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転覆
十時。宮本栞は黒服の男達と川沿いを歩いていた。
「殺人事件で村から一歩も動けないなんて最悪ですね」
「送り火祭りが始まるまで適当に観光すればいいでしょう」
一人の黒服の男の提案に宮本は怒った。
「百歩譲ってそれでいいとしてもこんな村に観光地があると思います」
「観光ガイドが村役場にありましたよ。一番有名なのは遊覧船だそうです」
「遊覧船でいいけど変装してください。見るからにあなたたちは怪しいですから」
宮本が川の方を見ると遊覧船が浮かんでいた。あの遊覧船の運賃はいくらなのか聞こうとした時、その遊覧船が岩にぶつかり転覆した。その瞬間を見た宮本は指示を出した。
「警察と救急車は私が呼びます。あなたたちは私服に着替えなさい。観光客を装うために」
近くを通りかかった田辺彩花は川に飛び込み浮いている男を救助した。川辺まで行き人工呼吸をしたがもう息はなかった。救助をした田辺に宮本は報告した。
「警察と救急車は呼びました。この場を動かない方がいいでしょう」




