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神推し

天照さまはあごに手を乗せる。

「ただの運が悪い女の子というだけでは罰が軽いから死神と疫病神と貧乏神をセットでつけておいたのじゃ。そなたは何百万回も死んで、そのたびに過去世のカルマを浄化して神の魂に近づき神の力を取り戻して高天原に帰ってくる予定じゃった」

どうりで運が悪かったはずだ。やっぱり死神と疫病神と貧乏神がそろってついてたんだ。最悪の全部乗せだ。

「しかしさすがは弁財天じゃ。たった一度の生まれ変わり、それもわずか11年で全てのカルマを浄化して帰ってくるとはのぉ。あっぱれじゃ」

天照さまはとびっきりの笑顔を浮かべる。

「罪滅ぼしが終わったってことですか?」

「そうじゃ。悪業を上回る善業を行ったからの」

「やったー・・・」

ぜんぜん達成感ないけど両手の拳を胸の前で握りしめて小声で喜ぶ。

「凱旋パレードの準備はできておるぞ」

天照さまは立ち上がりわたしの手をとる。

「凱旋パレード?」

「神輿に乗って手を振っておれば良いだけじゃ。わらわも一緒に乗ってやる」

わたしは手を引っ張られて外に出た。立派で巨大なお神輿がデーンと用意されていた。ハッピをきた人型の鹿たちもいる。

「ささっ、どうぞお上がりください」

わたしは天照さまといっしょにお神輿に乗った。わっしょい♩わっしょい♩というかけ声ととも凱旋パレードがスタートする。高天原を練り歩いた。多くの神々が笑顔で歓迎してくれる。わたしは赤面しながら手を振っていた。

「弁財天さまのおなーりー♩」

時代劇みたいな紹介のされかたしてる。

大きなお屋敷の前でお神輿は止まった。天照さまと一緒に神輿を降りる。ひげもじゃの強そうなおじさんが出てくる。もしかして武神のあのひと?

「ひさしぶりじゃな。弁財天」

「スサノオさんですか?」

「そうじゃ。おぬしら夫婦を縄で縛った男よ」

「その節はご迷惑おかけしました」

「いまのそなたには関係ないことだ。また愉快な音を聴かせておくれ」

「がんばりますッ!」

「さあさあ今夜は宴会じゃ!」

天照さまが肩を組んでくる。お屋敷にはいろんな神さまたちが集まっていた。

わたしはごちそうを堪能した。十六童子たちが楽器を持ってきてくれたので余興で演奏した。

美酒に酔いながら天照さまは語る。

「十六童子と七福神にはそなたを手助けするなと言っておったんじゃ。修行にならんからの。しかし、ちょっぴり手を貸しておったな。まあ見逃してやったわい」

「ありがとうございます」

わたしは近くに座ってる子供に声をかける。顔と名前はさっきみんな覚えた。

「金財童子くん、幸運になる本ありがとね!」

「いえいえとんでもない。弁財天さまの歌にはいつも癒されていたのでボクなりに恩返しがしたかったんです。お役に立てて幸いです」

「今度、シチュー作ってあげる。好きかどうかわからないけど」

「弁財天さまの作ったものならなんでも好物です。しかし、弁財天さまが料理するなど以前からは考えられませんね」

「母子家庭だから料理ぐらいするよ?」

「以前の貴女さまは家事はいっさいせずボクらに任せっぱなしでした。ご成長なされましたね」

「可愛い子には旅をさせよ、じゃな。わはは」

「以前のわたしってどんなでした?」

「ぐうたらで欲望に忠実で色気がすごかったの。老若男女にモテモテじゃった」

「猫みたいですね」

「そうじゃな。塀を歩いている時にオス猫たちがたくさん後ろをついて歩くメス猫のイメージじゃ」

女王様みたいだ。憧れるけどなれそうにない。わたし忠犬ハチ公みたいな人間だし。

「そなたの良心が強いのは、輪廻転生の時にもう2度と同じてつは踏まぬという強い想いを魂に刻んでおったからじゃろうな」

「だとしたら前世のわたしに感謝したいです」

手を合わせる。誘惑はいっぱいあったけどぜんぶ断れた。あの危険信号は魂から発せられたものだったのか。

「そうそう、五頭龍に会いにやってやれ。弁財天の生まれ変わりをずっと探しておる」

「わたしの前世の夫ですか?」

「そうじゃ」

「以前のわたしとぜんぜん違うからがっかりするかもしれません」

「どうなるか楽しみじゃ」

天照さまはカカカッと笑う。

どんちゃん騒ぎは深夜まで続いた。わたしはこっそり途中で抜け出して地上に戻った。地上ではわたしが行方不明になって大騒ぎしていた。今度から高天原に行く時は手紙を残していこう。

無事であることをsnsでアピールしてから寝た。翌朝、霊体に変身したわたしは羽衣をまとい金斗運に飛び乗り江ノ島に向かった。高天原でゲットした着物でちゃんとおしゃれもしてある。

わたしを探して全国の空をうろうろしていて寝床は江ノ島周辺って聞いている。

浜辺に降りて海に向かって叫ぶ。

「五頭龍く〜ん!」

背後から返事は返ってきた。

「なんのようだ?小娘」

「わっ!」

振り返るとツンツンとした髪型の美少年が立っていた。

「天照さまに聞きました。わたしにずっと会いたかったんですよね?」

「俺がきみに会いたい?」

「いちおう弁財天の生まれ変わりなんですけど?」

五頭龍くんはわたしをまじまじと見つめると、驚いたように目を見開く。

「おおっ!間違いないッ!弁財天だッ!」

ガシッと肩をつかまれた。

「似てますか?」

「いやぜんぜん似てないッ!だが、弁財天の匂いがするッ!」

「匂い?」

「魂の匂いだッ!」

「魂って匂うのかな?」

「匂う!弁財天はスズランのようないい匂いだッ!」

スズランは石鹸みたいなくクリーンな香りだ。なら褒め言葉だね。

五頭龍くんはわたしをぎゅっと抱きしめた。

「これからはずっとそばにいる。今度こそどんな敵からもきみを守る。再び夫婦になろう」

「いやいやわたしまだ小学生だから結婚はムリだよ?法律的に」

わたしは赤面して答えた。力が強くて離れられない。さすが龍神だ。

「神の世界に人間の法律など関係ない」

「天照さまに聞いてみないとダメだよ」

「よし!天照に会いに行くぞッ!」

五頭龍くんは龍の姿に変身するとわたしを乗せて高天原まで飛んでいった。龍の背中に乗るってこんな気分なんだ。潮風がとても気持ちいい。天照さまは「OKじゃ」と言ったので即日、神前式の祝言を挙げた。場所はわたしのお屋敷で裏庭に神社もあるからちょうど良かった。

たくさんの神様が祝いに訪れたよ。

神様はお祭りやお祝い事が大好きみたいで参加率が高い。陽気で楽しい雰囲気が好きなんだね。

それにしてもこれでよかったのかなぁ。つい流れで結婚しちゃった。

「なんぞ文句があるのか?五頭龍はそなたを神推しじゃが?」

天照さまは不安な顔をしているわたしを見て首を傾げる。かっこいいし強いしスタイルいいしわたしにベタ惚れっぽいから悪くないんだけど、いきなり夫婦になるのは急展開すぎる。けど、昔は結婚式の日にはじめて顔合わせってことも多かったみたいだからマシなのかな。

「文句ないです。わたしも五頭龍くんを神推しです」

わたしは指でハートを作ってみせる。その後、わたしは地上と神界を行き来しながら生活した。運のない人間に運をわけあたえたり、運が良くなるように導いてあげた。

五頭龍くんはボディーガードみたいにいまもずっとそばにいる。わたしのこと好きすぎる!

わたしの物語はこれにておしまい♩べべーん♩


エピローグ


星降る夜の江ノ島上空に羽衣をまとい金斗運に乗りギターをかき鳴らす弁財天の姿があった。

5つの首を持つ龍は弁財天の演奏するギターに合わせて体を揺らしている。

弁財天は五頭龍の頼みではじめて出会った時の再現をさせられていた。

あの頃よりさらに円熟された音色に五頭龍は一晩中酔い知れる。

天女と龍を満月が見つめていた。













ああ女神さまっが大好きです。藤島康介先生はテイルズシリーズのキャラデザもされていてすごく魅力的な絵を描きますよね。タイトルを寄せたから内容をああ女神さまっに寄せたかったけど、ぜんぜん寄らなかったな。弁財天の顔はスクルドっぽいイメージです。

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