因幡の白兎
図書室にたどり着いたわたしはさっそく風水コーナーに向かった。運がよくなる本を手に取る。
新品だし紙の質がすごくいいし挿絵がぜんぶカラーだ。お金をかけて作った本だとわかる。表紙はリボンをつけたうさぎちゃんだ。無類のうさぎ好きのわたしのテンションは上がる。作者は金財童子と書いてある。運が良さそうなペンネームだ。
わたしは席に座りさっそく内容を確かめる。
人型のうさぎちゃんが両手を広げて歓迎してくれた。ピンクリボンとオレンジのスカートが可愛い。
「この本を手に取ってくれてありがとウサギっ!あたしは幸運を呼ぶ白うさぎイナバちゃんだよっ!さっそく運がよくなる方法を伝授するねっ!ぜったい実践してねっ!」
ページをめくる。イナバちゃんがほうきを持ってゴミで散らかったを部屋をはいていた。
「おうちのそうじをすると運がよくなるよ♩汚い部屋は悪い運気が溜まりやすいの。清潔な場所には運を呼び込む力があるわ。お金持ちの家は余計なものがなくてスッキリしているよ。貧乏な人のおうちはごちゃごちゃしてる。運は目に見えるの。床が見える面積が金運を表しているから床が見える面積をマックスにしようね。神様は明浄な空間を好むんだよ」
イナバちゃんはきれいになった部屋で両手を広げて深呼吸している。
「窓を開けることで家の中に悪い気が滞るのを防げるの。窓はこまめに開けて空気を入れ替えてね。廊下にものを置くのはNGだよ。家も生き物だから呼吸が苦しくなると健康運が下がるよ」
となりのページに細かい解説も書かれていた。
「そうじをすることで停滞している運気の流れを作り新たな運気が入りやすくなり運気の好循環が生まれます。そうじをする時は窓を開けて悪い運気を外に出しましょう。新しい運気が入ってきて運気の好循環が生まれます」
ページのすみでイナバちゃんがこぶしを振り上げて「ファイトーッ!」って応援してくれる。そういえば、うちはすごく汚い。だから貧乏神が自分の家と間違えて住み着いているのかもしれない。
この本はすごくいい本だから借りて帰ろう。図書委員の子に本を見せて貸出手続きをする。
「あれっ、この本、バーコードないね?図書室の本じゃないから持って帰っていいよ」
「ほんとに?」
「うん。こんな本、仕入れた覚えないし」
すごいラッキーだ。新品の本が自分のものになった。不幸な星の下に生まれたわたしにしては珍しい幸運だった。一生分の運を使い切ってないといいけど。
わたしはいまにも崩れ落ちそうなボロボロの家に帰って部屋のそうじをはじめた。正直、おそうじは苦手なんだよね。でも、命には変えられない。わたしんちはシングルマザーで父はわたしが小さい頃に病気で亡くなった。体の弱い人だった。母も体が弱い人だけどハンバーガーチェーン店で短い時間だけど働いている。わたしの虚弱体質は完全に遺伝だね。
物置みたいな部屋になっていたから余計なものは外に出して家中そうじした。干からびたゴキブリやくもの死体が出てきたし、ホコリのかたまりも大量に出た。わたしも母もそうじをする習慣がないから汚れっぱなしだった。アレルギーで呼吸が苦しかったのは汚れた部屋で過ごしていたからかな。
窓を開けてそうじして床もめいっぱい見えるようにして家中ピカピカにした。なんとなく花びんに野草に花も生けておいた。今は春だから花は河原にいっぱい咲いてる。
ケガ人だし、ひ弱なのですっごい疲れた。わたしは座布団に座りぐったりと壁にもたれかかる。母が帰ってきてびっくりしてた。
「こんなに広かったっけ?窓から光が差し込むなんて引っ越して来て以来だわ。ありがとね。さっちゃん」
棚で窓を塞いでいたからね。風通しも悪かった。外に出した不要なものは明日業者に引き取ってもらうことになる。いっぱい体を動かしたので母が社割で買って来てくれたハンバーガーがとてもおいしい。家をきれいにしたしこれで運レベルは1に上昇したと思う。いままでマイナス100だったはず。貧乏神と疫病神は去ったと思うから、このきれいな状態を維持しよう。
両手を腰にあててきれいになった部屋を眺めた。
呼吸がしやすくなったしゴキブリやクモも姿を消した。
これなら幸運の女神様も住んでくれるだろうか。




