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4 やはりお風呂イベントでしょうか

健全なお風呂のはずです。

 食後はまた抱えて移動。抱えられながらマキナを見上げて言ってみる。


「お願いがあります」

「なんだ?」

「ご飯は、食べさせてもらうより、一緒に美味しいねって食べたいんだけど、マキナは食べちゃだめなやつ? それとも、食べなくてもいいけど食べられもするって感じ?」

「食べられはする。味はわかるが、美味い不味いを考えたことはない。栄養として経口摂取する必要もないからな」

「マキナは、どうやって生きてるの?」


 全知がもう答えをくれてるけど、本人の口から聞きたいよね、こういうことって。


「大気中の魔力やら何やらだな。俺も良くは知らん。そもそも、腹が減るという感覚が理解できん」


 全知が言うには、世界の魔力的なもので生かされてるんだって。三界の魔王ともなると、世界側も色々配慮するらしい。すごいね。


「お前は俺と同じ生まれだと言うのに、俺と肉体の作りは違うのだな」


 だって生まれじゃないし。あそこに落ちてたって方が正解だし。


「そうなんだ。面白いね」


 だから、適当に濁しておいた。いや、多分ホントのことを言っても良いんだと思うんだけど、なんかこう信じ難いだろうなーっていうか。今の所快適だからあんまり自分の情報渡したくないっていうか。


「だが、お前が望むなら、今度は一緒に食事をしよう……そうすると俺が手ずからお前に食べさせることができない」

「それは、いい」

「そうか?」

「うん。食べさせてもらうより一緒に食べられる方が嬉しい」

「――そうか」


 マキナはニコリとその赤い目を細めて笑った。うぐっ。心臓に悪い。


 抱えられて、部屋に戻ってきた。歯磨きしたい。『頑強』のおかげで虫歯にならないけどそれはそれとして歯磨きしたい。シャワーも浴びたい。


 私がそう思ったのに気付いたのか、ベッドにおろしながらマキナが首をかしげる。


「なにかしたいことがあるのか?」

「えっと、口を濯ぎたいのと、体を洗いたいかな」


 とりあえず言ってみたら、ふむ、と魔王が頷く。


「あの、えっとだから、おっきな桶とか貰えたら! 私魔法が使えるので自分でお湯をためます! 大丈夫!」


 魔王城に風呂桶があるか! と思わないでもないけど、なにか器貰えればすすぐくらいはできるし。タオルとか絞って体ふけるし。

 マキナは目を細めて笑う。


「問題ない」


 そう言って、ベッドサイドのテーブルにあった呼び鈴のうち、赤いリボンの付いたほうをちりんちりんと慣らした。

 すぐにスライム数匹と金属の人がやってくる。


「メディさん」

「ハイ、オ呼ビデショウカ、カナンサマ」

「カナンが風呂を所望している。そのようにせよ」


 マキナがそう命じると、メディさんが「カシコマリマシタ」とお辞儀をしてくれた。


「デハ、カナンサマ、浴室ヘ、参リマショウ。オ運ビシマスカ?」


 歩いて良いのかな? とマキナを見上げると、マキナはまた嬉しそうに笑う。


「どうした? 俺に運ばれたいか?」

「えぇ……そうじゃなくて、歩かせない理由があったら悪いかなって思って」


 多分ないだろうけど。

 マキナは少ししょんぼりして、


「そんな理由はない。俺が抱いていたいだけだ」


 って言った。直球~~。なんでこんなに最初から好感度がカンストしてるのかな。よくわかんないな。今までどの世界行ってもパーティー組んだ人たちは最初はみんなギクシャクしてたよ!


 とはいえ裸足だ。どうしようかな。靴欲しいな。服と同じで出せるかな。魔力を編んで、こうやって、こうじゃ!

 かわいいうさぎさんスリッパを作ってそれを履く。魔力で服にするの便利だな。今度からこれ使っていこう。

 マキナは目をまん丸にしてからため息を吐いた。


「お前……できるのは分かったが、あまりやるな。すぐに仕立て屋を呼んでやる」

「マキナもやってた」

「朝だけだ。正装は仕立てている。魔力服は普段遣いするもんじゃない」

「そうなの?」

「そうだ。流石は俺の番う相手だが、常識はまだ足らんようだな。キチンと育ててやるから安心しろ。メディ、まずは風呂だ案内してやれ」


 その言葉を合図に、メディさんとスライムたちが私を先導して、扉でつながった隣の部屋へ案内してくれる。そこはお手洗いとか洗面があって、その奥にバスルームがあった。

 猫脚のバスタブにもうお湯が張ってある。映画で見たような金メッキのシャワーも付いている。

 お湯にはバラの花が浮かべられていて、いつの間にこんな準備したんだろうって思う。


「コノオ城ハ、魔王サマガ望マレタトオリノカタチニナリマス。今、魔王サマガ、カナン様ニコウイウオ風呂ニ入ッテホシイ、ト願ワレタノデス」

「望んだ通りになるの?」

「コノオ城モ、魔王サマノ魔力ガ一部含マレテイマス。魔王サマノ腕ノナカニ居ルヨウナモノデスヨ」


 うわぁ。服どころじゃなかったのか。すごいな。魔力無尽蔵のかごがあってもこんなこと思いつきもしないよ。城を浮かべてるだけじゃなくて、細かいところまで魔力を行き渡らせて支配しているどころか思い通りにしているなんて。

 ……めっちゃ便利じゃん。やり方後で全知で調べておこう。


 で、お風呂に入るとして、このスライムさんたちはどうなるんだろう。


「えっと」

「コノスライムタチハ、入浴ノ、オ手伝イヲイタシマス。一緒ニ湯船ニ入リ、アトハ湯ト同ジトオ思イクダサイ」


 あ、スライム浴。ラノベで読んだな。気持ちよさそうだったし、きれいになるって言うしやってみようかな。

 というわけで、魔力で編んだワンピースとスリッパをしゅっと消して、体を洗いでからバスタブへイン! 一緒にスライムたちもちゃぽん! すぐに見えなくなったすごい!

 と、思ったら。


「んっひゃあ」


 ぬるぬると体中を、泡立てたスポンジとかなんかメレンゲとかジェルとか、そういったものでマッサージされながら撫でられている感覚とでも言えばいいだろうか。脇腹とか! 脇の下とか! かすめられて撫でられてくすぐったい!


「んっ、あっ」


 思わず声が出ちゃうけど気持ちいい~~! めっちゃ巧いマッサージ行ったときみたいに声が堪えられないうわ~~きもちい~~!


「ひゃ、ふっ、あっ」


 すべすべヌルヌルする。

 多分お風呂のお湯にオイルも入れてあって、そのおかげもあると思うんだけど、しゅごいのこれ。癖になりそうでものぼせるぅ。


「あふぅ~~」


 くてり、とバスタブにもたれかかると、流石に慌てたメディさんが駆け寄って引き上げてくれた。


「大丈夫デスカ!」

「気持ちよかったけどのぼせちゃった」

「カナン!!!」


 そこへ飛び込んできたのは当然マキナだった。

 こっちは風呂上り全裸。しかもしっとり濡れてるし、スライムマッサージでトロンロトロンの肉体年齢8歳だ。


「ぴぎゃーーーー!!」


 叫んだのは悪くないと思う。

溺愛ってなんでしたっけかね

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