第33話 最悪の復活
「『許可も貰ったしもう一つの要件にいこう。前は私に付き合ってもらったからね。今回は時間が許す限り君の番だ。好きなことを聞いてくれたまえ』」
そういえばそんな約束をしていたことを思い出す。
とりあえず、天華を追い出すのに必要なことから聞いていくか。
「じゃあまず、恐王テラとはなんだ? お前の肉体をどうしているんだ?」
前に俺がさっさと肉体に帰れと言った時、恐王テラの城にあるから行けないと言っていた。では、テラとは何者だろう。
「『彼は君が倒すべき敵さ。“テラ”というのは仮の名、本来の姿は分霊獣の一体。イレギュラー級UBM、九転粛清クウガ。殺戮と破壊を好む悪そのものだ』」
「クウガだと!? 復活したのか!?」
「『残念なことにしてしまったよ。封印の後遺症も今はない。フルパワーに戻っている』」
「あれが、あんなのが、フルパワー……」
九転粛清クウガ、八大ギルドの総力をもってしても仕留めきれなかったUBM。
あの戦いでアイツの仕組みは掴めているが、それでも最悪という他ないだろう。
「『アレが私と封じた神殺しがいる場所に城を建てているのも、どの陣営にとってもそのどちらかが必要だと知っているから。要するに私の体と神殺しはただの釣り餌。寄ってくる獲物を狩るのを楽しみにしているわけだ。全く本当に厄介なやつだよ。アイツだけは最悪再封印でいい。その分の力が戻ってこなくても、その後はなんとかする』」
天華が深刻な問題に頭を抱える。
だが、実際にそうするしかないだろう。今は前の時と違って一回限りの命。クウガなんかにくれてやる気はない。
「『まぁテラ、クウガの状態はそんなところさ。他に質問はあるかい?』」
思い出すのも嫌なのか天華が次を促してくる。
「なら、残りのイレギュラー級UBMの場所を教えてくれ」
倒せと言われても場所が分からなければ倒しようがない。
「『双環伏魔アルガス・ヴィオラ。これは厄介なことにクウガと共に行動中。でも、基本自由に動いているようだから、クウガから離れたところを狙えれば倒せるはずさ』」
「イレギュラー級が手を組んでいるのか」
ただでさえ厄介な状況が更に困ったものになっているのかと思うと、天華が否定するように首を振る。
「『いや、それは多分違う。アルガスとヴィオラは、クウガの機嫌を損ねてしまうことを恐れているんだ。だから仲間というわけではなく、クウガに利用されているだけだと思う』」
「なるほど」
「『次に三法死別メガロス。あの巨人はとにかく大きいから、適当に探せばそのうち見つかる。問題は五海天蓋レヴィーアさ。あれは雲に擬態しているのか深海の奥底にいるのか。どこにいるのかサッパリ分からない。力が私に返っていないから間違いなく存在はしているんだが、現状不明だ』」
五海天蓋レヴィーア。大衆に目撃されたのは投下時の一度きり。実は誰かにこっそり倒されたのではと噂されていたが、今もまだ存在しているらしい。
コイツを見つけないことには燐を解放できないので、どうにかして見つける手段を考えなければいけないな。
「『質問はまだあるかい? そろそろきつくなってきたけど、寝る前に一つぐらい答えるよ』」
「燐に無理はさせたくないが、最後に一つだけ教えろ。お前の敵、あの機械の軍や機械と結晶が一体化したようなやつらはなんだ? どういった目的で動いている連中だ?」
「『う、おっと危ない……意識が飛びかけた。あーそれで、私の敵だったかな? 私の敵、その種族名を機晶種。世界を壊し、蓄えるもの。私を殺したデウスエクスマキナを頂点にした種族さ。目的は知らないけど、世界を食い荒らす害虫のようなものと考えていい。滅ぼす以外に手はない。――そ、れじゃ、おや、すみ』」
前回より短い時間で天華が眠り、燐がベッドに倒れることで空間が戻る。
プレッシャーから解放されて緊張が解けると、自然と一度ため息が漏れた。
『あれが管理者ですか』
すぐにフィーラが話しかけてくる。
「会ったことはあるんだろう?」
『ありますが、私の時はあれほど楽しそうではありませんでした。好意を持たれているようで良かったですね』
フィーラが何故か怒り気味だ。様子は変わらないが、声のトーンがちょっと低い。
「なんでお前が怒る? それに別に好意は持たれていないだろ。利用されているし」
どうして好意があると思ったのか、まるで分らない。感情を読み取る回路がバグっているのだろうか。ロストシヴァでは入念なメンテをしてもらおう。
「それより俺とは別の理由ってのは何だったんだ?」
『別に、マスターは知る必要がありませんし、気にしなくていいです』
怒ったフィーラに答えを濁された。
今は聞いても教えてくれないだろうと思ったので、追及はやめて先のことを考える。
クウガ復活。月日が経って封印が弱まったせいなのか、最悪のバッドニュースだ。
フルパワーに戻っているならウチのギルドだけでは戦力が足りない。
倒すにしても、封印するにしても、かつてのように他ギルドとの協力が必須になりそうだ。
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