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チョコレート

作者: 顎歌
掲載日:2022/11/02

いや、分かってたし

期待とかしてなかったし

別に貰ったとしても要らないし

そうだよ、お菓子協会が勝手に決めた日だし

何を皆、浮かれてんだよ。


恋だの愛だのチョコレートぐらいで騒いでんじゃねぇよ。


だから、たまたまだよ。


たまたま俺は今、チョコレートが食いたくなってコンビニ寄っただけだよ。


あー、チョコ食いてぇ。


……はぁ


とっととチョコ買って帰ってアニメ見よ。


「あれ?そこにいるの○○じゃん。」


身体が本能的に飛び上がった。


俺は、基本的に異性から話しかけられないから


その声には、いつも爆弾が爆発したようなストレートで殴られたような衝撃をくらう。


「めっちゃビビるやん。」


はっはっぁーと笑う声の主は、クラスの人気者の彼女。


普段からこんな感じで僕にちょくちょく衝撃を与えてくる彼女は、僕だけでなく皆にもこんな感じなのだ。


さすが、真の光を放つ者は違う。と

僕は密かに彼女のことを尊敬していた。


あと、期待も無いといったら嘘になる。


「え、えっ、と○○さん、何でこ、こに?」


だが、それとこれとは別だ。

俺は、異性と話せない。

頭が真っ白になる。仕方ない。


目を見るなんて、死に等しいぐらい恥ずかしいことだ。


床に目線を張り付けたまま、何とか返事をする。


「ん、たまたま、そっちは?もしかしてチョコ貰えなかったから買いにきたとか?」


お主、心を読める能力でも持っておるのか。


さすが、真の光属性。


「た、たまたま、だよ。」


ここから恋愛ものだったらチョコ貰えたり親密が深まる流れになるんだろうけど、もちろんそんなことは、あるはずがなく


「へぇそっか、あっ、そろそろ行くわ、んじゃまた明日。」


で終わった。


僕は、独りチョコとお釣の5円を握りしめ帰宅して恋愛アニメの三週目を見直した。


少しチョコがほろ苦く感じるのは

きっと気のせいだろう。



いや、もう過ぎたし

ホントに偶然たまたま二日連続で

チョコ食いたくなっただけだし

別に昨日のこと全く気にしてないよ。

もう期待なんかしているわけも無い。


でも何故か緊張気味にチョコに手を伸ばした時


「おっ、○○。」


なんだろうな。

この心の中の何かが壊れた感じは。


後ろを振り向くと、オタクの同士がいた。


「よっ、なんだ、お前もコンビニ限定のグッズ買いにきたのか?」


さっきまでの暗い気持ちは吹き飛んで

俺は、はっとした。


そういえば、今日から期間限定で好きなアニメのコンビニ限定のグッズが発売されるんだった。


「やべぇ、忘れてた。」


同士は、ケラケラ笑って


「アブねぇ所だったな。」


さすが同士よ。


「感謝する。」


「いいってことよ。それよりグッズじゃないってことは、何でコンビニに?引きこもりオタクのお前が寄り道なんて珍しい。」


そうなのだ、俺は

基本的に外に出たくないんだ。


今回みたいな例外はあるが…


しかしこいつは、オタクなのは確かなのだが

俺とは違い、スポーツマンで彼女もいる。


それなりに忙しい日々なのに

なぜ俺と話すのか、率直に聞いたら


「えっ?楽しいから、それ以外ある?」


とケラケラ笑いやがる。


純白の笑顔。


俺には、ない人を惹き付ける能力だ。


しかも、場数を踏んで得たと言う。

悔しいが、あっぱれだ。


「トイレ我慢できなくて、何も買わないのは気まずいから何か買おうとね。」


「そうか、それよりグッズ買うぞ!!新期楽しみだよなぁ~」


そっと同士にバレないようにチョコを棚から取り、グッズと共に会計を済ました。


その後、オタク談義をしたのち気分上々で帰路についた。


スキップでもしたい気分だったが帰りに彼女に出会うというイベントが起こるかもしれないので止めておいた。


もちろん、無かったがグッズとオタク談義のお陰でチョコは昨日より甘く感じた。




見たいアニメもあるというのに、俺よ。


なぜ、今日もコンビニのチョコレートの棚の前でチョコレートを選んでいるのだ。


もう三日前だぞ。いい加減にしろよ、俺。


今日は、チョコ買わんぞ。


絶対にだ。


飲み物だけを持ち、会計に向かうと俺の前に並ぼうとしていたお婆さんが、財布?みたいな物を落としていた。


パッと見た印象だが、結構年季が入っている。


これは、言った方がいいやつだ。


コミュ障の俺でもいくら知らない人とはいえ、ご老人を見捨てるのは、少し心が痛むのだ。

勇気ふり絞り


「あ、あの、な、何かお、落としましたよ?」


はっと、お婆さんは気付き

あらあら、とそれを拾い上げた。


そして、後ろを振り向いて

優しい匂いがする笑顔で


「ありがとうねぇ~」


と、俺にお礼をいった。


久しぶりに人から感謝されて嬉しかった。


お婆さんも無事会計を済まし、俺もチョコのことなどぶっ飛んで、ルンルンで帰ろうとした時


「ちょっと、さっきの人」


古い木の匂いともお線香の匂いとも違う優しい匂いが俺を満たした。


「は、はい。」


さっきのお婆さんだ。


「さっきは、ありがとねぇ~、これとっても大事な思い出の物だから。これ、お礼ね。」


暖かそうな手から渡されたのは、何とチョコだ。


「いえいえ、いいんです。」


いつも、つっかえる言葉も驚きすぎてスムーズになっている。


「いいから、いいから、若い人は遠慮なんかしちゃダメよ。」


と、やっぱり優しい声に言われ、受け取った。


「あ、ありがとうございます。」


「それじゃぁね。」


少し丸まった背中も暖かい。


こんなふうに年取れたらな。


と、いうことで三日連続のチョコで

俺の人生初、母親以外のチョコを貰った。


チョコは、あの優しさが残っていたのかまろやかな味がした。


泣けなかったアニメを見返したら号泣した。


少し優しくなったってことかな?



今日は、チョコを買いにきたわけではない。

というか、なぜチョコを買っていたのか

もう忘れかけていた。


財布の中は、残り1400円。


650円のくじ券を2枚持ち、いざ勝負。


そう、俺は今、一番くじを引こうとしている。


狙うは、A賞のイラストボードかC賞のアクリルスタンド。


一番下のN賞のタオルで終わってたまるかよ。


直感を信じて、腕を引き抜いた。


ドキドキしながら、くじを開いた。


ありがとうございましたぁ~


自動ドアが開き、冷たい空気が身体を冷やす。


冷たくなり始めた俺の両手には

N賞のタオルとB賞のあまり意識してないキャラのコップ、そして空になった財布が握られている。


なぜだ。B賞が出て、C賞が出ない。


しかも、微妙なキャラのコップと皿。


そして当然のことだと言わんばかりのN賞。


神は、昨日の俺の善意を見ていなかったのだろうか。


……はぁ、帰ってアニメ見よ。


とぼとぼと家の方へ歩き始めた俺の

目の前で突然の爆発音。


「あれ、○○だ。おーい。」


危うく皿とコップ入った箱、落とす所だった。


「ど、ど、ど、うも」


何とかずり落ちた眼鏡をかけ直して地面とにらめっこ。


「あぶな、大丈夫?」


やべぇよ、この三日間、考えてたイベント発生時の選択肢、忘れちまったって。


「は、はい、な、な、んとか」


あれ、雪でも降ってんのかな。

目の前が真っ白だ。









それにしても白すぎだろ。


「あっ、そうだ。これいる?はい。」


白くて細い手が差し出してきたのは

茶色くて甘いあれだ。


爆発音じゃなくて、今度は爆弾直撃だ。


「いやーさっきね、なんか…しょう……ちゅ……ち…て、そ…で………………ってわけ、で良かったらいる?」


なに?なんて?


まぁ、理由なんてどうでも良い。


神よ、僕がハズレくじを引いたのは、このためだったのだろう?


「あ、あ、ありがとうございます。」


A賞なんかじゃない、特等賞だ。


「そんなに喜ぶなんて、ちょっと良いことした気分じゃん。良かった良かった。んじゃっ、明日。」


「は、はいっ!!」


今世紀、最大の声が出たのと同時に

光輝く彼女の笑顔を初めて直視してしまった。


目が焼けた。


特等賞の味は、俺だけの秘密。

読んで下さってありがとうございます。


時期ハズレですが、明日、特等賞を貰えるかもしれないので勘弁して下さい。


寒い時期って人肌が恋しくなります。

色んなアイラブユーの形が2月14日にあると思うと、何だか、わくわくして来ます。


アイラブユーだぜ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 時期は外れだけど、明日はアタリかも、なんですね。 って、あとがきへの感想ですみません。 彼女は、商店街の抽選で粗品としてもらった、とか? そんな言い訳なのかもしれないですけど。 本人が…
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