第28話 少年の剣
「雷球」
雷の玉。電球のようなものをいくつか浮遊させてあたりを照らす。
「燐は軽く柔軟と素振りをしててくれ」
「はーい!」
燐に小さめの木刀を渡して腰を下ろす。まずはジョンがどういうタイプの剣士か聞く必要があるだろう。
「さて、まずは君の型を教えてくれ。あ、型の説明っている?」
「お願いします」
「じゃあするか。型ってのは簡単にいえば戦闘タイプだ。それぞれの得意な戦い方のことを言う。これは全部で八種類あって、それぞれ継続戦闘型、決選戦闘型、貯蓄戦闘型、生存特化型、特殊条件達成型、広域殲滅型、広域制圧型、支援特化型に分けられる。……例えば俺だったら溜めた電気を一気に放出する貯蓄戦闘型と広域・大群を大規模攻撃で吹き飛ばす広域殲滅型の二つ。んで――」
「――僕は烈火オニグマを活用した生存特化型と、感情の揺れ幅で戦力が変わる特殊条件達成型、それに広域殲滅型の反対、大群で目標を攻略する広域制圧型の三つが当てはまります」
俺たち二人のタイプにジョンが頷く。
「なるほど。ちなみに他の皆さんは?」
「あっちにいるカルアは軸としては長時間の安定した戦闘が得意な継続戦闘型。だが……まぁ百を超える特典武装と持ち前のコピー能力で実質何でもできる万能型。一番参考にならないからしなくていい。んで、マレーナは戦艦を用いた継続戦闘型かつ広域殲滅型。ティアは無限の魔力でもって全てを蹂躙する継続戦闘型と広域殲滅型の二つだ」
「質問です。決選戦闘型と貯蓄戦闘型の違いは何ですか?」
「決戦の方は戦闘開始から短時間のみめっちゃ強いアグロ、速攻型ってイメージ。貯蓄は溜めたものを吐き出すだけだから、溜めれば溜めるほど、長く、強く、戦えるイメージかな。ただその分燃費が悪かったり、万能性に欠けたりと欠陥がある」
「うーん。なら、俺は決選戦闘型、でしょうか?」
自分のタイプに首を傾げながらジョンが答える。
「俺のナノオーブ。あ、この剣“マールス”なんですけど、剣を鞘から抜き放った瞬間に全ステータスが1.5倍と抜き放つ前に指定した属性攻撃になるんです。でも時間が経つにつれて強化が落ちていくから、たぶん決選戦闘型だと思います」
「1.5倍ですか。ちなみに今は第何形態ですか?」
「まだ第二形態です。効果も地味で弱いですよね」
「確かにまだまだだが……イナリ、これは結構ヤバくないか?」
「えぇ。第二形態で1.5倍。普通第二形態ぐらいだと固定値アップの方が多いですが……成長したらそれこそ10倍や20倍強化にでもなるのでは?」
「そ、そんなになりますか?」
今では想像できないであろう強化値にジョンが驚く。
「特級にでもなれば十分現実的な範囲だ。それに上級までいけば必殺スキルもつくだろうし……特級の必殺スキルレベルになると抜き放った一秒だけ100倍強化とかもありえそうだな。まぁポテンシャルは高いと思っていい。少なくともその辺の第二形態よりは強いように思える」
「そうですね。普通ナノオーブが中級に育つまでは、ジョブをメインに、ナノオーブを添える形で戦闘の型を組み立てますが、1.5倍の強化値ならナノオーブを軸にするのもありですね。爆発力はないですが、安定感は抜群でしょう」
「うん。一撃目で通用するかしないかすぐわかるのは初心者の内ならかなりプラスだ。強くなるにつれて隠し札も用意しなきゃならんが、扱いやすい単純な力ってのは悪くない」
「とするとそうですね。……基礎ステータスを上げるのが一番いいでしょうか?」
「状態異常もありだな。先制で詰め切れなくてもイーブンにはできるし、逃げる際にも助かるだろう」
「斬撃となると眠りは無理でしょうから、麻痺か毒ですね」
「あ、ちょっと待てイナリ。俺閃いたわ。そもそも“抜き放つ”はどこまでが効果だ?」
「どういうことですか?」
「いやなに、例えば腰後ろにマールスを固定して、抜いて引っ込めて抜いて引っ込めてを無限リロード。右手で短剣でも持てば常に1.5倍戦士の誕生だぞ?」
「なるほど。それは思いつきませんでした。でも、ちょっとカッコ悪くないですか?」
「それはそう。ってことでジョン、試してくれ」
イナリと強化戦略を練り終えて、ジョンに向き直る。
「あ、俺のこと忘れてなかったんすね」
「? 当たり前だろう? 君が強くしてくれって言ったじゃないか」
「あ、はい」
「試したことはなかったんですか?」
イナリがそもそもの疑問をぶつける。
「ないです。そもそもそんな風に戦おうと思いませんでした」
答えつつジョンが抜刀。彼の瞳に似た赤い刀身が抜き身になる。
そして、約一分。ジョンが剣を鞘に戻してまた引き抜く。
「おぉ。すごい! 強化が戻ってる!」
「お! ってことはまた1.5倍か?」
「はい! 続いたままです!」
「おめでとうございます」
感激したようなジョンにイナリがお祝いの言葉を投げる。
「おめでとうジョン。これで君は決戦戦闘型の力を持った継続戦闘型になれる」
俺もお祝いしていると、丁度片付けが終わったのかフィーラ、マレーナ、ハナもやってくる。
「おうおう。ギルマス、このガキの調子はどうだ?」
「いい感じだ。今ちょうど彼にしかできない新しい発見をした」
「お? どんなだ?」
「そうだな、簡単に言えば……無限抜刀強化維持。彼は新しいタイプの継続戦闘型になれそうだ」
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