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第36話 くじ引き

「んじゃ各代表は前に~」


 俺の呼びかけに机と椅子を並べて簡易な食卓になったグラヴィリオスの甲板中央に五人の人物が進み出る。

 一人目は燐。濡れた服から着替えて今はお気に入りの白ワンピで登場だ。かわいい!

 二人目はオニグマ。今日は赤色の服を着た黄色の熊のぬいぐるみを持っている。ハチミツタベタァイ。

 三人目はマレーナ。昼寝でもしていたのか寝ぐせが目立つ。あくびをするな。

 四人目はカルアが保有する最強(・・)の特典武装。濃い赤色の肌に真っ直ぐに伸びた神々しい角が特徴的な鬼人の幼女。名を“カグラ”。イレギュラー級UBM一閃鬼カグラの幼体(・・)らしい。ぅゎょぅι゛ょっょぃ。

 五人目はティアと全くの同一であり、正反対でもある者。ティアと同じ髪の長さ、目つき、背丈、体つきをした美少女。だが、色だけが違う。2Pカラーのようにティアが黒に対し、少女は白。彼女こそティアの二つ名“無限”たる所以、エッジ&ハイスピリット&イレギュラー型第10形態『渇望聖杯 カリス』。その人化形態だ。いつものように何かイラついた様子でしかめっ面。コワイコワイ。


 俺は出てきた五人の前に穴から五本の棒が飛び出した箱を用意する。

 ギルドでパーティをするときに使うくじ引き用の箱だ。


「じゃ好きなのを選んでくれ」


 言い終わった途端カリス掴む。あまりにも速い動作に風が吹いた。


「何か?」

「……いや、何でも。それより何番だ?」

「当然一番です」


 カリスの言う通り棒の先端には『1』と書かれていた。実は透視でもしていたんじゃないのか。と疑うが、その前にカリスはさっさとティアの元に戻っていった。


 一瞬で終えたカリスにそれぞれが少し固まるが、まずは小さい子からということになり、燐が引く。

 念じるようにぶつぶつ言いながら祈るように一本を引き抜く。

 先端には祈り届かず『5』と書かれていた。


「うぅ、パパぁ。ごめんなさいぃぃ」


 燐が少し涙目になりながら抱き着いてくる。

 きっとやらかしてしまったと思っているのだろう。


 始まる前に絶対に被らない一番だといいなと言ったのは失敗だったか。笑いながら頭を撫でてあげる。


「気にすんな気にすんな。寧ろ最後で一番目立てるから」


 俺はそのまま片手で箱をカグラに回す。


「まったくこのようなことでなくでない。おぬしはほんとうになきむしじゃのう」


 古風な言葉で話す鬼人幼女はやれやれといった風に呆れて棒を引く。

 引いた番号は『4』。最後の一つ手前だ。


「あるじぃぃぃ!! ごめんなさいぃぃ!!」


 カグラもカグラで燐と同じように半泣きになりながらカルアの元に飛び込んでいった。


『( ´。•ω•)ノ"』

NT(ナイストライ)。と、カルア様は仰っております」


 その光景を苦笑交じりに眺めるイナリと伸びをしたマレーナが残りを同時に引く。

 結果はイナリが『3』。マレーナが『2』だった。



◇◆◇◆



 まず一番手。ティアが買ってきたものを取り出す。

 出てきたのは指先よりも小さい一つの皿とその上に乗った何か。


「おいおい。これはおままごとのお夕食じゃねぇぞ?」


 人形遊びの小道具のような皿にマレーナが呆れたように頭をかくが、ティアとカリスがそれを睨む。


「マスターに対して口がなってないな。滅ぼすぞ?」

「焦るなここからだ。雑魚」


 ティアが一度指を弾くと小さくなっていた皿が元の大きさ、パーティ用の巨大な皿に戻る。

 皿の上には十五人前はあろうかというほどの大量のパエリアが乗っていた。

 貝やエビ、イカ。ピーマンとパプリカ、レモンも入って色鮮やかなパエリアだ。ここにギルドのJK組、セラと紗世がいたら間違いなく写真にとってSNSに投稿していただろう。

 そのぐらい豪勢で華やかなパエリアだ。正直普段は石を食っているやつとは思えないチョイスに驚く。


「おぉ」

「おいしそー!」

「これはガチチョイスですね」

「じゅるり」

『(o´ρ`o)』

「お腹減っちゃった。と、カルア様は仰っております」

「うまそうじゃの!」

「ふ、ふーん。まぁやんじゃねぇか」


 各々が反応すると、ティアがまだ終わりじゃないとでも言うように指を振る。


「カルア君が食べるものだからね。ボクは完璧な状態で持ってきた」


 ティアがもう一度指を弾くと、パエリアから急に湯気が昇る。


「温めた!? お前そんな繊細なことができたのか!?」


 ティアは俺と同じような事情で、俺よりも威力コントロールが出来ない魔法使いで有名だ。

 それこそこんなパエリアはちょっと温めようと思っただけでも消し炭にしてしまうぐらいには。

 なのに実際にはいい感じに温まっている。少しも焦げてはいないことに驚いているとティアが否定するように首を振る。


「ボクがそんなことするわけないだろう。少し考えれば分からない? 時間を止めて持ってきたんだよ」

「時間を……」

「止める……」


 衝撃の運搬方法に今度こそ呆れるしかない。

 時間停止なんてアホみたいにMPを使う魔法を保温(・・)なんてことに使う魔女はきっとコイツだけだろう。


 ティアは煽るように次の番、マレーナ&フィーラペアに回した。

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