送り火祭りと陰陽師伝説
その後平井は神社に案内した。その道中では村民が祭りの準備をしている。
「何の祭りですか。」
「送り火祭りです。この村に伝わる伝統行事です。」
二人が歩いていると和太鼓の音が聞こえた。やぐらの上で和太鼓の練習をしている。和太鼓を教えている男は女に向かい言った。
「迫力に欠ける。普通の盆踊りだとこれでもいいけどこんな音では霊を送る鎮魂歌にはならない。」
男は熱心に太鼓を教えていた。喜田はその姿を見て平井に聞いた。
「彼は誰ですか。」
「宮川黄介さんです。この村出身の音楽家で毎年この季節になると、和太鼓の指導に来ます。」
するとカメラの音が聞こえた。あたりを見ると若い女がカメラで写真を取っている。平井は彼女を見た。
「彼女はルポライターの田辺彩花さん。この前取材を受けたから覚えているよ。」
「何の取材ですか。」
平井が沈黙すると一人の男が近づいてきて答えた。
「陰陽師伝説でしょう。村長に取材するなんてバカなルポライターさんだ。あの伝説の取材なら巫女のおばあさんに聞けばいいのに。」
そのルポライターにこの発言が聞こえてしまい田辺は反論した。地獄耳とはこのことだと喜田は思った。
「バカなルポライターですみませんね。その巫女のおばあさんにアポをとったけど取材拒否。だから仕方なく村長に話を聞いたのですよ。中川宏一さん。」
中川は舌打ちをして去った。