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Hが消えた  作者: 大崎真
4/5

4、朝礼

 翌日。

いつものように騒がしい教室に入ると、俺は博を捜した。まだ姿が見えないので、登校してきていないようだ。

俺はリュックを下ろして机に置くと、椅子に座って、念のために机の中を探ってみた。

体が硬直した。


ゲームソフトが――あった。


確かに、博から受け取った、置き忘れたままのソフトだ。

責任感が人一倍強い博が、あれから途中で嫌になって引き返したとは考えにくい。

なぜだ。どういう事だ。


不審に思っていると、朝のホームルームを告げるチャイムが鳴った。

生徒が次々に席に着いたが、博の席だけはいつまでも空白のままだった。

俺は嫌な予感がした。普段ならば、ただの風邪で休んでいると想像するところだが、なぜか今の俺にはそうは思えなかった。


ほどなく、担任の椎名しいな先生が入ってきた。

椎名先生は三十代半ばの男の先生で、優しくておもしろく、他のクラスの生徒が羨ましがるほどの人気がある。いつも笑顔が絶えない穏やかな先生だが、なぜか今は僅かに青ざめていた。

不思議に思ったが、しかしその理由もすぐに納得できるものとなった。


「みんな、今から先生が言うことを、落ち着いて訊いてほしい」


 挨拶もそこそこに、先生は何かを確かめるかのように、一度博の席に視線を向けてから俺たちに言った。


「なになにーっ?」


 いつも騒いでいるやんちゃな曽根崎が、必要以上に声を張り上げる。

先生は視線を向けて黙らせると、もう一度、教室中の俺たちをゆっくりと見渡しながら言った。

その顔と声は、俺が今までの人生で感じ取ったことのないほどの深い悲しみを湛えていた。


「今朝……山岸君のご両親から、山岸君がいなくなったという連絡がありました。今、警察の人たちが一生懸命捜しています。もし心当たりのある人は、どんな些細なことでもいいので、すぐに先生に連絡してください――」

読んでくださって、ありがとうございました。

次回に続きます。


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