炎帝という陰陽師がいた。ある日この森を大蛇が荒らし始めた。大蛇を退治しようと村民は立ちあがったが出来なかった。そこで橘炎帝は大蛇を封印することにした。封印は成功するかに思えたが森にはもう一つの敵が潜んでいた。大蛇の退治に失敗して命を落とした人々の怨念だ。大蛇はその怨念と合体して巨大な怪物に変貌した。手に負えないと思った彼は大蛇に火を付けた。大蛇は燃え尽き彼は太鼓を叩いた。今で言う鎮魂歌のつもりだったのだろう。大蛇が燃え尽きた後彼の命も燃え尽きた。それからこの村では送り火祭りで大蛇の山車に火を付ける風習が始まった。もちろん太鼓の演奏も行い死者の魂を送る鎮魂歌にそって。」
喜田は話を理解した。
「村の入り口にあったあの石碑はこのことを意味していたのですか。しかし橘炎帝の呪いという意味が分かりません。」
塚本は悲しそうな表情を浮かべた。それはある悲劇を暗示しているかのように。