第1話 突然の異世界送り 俺「えっ、俺が勇者に?」 駄女神「よろしこ♪」
異世界転移のファンタジーです。
よろしくお願いします。
「突然ですが、あなたには異世界『ユーフェミア』で勇者になってもらいます」
気が付くと謎空間にいた俺――奥村龍馬は、いかにも女神っぽい出で立ちの綺麗な女の人から突然そう告げられてしまい、ただただ困惑していた。
「え? 俺が勇者? っていうかついさっきまで、俺は自分の部屋で録画していた深夜アニメを見ていたはずなんだけど……」
しかし女の人は俺の混乱なんてどこ吹く風で言った。
「私は女神様――から異世界管理の業務委託をされた広告代理店の、下請けの人材派遣会社から9次下請けされた孫請け会社と提携している零細協力会社から派遣された――」
「はぁ……」
なげーよ。
「もう説明が面倒くさいですね。とりま、あなたは女神である私によって勇者に選ばれたので、とっとと異世界『ユーフェミア』に行ってくださいね♪」
「いやちょっと待って? 面倒くさいってなに? 勇者って俺が? っていうかその言い方だと、あなたは別に女神じゃないってことだよな?」
「まぁもういいじゃないですか細かいことは。それに委託を受けているので実質女神ですよ」
ノープロブレムです、と笑顔で言って親指をグッと立てる自称女神さま。
「ちょ、ちょっと!? ぜんぜん細かくないし、さすがに説明を端折りすぎでしょ!?」
サラサラの黒髪ロングで、ギリシャ神話の神様みたいなゆったりとした白い布っぽい衣装を身にまとってはいるけれど。
実は異世界転移の女神でもなんでもなく、次々と業務委託されていった零細企業の一般ピープルってことだろ?
しかも派遣。
「まぁなんです、こういうのは実際にやってみれば何とかなるもんですよ……きっと!」
「うええっ!? 最後に付け加えた一言がめちゃくちゃ不安にさせるんだが!?」
「少なくとも私はそうでしたから。誰も仕事のやり方を教えてくれずに、いきなり現場に放り出されたんです……せめてマニュアルを下さいって言ったら自分で作れって言われて……うちの職場ブラックすぎる、ぐすん……」
ああうん、その気持ちはよく分かるよ。
俺もブラック企業勤めだからぶっちゃけ同意しかない。
だがそれはそれとして。
「いえあの、あなたの勤め先が度を超えたブラック企業な話よりも、今は俺の現状についてより詳細な説明をしてもらいたいんですが――」
「じゃあ言わせてもらいますけど、だいたいあなた!」
「は、はいっ!」
突然ビシィッと指さされた俺は思わず背筋を伸ばして気張った返事をした。
ブラック社畜として長年にわたって身体に刻み込まれた脊髄反射だった。
ブラック会社では即座に元気よく返事をしないとやる気がないと認定されてしまい、給料が下げられてしまうのだ。
さすがブラック企業、返事一つで給料を下げるとかクソみたいなシステムである。
「あなた、このまま日本に残っていても意味ないじゃないですか!」
「ちょ、酷い言われようだな!?」
「だってそうでしょう? ブラックな勤務先に行って帰って、ご飯を食べたらお風呂に入って、夜はアニメ見たりスマホゲーポチポチしたりVtuberの配信動画を適当に見るだけで一日が終わる、ただ生きてるだけの空虚な人生じゃないですか!」
「今初めて会ったばかりの実質見ず知らずの相手から、なんでそこまで言われないといけないんだよ!?」
「空虚な人生」なのは否定しないけれども!
「じゃあそういうことでぇ? 素敵な異世界生活をどうぞ満喫してくださいねー」
「なんでかまとめに入ってるけど、まだろくに説明をしてもらってないからな? あんたのブラック自慢と、俺の人生を激しくディスられただけだからな!? ちょ、ちょっと! なんか俺の身体が薄れ始めてるんだが!?」
「それは異世界転移が始まったからですね。こうなるともう止まりません」
「なに冷静に言ってんだよ! っていうか止まらないってなんだよ!?」
「後は野となれ山となれ、的な?」
「ひでぇ!? もうこれ俺の意思を無視した強制転移じゃないか!?」
「あーはいはい。他にもやらないといけない業務がたくさんあるんで、とっとと納得して異世界に行ってくださいね♪ 私も忙しいんです」
「忙しくても必要な説明はするべきだよな!?」
「あ、勇者としての責務はちゃんと果たしてくださいよ? 分かってると思いますけど、あなたの役目は勇者なんですからね? そこんとこよろしこ♪」
「人の話を聞けよ!? なにが『よろしこ』だこの駄女神! いきなり異世界に転移しろとか言われても、俺どうすればいいんだよ!?」
「大丈夫、なるようになりますから。あ、これ私の実体験に基づくアドバイスですので」
女神――じゃないっぽいけど便宜上は女神ということにしておこう――と名乗る女の人がそう言った瞬間。
俺の意識は急速に遠のき始めた。
そして再び意識を取り戻した時には、俺はどこかも分からない見知らぬ街中に立っていたのだった。
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