001 過去と未来
初作品です!よろしくお願いします!
あちらこちらで上がる黒煙
血の匂いと焦げた匂いが混じっており、普通の人間は気を張っていても正気を保つのは難しいだろう。
歩みを進める道端には見るも無残な状態になった人間が転がっている。
その中には鎧を付けた者、庶民のような布の薄い服を身に着けた者、見覚えのある戦闘服を身に着けた者…
もちろん、皆もうこの世にはいない。
誰のものなのかもわからない頬についた血を拭い、砂煙が舞う前方に目線を向けると人影が映る。
その人影は誰なのか認識はできないが、こちらに向かって走ってくる。
その姿勢は崩れており、気合と憎しみ、忠誠の気持ちだけで突き動かされているようだ。
私は腰から剣を抜き、走ってくる者の一番弱いところ…首を狙って剣を振る。
雄叫びをあげながら向かってきた青年の声が聞こえなくなる。
その場には短く苦しむ声と血が噴き出す音だけが残った。
また1人、道端の人間が増える。
もう何も感じない、否、最初から何も感じていないのかもしれない。
何の感情に突き動かされているのか、何の感情が私を支配しているのか。
青年を道端に避け、私は歩を進める。
「…ネ、ルイネ…!」
左側から声を掛けられ、振り返るとよく知った顔
その顔は、服装は、身体は血や煤で汚れている。
彼は道端に転がる人間にはならない、そう確信していたがたくさんの者を相手にしてきたのだろう
「ハリソン先輩…」
「きっと君は生き残っていると思っていたよ。」
安堵の声を漏らす先輩だが、表情は緊迫の色が濃く残っている。
きっと状況はあまりよくないのだろう。
私は物陰に隠れ、ハリソン先輩に問をぶつける。
「…状況は。」
私の言葉を聞くなり困ったような表情で地面に視線を落とす。
その表情だけで全てを察してしまうほど私は物分かりのいい人間…
いや、ハリソン先輩を知りすぎてしまったのだろう。
「…私、行ってきます。」
「いいのか…?ルイネはもっと自分のために行動した方が…」
最終作戦に移るしかない、そう理解した私は物陰から立ち上がった。
ハリソン先輩は焦ったように私を引き留める。
『自分のために行動』?
何を言ってるんだ。私はこれを望んでいる、私はここで勝って…
「私の愛している人はただ一人…母親だけなのです。」
ハリソン先輩の顔をしっかりと見て告げたのは先輩に伝えたかっただけじゃない。
自分に言い聞かせたかったからなのかもしれない。
私の守るべきものはたった1つであるのだと。
その言葉を聞いた先輩は酷く顔を歪めていた。
☆
目的の場所へ静かに歩を進めていると聞き馴染みのある声が聞こえる。
声のする方へゆっくりと近づくと声の主は私がこの時間、ここへ来ることを知っていたかのような様子で振り返った。
私を見る目はとても穏やかで、でも情熱も含んだそんな美しい瞳
でもその瞳の色は普段よりも混ざっている色が多い。
「エルフィ、僕は君がここに来ると思っていたよ。」
「貴方には何でもばれてしまうのね。」
「いや…わからないことだらけだ。」
私の言葉を聞くと悲しそうに顔を歪める。
そんな顔をしないで、
私と貴方では何もかも違う。
出身地も身分も立場も…
「愛していましたわ…貴方…」
腰につけていたリボルバーを抜き、素早い手つきで装填した私は引き金を引いた。
自分自身にブレーキがかかる前に、自分自身が過ちに気づく前に、彼が考えてしまう前に…