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贄月と桜の契り~稀血の彼女は神使の旦那に溺愛される~  作者: 嘉神かろ


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第9話 桜に触れて

 兎も角、神術そのものを使えるようにならなければどうにもならない。攻撃用の術に関しては後で交渉することにして、美乃梨は意識を切り替える。


「それで、最初は何をしたらいいの?」

「人間の美乃梨(みのり)の場合は、まず神力(しんりよく)を感じ取れるようになる所からだな。手を」


 桜真(おうま)は美乃梨の差し出した左手をとり、両手で包み込む。こうして触れ合うのは、堕霊(だりよう)から助けてもらったときに続いて二度目だ。


「今から美乃梨の神力に私の神力をぶつける。その際の感覚を覚えるのだ」


 美乃梨は桜真の手をじっと見つめる。色の白い綺麗な手だ。けれど美乃梨のものよりもずっと大きくて、力強い、男の手だった。そうやって見ているとなんだか気恥ずかしい気がして、美乃梨は目を逸らす。


 ――あ、羽毛……。

 桜真の狩衣の袖から白い羽毛が覗いているのが美乃梨の目に映った。飾り羽程度のあまり目立たないものだ。桜真の本来の姿に、猛禽類のような大きな鳥の翼があったのを思い出した。


 ――どこかに猫みたいな部分もあるのかな……。

 狼な部分は木面がそうであるし、尻尾になっていた蛇の鱗も、人型の首元にある。瞳の色はいつでも同じ、美しく赤の濃い桜色だ。美乃梨があと見つけていないのは、獣の姿で下半身になっていた猫の部分だけだった。

 ――目、は猫ではない。細身なのは猫っぽいといえば猫っぽいけど、どうなんだろう。狩衣の上からじゃよく分からない……。


 美乃梨は、いっそ本人に頼んで見せてもらおうか、と考える。よほど見せづらい部分でもなければ、彼は見せてくれるだろうから。


「どうだ、何か感じられたか?」


 不意に聞こえた声に、美乃梨はハッとする。続けて顔が熱くなるのを感じた。

 ――私、何考えてるの! 集中しないと!


 美乃梨は不思議そうに覗き込んでくる桜真へ勢いよく顔を向け、視線を合わせる。握られている手まで熱くなってきたが、気が付かないふりをした。


「も、もう一回お願い!」


 この熱は桜真にも伝わっているのだろうか、と考えると、美乃梨は一層恥ずかしくなる。

 彼は美乃梨の反応の意味が分かっているのか、いないのか。一つ頷いてまた自分の神力を美乃梨の中の神力にぶつける。羞恥を忘れられるよう集中した甲斐もあって、今度はその感覚を捉えられた。それは体内で二つの熱がぶつかり合うような、不思議な感覚だった。


「うん、なんとなく、分かった」

「ならば、次はそれの輪郭を意識すると良い。私の神力とぶつかる部分を起点にして、認識できる範囲を広げていくのだ」


 美乃梨は頷いて、目を瞑る。いっそう集中するためだ。そうする内に顔の熱も引いたが、意識する余裕はない。


「身体の形に沿ってる、のかな。あと、鳩尾(みぞおち)の辺りが濃い気がする。不思議な感じ……」

「初めからそこまで認識できたのなら優秀だ。手を放すぞ」


 美乃梨の左手から桜真の熱が消える。人の体温に比べれば冷たいくらいのそれが、なんだか名残惜しい気がして、口から声が漏れそうになった。


「自分の神力を認識できたのなら、近くの別の神力も捉えられよう。私の神力を探ってみると良い」


 目を瞑ったまま、美乃梨は桜真を探し求める。彼女自身の神力の輪郭を起点にして、徐々に外側へ意識を向けていくと、すぐ目の前、手の届きそうな距離に別の熱があるのが分かった。それはとてつもなく大きくて、力強くて、そして優しく、儚いもののような気がした。


「本当に優秀だな、君は」

「そう、なの?」


 美乃梨が目を開くと、桜真が狼の木面に笑みを作っているのが見えた。言葉に反して、驚いている様子はあまり見受けられない。


「ああ。手の届く距離とは言え、本来ならもう少し練習するものなのだが」


 そう言われても、美乃梨には実感がわかない。比べる対象が桜真しかおらず、その桜真の持つ力に比べれば、美乃梨の神力は小さなものだったからだ。


「慣れれば、神力と神力以外の区別もつくようになろう。私を含め、主様に仕える者は主様にいただいた神力と、本来の自分の力の両方を持っている。良い練習相手になるだろう」


 美乃梨は、それが分かるようになれば桜真が元々どういった存在だったかも分かるんだろうか、と考えて、密かにやる気を募らせる。聞いたら答えてくれるのだろうが、どうせだったら自分で突き止めてみたかった。


 その後、美乃梨は自身の神力を操る練習に移った。身体の内側でぐるぐると動かしてみたり、外側に放出してみたり、桜真の助力を得ながら様々に動かすのだが、これが難しい。無いはずの第三の腕を動かしているようで、彼女の集中力はどんどん削られていった。


「実際に術を使う前に、少し休憩しよう。時間はある」

「うん、ありがとう……」


 桜真が手を一振りすると、足元で木が芽吹き、するすると伸びていく。木は見る見る成長して、二人掛けの椅子のような形をとった。

 美乃梨は桜真の勧めるに従ってその椅子に腰を下ろす。余裕は十分にあったので、少し間を空けて座った。



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