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ある朝のお話

作者: そると
掲載日:2026/03/22

開いてくださり、ありがとうございます。

 ある朝の日、と言っても時刻はもう9時50分。

私は、西野駅10時ちょうどの始発電車に乗り、南西野駅まで行く。

 この時間帯は休日にしては乗客が少なく、割と空いている。


 いつものように一番端の席まで歩き、腰を下ろした。この位置こそが私の「特等席」だ。

 えぇと、昨日読んでいた小説はどこかな、とカバンの中を探っていると、


「美香?」


と私の名前を呼ぶ声がした。

 カバンのなかに入れた手の動きが、自然と止まる。

 声がした方向をみると、私を見ている男性が立っている。

 

「さわき、せんぱい?」

「やっぱり美香だ、久しぶり」

「あ、お久しぶりです、沢樹さん」


 そう私が言うと、彼は私のとなりまで来て、ここ座ってい? と私に聞き、席に座った。


「今日、学校? 土曜だけど」

「いえ、今日はちょっと用事があって」


 沢樹陽太、私より1つ年上で、同じ中学校に通っていた。この頃から、短髪がよく似合っていた。

 童顔であることも相まって、最初は幼いイメージがあったのだが、話していくうちに、どこか大人びた雰囲気を感じていた。


 今も、黒く艷やかなショートヘアがよく似合っている。


「沢樹さんって、確か西野高校でしたっけ? 推薦でしたよね?」

「そう、サッカーのね。おかげで高校でも、サッカー部に入部したんだけど、何しろ練習が大変でさ。休みが少ないんだよね」


と沢樹さんが言う。


 サッカー部を続けているだけあって、日焼けした肌がより彼を大人っぽくさせ、少しドキッとしてしまう。


「西野高校のサッカー部って強豪校でしたよね? 毎年全国いってるとか」


と私は言った。


「美香は? 高校は結局どこいったの?」


と彼が尋ねてきた。


「えっと、岩田高校です。家から近いので」

「あ、やっぱあそこにしたんだ。でも岩田って、結構頭いいんじゃない?」

「うーん⋯⋯意外とそうでもないですよ。課題もそれほどないですし」


などと、高校生活の話をしていると、北西野駅についてしまった。

 北西野駅だから、まだ先だな、と思っていたら、沢樹さんは、どうやらここで、降りるらしい。


「じゃあ、またどっかで会ったら」

と言い残し、電車から降りた彼が手を振る。

 少し気恥ずかしい気持ちもあったが、抑え気味に私も手を振った。


 どこかで会ったら⋯⋯きっともうないかもしれない、沢樹さんは部活で忙しいだろう。

 それに、今日沢樹さんとしゃべれたのはたまたまだろう。


 それでも少し、期待している自分がいるのはどうしてだろう。

 

お読みいただき、ありがとうございました。

読みにくいと感じた箇所などはコメントなどで教えていただけると幸いです。よければグッドもお願いします。

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