4〈岸優香の場合〉
何故?
貴方が言ったのよ。君さえいれば、他に何もいらないって。
私、すごく嬉しかった。そんなこと言ってくれる人、初めてだったから。なのにパパもママも全然分かってくれない。
『あんな奴を信用するな。お前は騙されている。優佳の為を思って言っているんだ』
みんなそう言って、私達の邪魔をする。誰もそんなこと頼んでいないのに。私だって考えているのに、皆が私の結論を否定する。
そんなわけがない、お前は間違っているって。陽太君のことをペテン師呼ばわりする。
だから、ね?証明しましょう! 貴方は詐欺師なんかじゃないって。お金目当ての悪党なんかじゃないんだって!
簡単よ、一緒に逃げるの。ずっと遠くに、私達二人だけで。お金なんてなくても……ううん、私達を繋ぐ愛さえあれば、それ以外の何も、私達には必要なかったんだって、あの人達に教えてあげましょう!
大丈夫、私と貴方は運命の糸で繋がっているのでしょう?
それはとても強固で、どんな障害の前にも千切れないんだって! 本当に素敵! ならきっと、私達は同じ所へ行けるわ。
もしそうじゃなくても、私が糸を手繰り寄せて、貴方の所まで行ってあげる。
あぁでも、地獄に堕ちるのは簡単そうだけど、天国へ這い上がるのは難しいかしら。じゃあ、その時は貴方がこっちへ来て。私の所へ逢いに来て!
なんで?
なんて首を横に振るの?
なんでそんな目で私を見るの?
ほら、行きましょう。誰の邪魔も入らないところで、ずっと一緒にいましょうよ。貴方だってその方がいいんでしょう? 言ったじゃない、『一緒にどこまでも逃げよう』って。
ねぇ。
ねぇ。