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第0話 プロローグ

 ―――大量の血が大理石の床に飛び散る。


 俺が相打ち同然で刺し違えた彼女は、たった今自分の命を奪った男にさえ憎悪の視線を向けることなく、優しく微笑む。


「あぁ。私は、失敗したの、ですね……」


 ――何故だ。何故笑える。俺はあんたを、世界全てを救うはずだった人間を殺したんだぞ。


 聖女の見せるその微笑みが、散り行く俺に劣等感を抱かせる。


 ――俺はたった二人を救うためだけに、仲間も、国も、友も、約束も、全てを裏切った。それなのにどうして、どうしてまだ、そんな人間を救いたいと思える。


 聖女は自分の死を前にしてもなお、全てを救えなかったことを悔しがっているように見えた。

 その姿勢が、心が、決意が、たまらなく眩しい。


 クズになった自分とは正反対だ。



 お互いの運命が確定した空間。

 一秒が無限にも感じられ、静寂が礼拝堂の中を支配する。


 最後に二人の顔を見られないのは残念だが、今更、合わせる顔もない。

 血を流し過ぎた。感覚がなくなり、視界もほとんど霞んでいる。後数十秒も持たないだろう。

 仮初めの死なら何回も経験した。けれど、本物の死はこれが初めてだ。



 このまま静かに沈んでいきたい。そう思うが、生憎俺にはそんな緩やかな終わりは許されないらしい。

 礼拝堂の天井をぶち壊して、数多の獣と一人の青年が降り立つ。


 俺は最後の力を振り絞って立ち上がる。


「はっ。ようやく、ご到着か、王子様。……かかってこいよ」


 その言葉に弾かれたように獣たちが襲い来る。


「願わくば、“次”こそ、あなたも――」


 最後の瞬間、そんな聖女の声を耳にして、彼――ジャミルは命を落とした。


数ある小説の中で私の小説に目をつけてくださり、本当にありがとうございます。

『0話 プロローグ』を読み終わり、少しでも続きが気になると感じていただければ、ブックマーク・ポイント評価の方をよろしくお願いします!


今日は初日なので追加で後3話分、二日目~四日目は3話分ずつ、五日目~七日目は2話分ずつ、その後は一章の終わりまで毎日1話ずつ更新します。

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