表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/59

第26話「今から2人で部屋でいいことしないかい?」

「1000体を越えるドラゴン軍団をいとも簡単に全滅させてみせた噂の勇者様を、アタシはまだ見たことがなかったからね。ずっと興味があったのさ。意外と若くてびっくりしたよ」


「あはは、まぁな」

 異世界転移した時に若返らせてもらっただけなので、俺は曖昧に笑って流した。


「できれば今までどこにいたのかとか、どうやって勇者の力を手にしたのかとか。もっと話をしてみたいところだけど、そっちはそっちで技の開発をしないといけないし、アタシも軍議だなんだとちょっと忙しくてね。残念だけどまたの機会にするとしよう」


「ごめん、俺の過去はちょっと内緒なんだ」


 派遣女神にいきなり異世界転移させられたとか言っても信じてもらえないだろう。

 いや天才軍師のメイリンなら納得するかも?

 なんてことを思っていると、


「ふふっ、アタシは強い男が好きなんだけど、秘密のある男も好きなんだよね」

 メイリンが妖艶に微笑んだかと思うと、俺の身体にピタッとくっついてきた。


「め、メイリン!?」


「今から2人で部屋でいいことしないかい?」


 俺の耳元で息を吹きかけるように呟きながら、メイリンが胸をグイグイと押し付けてくる。


「お、俺にはリュスターナが……」


「アタシはばらさないから、君が黙っていればバレはしないよ?」

 メイリンが俺の首元にキスをした。


「え、えっと……」

 ご、ごくり……。


「どうだい? アタシは胸も大きいしスタイルもいい。ね、悪くない話じゃないだろ?」


 このままメイリンとえっちしちゃってもいいかなと、俺の弱い心はほんの一瞬思いかけたんだけど。

 だけど俺の脳裏にはすぐにリュスターナの笑顔が浮かび上がってきたのだ。


 リュスターナを悲しませるようなことはしたくない。

 そう思ってしまったのだ。


「ごめん、メイリン。俺はリュスターナのことが好きだから、メイリンとはそういうことはできない」


「バレやしないよ」


「バレないとかそういう問題じゃないんだ。これは俺の心の問題だから。俺はリュスターナを裏切りたくない」


 俺はメイリンの身体を引き離すと、その目をしっかりと見て言った。


 メイリンはとても魅力的な女性だ。

 えっちしたいかと聞かれたらそりゃもちろんしたいに決まっている。


 だけどそれでもやっぱり俺はリュスターナが一番だった。

 リュスターナを悲しませるようなことは絶対にしたくない。


「……うん、合格だね」

 と、突然メイリンがにっこりと笑った。


「合格……って、まさか俺を試したのか!?」


「いやね? リュスターナを泣かせるようなチャラ男だったら、いくら勇者と言えども容赦はしないと思ってちょっとカマをかけてみたのさ」


「まったく、そういうことかよ……」

「いやはや、女なら誰でもいい下半身のゆるいチャラい男じゃなくて良かったよ」


「はいはい、俺はどうせモテない冴えない魅力ないの3ない男ですよ」


 この世界に来てリュスターナと仲良くなるまで、女の子と遊びに言った経験すらなかったですよ。

 うるせーなバーカ!


 その後、もう少しだけ話してから俺はメイリンと別れた。


…………

……


「残念、完璧に振られてしまったようだ。まったく秘密にしておけばいい思いができただろうに、勇者リョーマ=オクムラは相当義理堅いんだねぇ。ああダメだ、考えれば考えるほどより一層好きになってしまいそうだ。罪な男だよ、勇者リョーマ=オクムラは――」


 王宮の廊下で一人佇む天才軍師メイリン=シュトゥットガルトの呟きを聞く者は誰もいはしなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] なろうでは健全じゃないとアウトだから浮気はNGですね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ