宝を探した愚か者
登場人物
馬場大輔 馬場研究所所長
馬場洋子 妻
馬場麻衣 長女
馬場美紀 次女
馬場茜 OL
平井青兵衛 清明村村長
塚本八重子 巫女
田辺彩花 ルポライター
三浦辰夫 建設会社社長
中川宏一 研究員
宮川黄介 音楽家
この作品中に登場する陰陽師伝説と事件の舞台となった清明村もフィクションです。実際には存在しません。
十年前。群馬県浅間山近くにある小さな村清明村でその事件は起きた。その村にある館で火事が起きたのだ。燃え盛る館を二人の男女が見ていた。女は大粒の涙を流し、男は地面にたたずみ絶望した。雨も降っていないのに男の服は汚れている。涙で土が泥になったからであろう。男は何度も絶望した表情を見せながら呟いた。
「何が人間のためだ。」
静かな夜。静かな村。そんな村に大きな悲鳴が響いた。村民はその声に飛び起き表にでた。遠くの方に黒煙が見えること以外村は変わらない風景だ。人々はこの悲劇が恐ろしい惨劇の発端となることをまだ知らない。
現在この村の奥地にある研究所に一人の男がいた。廃墟となった研究所は暗い。男は懐中電灯で辺りを照らす。
「どこだ。どこにある。」
男はポケットから地図を取り出し辺りを見比べる。
「間違いない。確かにここだ。あの野郎は嘘を言っていなかった。」
その近くには暗号が書かれた紙が貼ってある。男はそれに目をやる。
「これがあの野郎の言ったヒントか。」
隣の部屋には金庫がある。どうやら暗証番号を入力しなければ開けることはできないらしい。男は暗号を一生懸命解読しようと頑張った。後ろにあったプロパンガスボンベからガスが流出しているとも知らず。
(宝の在処は分かった。後はゆっくり暗号を解読すればいい。)
男は落ち着くために煙草を一服する。それが命取りとなることを知らず。充満したガスに火が引火しガス爆発が発生した。
(あの野郎。俺を殺すために。)
研究所に隠された宝を探した愚か者は身元不明の焼死体となった。