総理記者会見
午後7時
大中華帝國帝都中京総裁官邸2階執務室
「環球(大中華帝國に於ける沖縄の名前)が占領されただと!?」
将総裁の叫び声が執務室に響き渡った。
「あの兵器はハリボテでは無く、本物だったようです。レールガンまで装備していましたから。」
報告した秘書官は淡々と述べた。
「何だと……苦し紛れのハリボテだと思っていたが。被害は?」
「全部隊全滅です。駐留部隊は1兵残らず殲滅されました。一瞬にしてです。」「……信じられん。そのような兵器が現れるとは。あの総理が言ったのは真実だったのか。」
将総裁はそう言うと、力無く椅子に座った。
「敵は意外に侮れないかも知れません。環球を瞬時に占領したと言う事はその他の地域も危ういと言う事です。対策は如何なさいますか?」
「幾ら何でも我が国の物量には適わん。敵の数十倍に達する兵力が整いつつある。我が国は今や世界一の工業国家である。物量で押し潰せる。それにアメリカも日本を叩き潰す為に動き始めたからな。」
将総裁はそう言うと今度は一転して笑みを浮かべた。アメリカが大中華帝國側に付いたとなれば世界は大きく変わる事になってしまう。
そこへ別の秘書官が執務室に入って来た。
「将総裁、アメリカのクレア大統領から電話会談です。日本への対策について話し合いたいとの事です。」「了解した。すぐに行く。」
返事を聞くと秘書官は執務室を後にした。
「聞いただろ?あの女はこっちにべったりだ。今の内に利用するように持ち込むとするよ。」
将総裁はそう言うと執務室を出ていった。
残された秘書官はただ書類を読み直すしか無かった。
同時刻
世界各地
琉球列島と尖閣諸島奪還の報は世界中に飛んだ。大日本帝國連邦軍の攻撃は圧倒的で大中華帝國軍を完膚無きまでに叩き潰した。この報に欧州・アフリカ・南米諸国は称賛し、大中華帝國・アメリカ合衆国は沈黙した。世界は今や日本やイギリス・フランス・ドイツ等の欧州・アフリカ・南米諸国と大中華帝國・アメリカ合衆国の陣営に分かれている。日本等は対中大同盟を結んでいるが、大中華帝國とアメリカ合衆国は特別な同盟を結んでいない。だがアメリカ合衆国の南米侵攻は明らかに日本を弱体化させる為の物である。東南亜細亜全域が大中華帝國の支配する海となった為に石油以外の物資が輸入出来ない。そこで南米諸国が輸出してくれる事になったが、それを阻止するようにアメリカ合衆国は侵攻を始めた。日本にとってはアメリカ合衆国も明確な『敵国』であった。
午後9時
首相官邸1階記者会見場
ここで柏木総理の記者会見が開かれていた。琉球列島と尖閣諸島奪還について語るようである。
「本日は我が国が再び目醒めた瞬間であります。いえ、覚醒したと言いましょうか。大日本帝國連邦軍の支援を受け、我が国は琉球列島と尖閣諸島を奪還致しました。これは長い大中華帝國との戦いの幕開けであります。私はこの度の戦争を『第二次大東亜戦争』と名付けます。先の大戦は欧米諸国の植民地であった東南亜細亜諸国を解放する聖戦でありました。今次大東亜戦争は大中華帝國によって占領された東南亜細亜諸国を解放し、オセアニア諸国・中央亜細亜諸国・中東諸国・ロシア連邦を解放し、大中華帝國を叩き潰します。」
この叩き潰すと言う言葉に記者会見場は一瞬どよめいた。しかし柏木総理は気にせずに続けた。
「この第二次大東亜戦争は我が国の戦後史観の総決算です。日本の歴史上初めて敗北したのが第一次大東亜戦争となります。それから我が国は戦後のアメリカ合衆国追従外交に突入します。冷戦であったと言えば一言で片付きます。しかし我が国はその中で国家としての威厳と尊厳を失いました。高度経済成長で経済大国となった引き換えに我が国は大事な歴史と伝統を『戦前の悪』として捨ててしまったのです。これを私は、我が内閣は取り戻します。」
柏木総理の言葉に記者達は拍手をした。それに対して笑みを浮かべると再び口を開いた。
「この第二次大東亜戦争は当然ながら東南亜細亜諸国を解放する為の戦争であります。今実際に起こっている『第三次世界大戦』にも我が国は当然参戦しています。対中大同盟を結んでおり祖国を守る為に欧州各国と協力して大中華帝國に対抗して行きます。かつて歴史上数多くの国が世界制覇を目指して戦争を引き起こしてきました。それを成功させたと言えるのはローマ帝國でありモンゴル帝國であります。しかし今や大中華帝國は人類の歴史上最大規模の帝國となりました。この巨大な帝國は歴史上数多く現れた帝國よりも強大で更に覇権主義を有しています。この国相手に我が国の軍事力では正直手も足も出なかったでしょう。そこで現れた大日本帝國連邦軍はまさに援軍と呼ぶに相応しい規模と実力を持った奇跡の軍です。しかも大日本帝國連邦政府は我が国の考えを受け、海軍連合艦隊のみならず大日本帝國連邦軍4軍を派遣して下さいました。この援軍が無ければ今後の大中華帝國侵攻作戦は全く行えなかったでしょう。日本軍兵力では琉球列島と尖閣諸島奪還が限界であったと思います。此処に大日本帝國連邦軍将兵の皆さん、そして大日本帝國連邦政府の皆さん本当にありがとうございます。」
柏木総理はそう言うと頭を下げた。この記者会見は日本全国に生中継され日本海軍連合艦隊や大日本帝國連邦海軍連合艦隊も、沖縄に居る為生中継を見ている。更には黒子の力により大日本帝國連邦閣議室に生中継されている。
「最後にまだまだ作戦は始まったばかりです。敵は強大で長く厳しい戦いになるかも知れません。ですが戦いは始まりました。これから逃れる事は出来ません。私たちは必ずやこの戦いに勝利し平和を勝ち取らなければなりません。必ずやこの戦争に勝利しましょう!!」
柏木総理の言葉に記者会見場は拍手に包まれた。記者達は戦争の興奮と言うものを感じていた。