運気支配
不思議な力とは目を凝らすとオーラが見えるようになったのだ。
わたしのオーラは波打って力強い水色をしている。芸能人も力強くて濁りのない色をしている。
一般人のオーラは凪いだ薄色だ。弱々しくて濁った色をしている人もいる。おそらくこれは運気だ。
運が強い人ほど力強くてはっきりと色が見えて濁りがない。イナバちゃんいわく善行を積み重ねたから魂のレベルが上がって霊感が身についたらしい。この力は何かに使えるのかな?
占いとかいいかも。あなたはいま運がいいです、運気が下がってますって教えられるね。
クラスの子に教えてあげようかな。
学校に行くとクラスメイトの男の子の顔がこげ茶色で見えなくてびっくりした。オーラも力弱い黒色で不吉だ。
「きみ死相でてるよ?」
「まじで?」
「かわいそうだからわたしの運をわけてあげる」
「ありがてえッ!」
男の子は手を合わせて拝んでくる。できるかわかんないけど、やってみる。手をかざして運気放出ッ!って念じた。するとわたしの手から運気が伸びて男の子にオーラにくっついた。男の子のオーラはみるみるきれいな赤色にになって死相も消えた。
「これでもうだいじょうぶだよ」
「なんか力が湧いてきたッ!最近、運が悪いし調子悪かったんだよな。弁天ちゃんは命の恩人だッ!一生応援するッ!」
「ありがとう。よろしくね」
わたしは天使の微笑みを浮かべる。日課である徳も積んだし熱心な信者も増やしたし一石二鳥だ。話を聞いていたクラスメイトたちに取り囲まれる。
「あたしにも運をわけてッ!恋愛運をアップしたいのッ!」
「ボクにもッ!中学受験を控えてるんだッ!」
「オレは金運が欲しいッ!大金持ちになって一生遊んで暮らしてえッ!」
みんな運が良くなりたくて必死だ。わたしは断る。
「きみたちは別に死ぬほど運が悪いわけじゃないからあげない。あげすぎるとわたしの運がなくなるもん。他力本願時はダメだよ。死相出てたらわけてあげるから安心して」
「けちぃ」
不満を言う子もいたからさとす。
「あのね、人や社会に対して最小限の働きしかしてないのに最大限受け取ろうとする行為を傲慢って言うんだよ?きみは謙虚になったほうがいい。天の神様は全部見てるからパフォーマンスに見合わない報酬を手に入れても帳尻合わせは絶対に起きる。楽して得た報酬はすぐになくなっちゃうしそのぶんあとから苦労させられるよ。良いことした分だけ良いことが起きるもんなの。そういう法則で世の中はできてるんだよ」
「わかった。オレが間違ってた。ごめん愛してる」
「さすが弁天ちゃん。頭いい」
「頭は良くないよ。勉強は苦手。運の勉強したから運がいいだけ」
「義務教育には運の授業が必要だね」
「道徳の授業がそれにあたるんじゃない?人の苦しみを取り除いて喜ばせればそのぶん報酬が手に入る。たくさんの人の苦しみを取り除いて喜ばせれば大金持ちになれる。徳を積めば金運が良くなるってことさ」
「弁天ちゃんは運のスペシャリストだね。ホンモノの弁財天様みたい」
「もしかして神様?」
「人間だよ。天孫降臨してない」
最近、わたしのまわりはいつも騒がしい。孤立していた時期が嘘みたいだ。いまや神様みたいに崇められてる。運気を見る力と運気放出の力を手にしたわたしは運が吸収できるのかどうかも試したくなった。試すなら運がいい人がいい。運が悪い人から運を吸っちゃうと死んじゃうからね。貧血の人から血をもらうようなもんだ。わたしは歌番組に出演した時にトップアイドルにそっと近づいた。
ピンク色の力強いオーラだ。わたしは運気吸収ッ!と念じて手をかざす。アイドルのオーラがわたしの手に吸い込まれてくる。できたッ!
「弁天ちゃんどうしたの?」
「なんでもない。今日も可愛いね。近くで見たかっただけ」
「ありがとう♩いっぱい見ていいよ」
アイドルは上機嫌になる。ファッションとメイクの話に花を咲かせながらわたしはそっと運を返しておいた。
帰宅して瞑想部屋にこもる。運気放出と運気吸収の力。これがあれば世界を支配できるのではなかろうか?ギャンブルで絶対に勝てる。運がなくなれば周りの人間から吸収すればいい。宝くじも絶対あたる。圧倒的な億万長者になれば世界の王様になれる。戦争だって負けない。味方に運をわければ銃弾もミサイルみあたらない。敵の兵器は故障するし敵兵は不運でみんな体調不良だ。
資本主義社会はマネーゲームだからお金を1番持ってる人間が偉いんだ。みんなお金にひれ伏す。札束の上に玉座を置いて座ってる自分を想像する。王冠とマントを身につけている。空から降ってきた札束がひらひら舞っている。玉座の前にイケメンたちがひざまづいていた。わたしは世界の支配者となった姿を妄想して邪悪な笑みをこぼした。すぐ我にかえる。
くだらない。一時の欲望に身を委ねれば破滅が待っているだけ。平和が1番だわ。わたしはうさぎのぬいぐるみを抱き上げて清らかに微笑んだ。




