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五頭龍

愛敬童子を追い返して3日後、鎧を身にまとい三叉戟さんさげき(穂先が3つに分かれた長柄の武器)を手にした屈強な武神がホストクラブに参上した。七福神の一柱、毘沙門天じゃ。

「ふぬけたな弁財天よ。さあ、高天原に帰るぞ。これ以上、七福神の名を汚すでない」

あちきはソファーに深く腰かけて酒を飲みながら毘沙門天のにらみに微笑み返す。

ホストたちが毘沙門天の前に立ちはだかる。

「なんだおっさん?オレたちの弁天ちゃんはどこにも行かせねーよッ!」

「そーだそーだッ!」

「やっちまえッ!」

ホストたちは束になって毘沙門天に襲いかかる。しかし片手であしらわれた。ホストたちは壁や柱に吹き飛ばされ戦闘不能になる。

「おれの惚れた女に手を出すんじゃねえッ!」

サングラスの伊達男も殴りかかる。こやつは人間にしてはかなり強いほうだ。元ボクシングの世界チャンピオンじゃからな。毘沙門天の顔面に伊達男の右ストレートが突き刺さる。おっ?やったか!

毘沙門天は一歩も動かず腹を殴り返した。伊達男は吹っ飛びあちきの座るソファーを飛び越えていった。やはり人間ではムリかや。

「全員、顔はやめておいたぞ。商売道具だろうからな」

毘沙門天はふんっ!と鼻を鳴らす。やさしい男じゃ。手心を加えておったのか。ここまで圧倒的な強さを見せつけられたならふつうはあきらめて投降するが、あいにく切り札は用意しておるよ。

「いつまで座っているつもりだ?縄で縛って連れ帰るぞ?」

毘沙門天は近づいてきてあちきの肩をつかむ。その手をつかんだのはあちきの隣に座る青龍の刺繍ししゅうがほどこされた拳法着を身につけたツンツン頭の美丈夫じゃ。

「汚い手で俺の嫁に触るな」

毘沙門天の右腕がメキメキと音を立てる。人間離れした膂力じゃろ?驚いたかえ?

「小僧。何者だ?」

「俺は五頭龍。弁財天の夫だ」

「五頭龍だと?」

毘沙門天は目を見開いて三叉戟で五頭龍の腕を突いた。五頭龍は手を離す。

毘沙門天は後ろに飛び退くと、くるりときびすを返した。

「今日はこのぐらいで勘弁してやる。また来るぞ」

「臆病もん」

毘沙門天は振り向いて五頭龍を鋭い眼光で睨みつけたが、そのまま無言で立ち去った。

「さすが我が夫じゃ♩頼もしいのぉ♩」

あちきは抱きついてほっぺにチュウする。床に倒れていたイケメンたちは悔しそうに床を叩く。

「そなたたちもよく立ち向かってくれたの。愛しておるぞ。お礼に一曲歌ってやろう」

あちきはソファーに立てかけておいた琵琶を構える。あちきの美声にみんなが酔いしれた。

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