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『カワウソのプレスマンと狐のしっぽ』

作者: 成城速記部

 あるとき、狐とカワウソが道で行き会った。狐が、これからカワウソどんのところに行くところだったと言うと、カワウソが、何か用だったかと尋ねたので、秋は食べ物がおいしいから、ごちそうをつくったので、これからカワウソどんをうちに誘おうと思っていたんだと答えると、きょうは用があって行かれない、とカワウソが答えたので、それじゃ、都合のいいときに呼んでくれたまえ、しかし、次のときは君がごちそうを用意してくれたまえ、といって別れた。

 カワウソがごちそうを用意して狐を誘いに行ったとき、狐はもう出かける準備をしていた。カワウソが、どこかに出かけるのかと尋ねたら、狐は、君がごちそうを用意してくれたのではないかと思って、いつ呼びに来てもいいように準備していたのだ、と答えた。カワウソは、用意のいいことだと感心し、ごちそうをふるまってもてなした。

 ところが、次は狐の番のはずなのに、何日待っても呼びに来ない。カワウソはしびれを切らして、狐を訪ねると、ずっと上を向いたまま、話しかけても答えもしない。カワウソが怒ってどなりつけると、狐は、上を向いたまま、大変申しわけない、天の神様から空守り役を仰せつかってしまったので、きょうはとてもおもてなしができない、また今度にしてくれろ、と言うので、カワウソは、天の神様の仰せつけなら仕方ないと思って、その日は帰った。また何日も、狐から何の連絡もないので、カワウソが、また、狐を訪ねると、今度は、ずっと下を向いて何も言わない。カワウソが、狐が何を言うか予想したとおり、狐は、大地の神様から地守り役を仰せつかってしまったので、きょうはとても以下同文。カワウソは、狐の魂胆がわかったので、狐のことは考えないように暮らしていた。そうこうしているうちに、すっかり冬になってしまったが、そういうところへ狐がやってきて、今度こそカワウソどんをもてなしたいので、魚の釣り方を教えてほしいと頼むので、カワウソは、どうせ口だけのことだろうと思って、湖に連れていって、氷に穴を開け、狐どんの立派なしっぽを穴に垂れておけば、魚のほうから食いついてくる、とうそを教え、自分では、プレスマンを竿にして、ワカサギを何匹か釣ったところで、君は大物を釣りたまえ、僕は先に上がらせてもらうよ、と言って、帰って寝てしまった。

 狐は、夜になって、穴に氷が張り直すのを、しっぽに魚が食いついたのと勘違いし、しかも、どんどん締めつけられてくるので、どんどん魚が食いついてきているのだと思い、寒さに耐えてじっと我慢していた。狐のしっぽが最も締めつけられ、その締めつけがわずかゆるんだとき、狐はようやくしっぽを思い切り持ち上げた。

 残念ながら、魚を釣り上げることはできなかった。かわりに、狐のしっぽは、ちぎれてしまい、しかも、夜が明けていたので、痛みに苦しんでいるところを、漁師に見つかって、自分がごちそうになってしまった。



教訓:有名な因果応報話であるが、狐がいつも悪者なのが気の毒である。

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