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第27話 最低最悪最強だけど、カルアで何とかなる女

 話し合った結果ジョンとハナを連れていくことにした。

 初心者をのっぱらに置いていくのも心配だし、俺らの目指す方向も南だからちょうどいい。

 二人が燃え残った遺骨を拾い集め、馬車は再び動いていた。


 だが、人数が一気に六人も増えたので馬車の中が窮屈になった。

 燐はもちろんフィーラも外に置いておけない。初心者二人を外に出すのは悪いし、カルアを外に出すとティアがキレてめんどくさい。ティアもカルアと離れるのは嫌うし、カーディナルもその点は同じだ。マレーナはまだ爆睡中。

 そのため、残りの俺とイナリが御者台に座っている。オニグマは紋章の中だ。


「もう全速力で街までとばしますか?」

「アリ。……って言いたいとこだけど、燐がお勉強中だからナシ。ちょっとスピード上げるだけにしてくれ」

「了解です」

「これならマレーナのやつを叩き起こした方がよかったか?」

「そうですね。あの戦艦なら全員乗れますし、道なりに行く必要もない」

「まぁ明日からはそれでいくか」

「そうしますか」



 そうして三時間ほど。

 男二人、話題も尽き果て、あまり変わらない風景にとっくに飽きがきていた。


「腹、減ったな」

「そういえばお昼食べてませんからね」


 まだ日は落ちきっていないが、お腹が鳴った。


「その辺に止めて飯にするか」

「そうですね。カルアさんのために高級食材を沢山常備していますし、あの魔女にたかりましょう」

「イナリ、恨み深くてげっす~」

「運賃です。いいでしょう?」

「それならオーケー。文句言ったら置いてってやろう」


 俺たちは悪い笑みをしながら、馬車を止めた。



◇◆◇◆



「おいしー!」

『燐、少し食べ方が汚いですよ』


 注意を受けつつも燐が目の前の料理を平らげていく。


「う、うめぇ!」

「っ!」


 ジョンとハナも遠慮がちだが、止まらないようだ。

 そして、俺とイナリ、カルアとマレーナも酒を呷りつつ料理を平らげていく。


「カァー! うめぇなぁ!」

「ジャミ、このエビめっちゃプリプリです!」

『(^^♪』

「おいしい。と、カルア様は仰っております」

「オレの舌を唸らせるとはやるじゃねぇか」


 で、その食材を提供してくれた(カルアに頼んで強引に引き出した)ティアは赤色の鉱石のようなものを齧っている。

 炎の魔力結晶。それもかなり高純度のものだ。流石特級の中でも規格外の“無限”を冠する魔女。食うものですら規格外だ。


「チッ。お前たち、そんな高級品が食べられるのはカルア君のおかげだ。精々味わって感謝しながら食べろ」

「ざーす。ざーす」

「おいしく頂いてますよぉ!」

『(o*。_。)o』

「ありがとうティア。と、カルア様は仰っております」

「こんなうめぇもん余さず食いつくしてやらぁ!」


 酔って気分のいい俺たちはニコニコでお礼を言って食っていく。


「ちなみにそれ、美味いのか?」


 炎の魔力結晶を見て聞いてみる。


「別に。常に満ち満ちたボクにとって、美味しいとか不味いとか、そんな肉の快感は関係ない。そもそもこれも何となく齧っているだけだし」

「ふーん」


 適当に頷いてイナリにオススメされたエビチリみたいなのを食ってみる。


 プリプリのエビに甘辛いタレ。米があれば完璧だが、欧米育ちらしいティアは持ち合わせていなかった。

 代わりにバケットを齧って酒で流し込む。


 やっぱ人の金で食うメシはめっちゃうめぇと思う俺たちだった。



◇◆◇◆



 食事が終わってそこそこ。

 片付けはフィーラとハナとマレーナがやるというので、燐と共に夜風に当たっていた。


 そんな俺たちにジョンが近づいてくる。


「どしたー?」

「たー?」

「ジャミルさん、俺に訓練をつけてくれませんか?」

「どうしてだ?」


 ボケっとしていた雰囲気を一変。彼と同じように真剣なものに変える。


「戦うためです」

「戦いに向いてない。俺はそう言ったはずだが?」

「分かってます。でも、俺はもう、友達の危機に足が動かないような腰抜け野郎でいたくない。だから、お願いします!」

「……うーん、、、はぁ。まぁいいけど、俺でいいの? 強さならカルアとティアの方が圧倒的に上だぞ」

「いや、その、あの人たちはちょっと……」


 「変わっている」という言葉を飲み込んだジョンの真後ろに音もなくティアが現れる。


「ん~? 何だいこのガキは? 大した力もないくせにカルア君とボクに文句かい? カルア君のおかげで命拾いしたくせに生意気だなぁ? 死にてぇか?」


 ニコニコのティアが膨大な魔力を溢れさせる。近くにいた鳥は本能で恐怖を感じたのかみんな逃げ出した。


「脅してやんな。魔力漏らすな。こえーよ」

「あん?」

「カルアは御淑やかな女性の方が好きって言ってたな」

「知ってるよ。ボクは十分御淑やかなレディだろう? 文句あんの?」


 これで大人しくなるだろうと思ったら、ターゲットが俺に移っただけだった。

 これで御淑やか? ハハッ。冗談キッツイブフォォォ。後レディとか、そのぺったんなお胸をどうにかしてから言ってくれwww。


 なんて言ったら消されるだけなので、焚火であったまるカルアに助けの目を向ける。


『╮(´-ω-`)╭』

「ティア、ゲームする? と、カルア様は仰っております」

「うん! やるやる! 何するのー?」


 救世主の一声で厄介なやつが消える。だがカルアよ。やれやれって感じの顔文字だが、ティアはお前にくっついてるんだからな?


 俺は軽く非難の目でカルアを見つめてから、ジョンに戻す。


「まぁアレとはやりたくないよな。……じゃあ、ちょっと移動しようか。燐、ついでに鍛えるからいくぞ」

「はーい」

「ありがとうございます!」

「暇なので僕もいきます」


 俺、燐、ジョン、イナリは馬車から少し離れたところに移動した。

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