ある朝のお話
開いてくださり、ありがとうございます。
ある朝の日、と言っても時刻はもう9時50分。
私は、西野駅10時ちょうどの始発電車に乗り、南西野駅まで行く。
この時間帯は休日にしては乗客が少なく、割と空いている。
いつものように一番端の席まで歩き、腰を下ろした。この位置こそが私の「特等席」だ。
えぇと、昨日読んでいた小説はどこかな、とカバンの中を探っていると、
「美香?」
と私の名前を呼ぶ声がした。
カバンのなかに入れた手の動きが、自然と止まる。
声がした方向をみると、私を見ている男性が立っている。
「さわき、せんぱい?」
「やっぱり美香だ、久しぶり」
「あ、お久しぶりです、沢樹さん」
そう私が言うと、彼は私のとなりまで来て、ここ座ってい? と私に聞き、席に座った。
「今日、学校? 土曜だけど」
「いえ、今日はちょっと用事があって」
沢樹陽太、私より1つ年上で、同じ中学校に通っていた。この頃から、短髪がよく似合っていた。
童顔であることも相まって、最初は幼いイメージがあったのだが、話していくうちに、どこか大人びた雰囲気を感じていた。
今も、黒く艷やかなショートヘアがよく似合っている。
「沢樹さんって、確か西野高校でしたっけ? 推薦でしたよね?」
「そう、サッカーのね。おかげで高校でも、サッカー部に入部したんだけど、何しろ練習が大変でさ。休みが少ないんだよね」
と沢樹さんが言う。
サッカー部を続けているだけあって、日焼けした肌がより彼を大人っぽくさせ、少しドキッとしてしまう。
「西野高校のサッカー部って強豪校でしたよね? 毎年全国いってるとか」
と私は言った。
「美香は? 高校は結局どこいったの?」
と彼が尋ねてきた。
「えっと、岩田高校です。家から近いので」
「あ、やっぱあそこにしたんだ。でも岩田って、結構頭いいんじゃない?」
「うーん⋯⋯意外とそうでもないですよ。課題もそれほどないですし」
などと、高校生活の話をしていると、北西野駅についてしまった。
北西野駅だから、まだ先だな、と思っていたら、沢樹さんは、どうやらここで、降りるらしい。
「じゃあ、またどっかで会ったら」
と言い残し、電車から降りた彼が手を振る。
少し気恥ずかしい気持ちもあったが、抑え気味に私も手を振った。
どこかで会ったら⋯⋯きっともうないかもしれない、沢樹さんは部活で忙しいだろう。
それに、今日沢樹さんとしゃべれたのはたまたまだろう。
それでも少し、期待している自分がいるのはどうしてだろう。
お読みいただき、ありがとうございました。
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