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天照大御神

わたしは運が悪い人を集めてライブをすることにした。

わたしの運をわけてあげれば死相のでてる人を救えるかもしれないからね。写真あれば死相出てるから判別できるから、写真を送ってくれた運が悪い人の中から抽選で20万人をライブに招待することにした。

「運が悪い人でわたしの歌を生で聴きたいって人は写真を送ってね♩抽選で20万人を無料でご招待します。あたった人は這ってでもきてね。それはじょーだんだけど、ヒッチハイクとかね。みんな協力してあげて」

ってテレビやネットで告知した。運が悪い人は貧乏な人が多いからね。

大量の応募が来たのでわたしは毎日大量に顔写真をみて死相が出てる人を絞った。

わたしだけの運じゃ足りないかもしれないから運がいい芸能人やお金持ちを集めたライブを開催して料金代わりに運を分けてもらった。おかげでわたしの運は弾けそうなぐらいパンパンに膨れ上がった。運がいい人から悪い人への献血みたいなもんだね。

ライブ当日、千葉・幕張メッセ駐車場特設ステージで開催したライブは死相が出てるお客さんばっかりで顔がぜんぜん見えなかった。運が悪い人ばかり集まったせいか悪天候で雨足はだんだん強くなり嵐で中止になりかける。

わたしは歌に乗せて運気放出した。手をかざさなくても運気のコントロールはできることが判明したので最近は念じるだけだ。ポーズあったほうがかっこいいから色々考えたけど無駄骨だった。

両手を合わせて祈るようなポーズや歌舞伎の見得を切るようなポーズとかね。バラエティ番組で運をコントロールするパフォーマンスを求めらた時はやってもいいかも。

うさぎも好きだけど龍も好きだから龍をイメージする。

わたしの芸名の弁財天は水の神様で龍も水の神様だから相性は抜群なのだ。

わたしの歌が黄金の龍になって20万人のお客さんの襲いかかった。黄龍は客席で暴れ回りすべてのお客さんを食らい尽くす。黄龍が暗雲立ち込める天に飛び立ったあと晴れやかなお客さんの顔で溢れた。暗雲は消え去り青空が広がっていた。

20万人の命を救った。わたしは運気を使い果たしてへとへとだったのでアンコールは断って楽屋の畳に寝転んだ。運は使うとなくなる。また貯めなきゃいけない。

15分ほど1人にして欲しいとスタッフに頼んである。タオルを目にかけて仰向けになっていると楽屋をノックする音がした。もう15分経った?

わたしは身を起こす。

平安時代みたいな格好の子供が入室してくる。可愛らしい顔だ。迷子かな。

「おひさしぶりです。弁財天さま。善財童子にございます。貴女さまをお迎えにあがりました」

善財童子くんは丁寧にお辞儀する。なにか勘違いしてる?

「弁財天は芸名だよ。あたしは幸子って言うんだよほんとはね」

「存じております。しかし貴女さまの魂は弁財天さまなのです。神の力が使えるのが何よりに証拠にございます」

「神の力?運気支配のこと?」

「そうです。幸運の神にのみ許された力でございます」

わたしは混乱した。

「わたしって神なの?」

「左様でございます」

「あはは。そんなバカな。人間だよ」

この前も学校で神様扱いされたな。神様が人間界にいるわけないんだよね。神様の世界にいるはず。

「くわしい説明は高天原で行います。手を合わせて霊化とお唱えください」

「こう?霊化ッ!」

わたしはふわっと体が軽くなる感じがした。

「肉体を失い霊体を手に入れました。さあ、参りましょう」

善財童子くんがわたしの手をとって宙に浮かんだ。わたしの体も宙に浮く。そのまま上昇する。

「あわわ、ぶつかるッ!」

天井にぶつかりそうになって目をつぶる。でも平気だった。わたしたちは天井を突き抜けて空に登って行った。

空を登っていくと雲の王国にたどり着いた。

空気が恐ろしく澄んでいて見渡す限り緑の田んぼが広がっている。わたしは手をつないだまま大きなお屋敷に連れて行かれた。江戸時代の偉い武士が住んでいたような感じだ。

いま住んでる洋風の豪邸もいいけど和風のお屋敷もいいね。

門に前に善財童子くんそっくりな15人の子供たちが左右に並んで待っていた。わたしが到着するとみんないっぺにお辞儀する。

「おかえりなさいませ、弁財天さまッ!」

わたしはビクッとなる。

「た、ただいま?」

子供たちは満面の笑みを浮かべた。善財童子くんは手を離し「案内します」と微笑み歩き出す。わたしはついて行った。長い廊下を歩いていると懐かしい気分になる。どうしてなのか。昔からここを知っているような気がする。

「衣装部屋です」

案内された部屋には綺麗な着物がずらりと広げて並べられていた。わたしがライブで着てる着物よりはるかに高そう。中に入ってみて回る。

「一着欲しいなぁ」

「すべてあなた様のものです。いまの貴女さまに合うようにサイズも直しました」

「まじですか?」

こんなのもらっちゃっていいの?やばいッ!脳汁でちゃう。あとで1人ファッションショーを開催しよう。着物のほかに羽衣が干してあった。

「これは何?」

「天女の羽衣です。受肉している状態では飛べないので使用します」

「受肉とは?」

「自然界のエネルギーを少し借りて霊体を肉付けしている状態です。手を合わせて受肉と唱えれば受肉できます。霊体だと神の姿は人間には見えません」

「なるほどね」

「庭に金斗雲きんとうんもございます」

「えっ!すごーいッ!乗ってみたいッ!」

「どうぞご自由にお試しください。しかし、先に屋敷の案内をすませてからでいいでしょうか?」

「いーよ」

金斗雲に乗れるなんてすごく楽しみだ。孫悟空の気分が味わえる。

「如意棒もある?」

「ございません。けれど斉天大聖さまとは仲がよろしいので頼めばお借りになれるでしょう」

「仲良かったっけ?」

ぜんぜん知らない。わたしって孫悟空とおともだちなの?疑問はつきない。

「天女の羽衣あるのに金斗雲まであるのはなーぜなーぜ?」

「自転車と自動車みたいなものです」

「へ〜っ、スピードがぜんぜんちがうんだ」

「羽衣も金斗雲も振り落とされても自動で拾い上げてくれるので安心ですよ。オシャレのために羽衣をまとって金斗雲に乗る神さまもおられます」

「いいね♩」

次に楽器部屋に案内された。

琴や三味線、琵琶、胡弓こきゅうが置いてある。どれも高級品っぽい。

「これもぜんぶわたしの?」

「左様でございます」

「あとで弾いてみよ♩」

つづいて裏庭の神社に案内された。善財童子くんは鈴緒を握る。

「ここから運気を流し込めば弁財天さまをまつる各地の神社に届きます」

「そういう仕組みなんだッ!?」

「鈴緒はへその緒となっており母胎から赤ん坊に繋がっているように高天原の本宮とつながっているのです」

「だからお参りする人にご利益があるんだね」

わたしは神社の仕組みに感心する。同時に疑問が思い浮かぶ。

「わたしが弁財天ならわたしがいないと運気が流し込めなかったのでは?」

「恐れながら弁財天さまの眷属けんぞくである我々16童子が代わりにお勤めを果たして参りました。しかし弁財天さまほど運気を持ち合わせていないので総出です」

「それは苦労かけたね。すまぬ」

弁財天の自覚はないけど謝っておく。

「お気になさらずに。我々は弁財天さまの大ファンなのです。スターの世話を焼くのが至高の幸せなのでございます」

「なんとなくわかる気がする」

わたしも大好きなアイドルの世話なら焼きたいし、ずっとそばにいたい。

そのまま本殿に案内される。御霊舎みたまやのほかにうさぎの刺繍の施された赤い座布団がポツンと置いてある。

「弁財天さまは神座にお座りになって地上で参拝する民の願い聞いておりました」

「ぜんぶ叶えてあげるの?」

「日頃の行いが良いものには弁財天さまが流した運気が行き届き願いは叶うでしょう」

「弁財天さまは使った運気どうやって回復してたの?」

「高天原の神々はお祭りが大好きなのでよくフェスを開催してましたよ。それと七福神は新年会、忘年会、結婚式にもよく呼ばれて余興で演奏していました」

「どんちゃん騒ぎにはかならずいる感じだよね」

わたしが地上にいる時、前も民の願いを聞いてたような気がしたり、豪邸や豪華絢爛で華やかな世界が懐かしくて落ち着くのって本当に弁財天だったからかも。

民の願いを聞く本殿も自宅に作った瞑想部屋に似てるし。

ひと通り案内されて最後は大広間にたどり着く。畳の敷き詰められた広い部屋に15人の子供たちが左右に並んで座っている。端っこの席と中央の上座は空いていた。善財童子くんが末席に座ったから、わたしは仕方なく上座に座る。ふかふかの紫色の座布団だ。これもまたうさぎ柄だった。

この屋敷に主人はうさぎ好きなんだな。神社の像もあった。わたしと一緒だ。

1番気になっていた質問をみんなにぶつける。

「わたしが弁財天だとして、なんで神なのに人になってるの?」

沈黙のとばりが降りる。あれ?タブーだった?

左手のふすまが力強く開く。

「その質問にはわらわが答えようッ!」

輝く黄金のオーラをまとった美しい女性が登場した。巫女姿に勾玉の連なった首飾りをしている。頭には太陽を模した金色の飾りをつけていた。

「あなたはだれですか?」

「天照大御神である」

天照さんは両手を腰にあててえっへん!といばる。子供たちはみんな平伏している。天照大御神って聞いたことがある。太陽の神様だ。高天原で1番偉い神様だったような・・・

「はじめまして。山田幸子です。よろしくお願い致します」

わたしも平伏した。機嫌を損ねると太陽の熱で焼かれるかもしれない。礼儀正しく接しよう。

「くるしゅうない。みなのものおもてをあげい」

わたしたちは顔をあげる。

「眷属には答えづらい質問じゃろうからな。わしが代わって答えてやるぞ。心して聞くが良い弁財天。そなたは大罪を犯した罰として不幸な人間の少女に生まれ変わったのじゃッ!」

ガーンッ!って感じでもない。弁財天の自覚もないし、前世はまったく記憶にないんだよね。

「具体的にはどんな大罪ですか?」

「11年前地上で天災を起こし10万人の命を奪った」

「えっ?あれってわたしのせいですか?」

わたしが募金やチャリティコンサートや炊き出しに励んでるやつじゃん。荒廃した過去の映像見るたんびになんかすごい心が傷んだけど、自分がやったから?

「そなたとそなたの夫の五頭龍のせいじゃ」

「夫?」

わたしって結婚してたんだ。相手は龍?神話みたいな話だな。

「いまからすべて語ってやろう。長くなるぞ」

天照さまのために子供たちは座布団やお茶や茶菓子を用意する。準備が整いわたしは近い距離で天照さまと向き合った。子供たちはわたしと天照さまを取り囲み背筋を正して座っている。

「あれは11年前・・・」

天照さまは暗黒の神話を語りはじめた。




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