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31.密教カルト教団の哀れな狂信者、罪を悔いる


挿絵(By みてみん)




 久し振りに海を越えることになったので船を設えることにした。キキにとっては初めての海だったので、潮干狩りや磯釣りなど堪能させてやりたかったが、愚図々々していると現在進行形で人死にが増えるかもしれない。

 海水浴やセーリングはまたの機会に出直すことにした。




挿絵(By みてみん)




 師匠のお気に入りだった“蛮族の鉄槌号”――バーバリアン・アタッカーは、およそ全長400メートル、推定総トン数30万の天翔(あまか)ける3段(かい)のガレー船だった。


 その存在感をこれでもかと威武(いぶ)し捲る、おどろおどろしいまでの龍の似姿のラムを船首に戴いた戦闘艦を真似(まね)て、自分達の海洋艦を作ってみた。

 大洋を渡ることもできるが、まぁ空中を高速推進するのが主な移動方法だ。

 ナンシーに頼んで外見を、異世界北欧神話“古エッダ”に登場する魔法の幽霊帆船、“スキーズブラズニル”に似せて造船して貰った。

 船首から船尾に迫り上がる武骨で優雅な竜骨と、大気を()く360の巨大なオールを持ったヴァイキング風ロングシップ・スタイルだ。

 師匠のバーバリアン・アタッカーには劣るが、それなりの威容の仕上がりには満足している。夜の航行では、白い帆を黒く染め替えることも可能だ。

 けれど、そんな訳で中身はまんまナンシーのテクノロジーなのは致し方無い。その実体は、宙域活動可能な亜空間光速戦闘を想定した航空母艦だ。

 新造艦の巨船は古ノルド語の別称で、“スキッドブラドニール”と命名した。帆には、竜とケルベロスと盾と乙女のコート・オブ・アームズを掲げている。

 シャンパンは割らなかったが、この間進水式を済ませたばかりだ。



 艦の戦闘指揮所CICでこれから乗り込むゴゴ・ゴンドワナ大陸の南東部やロロタビア地方、聖都ヘヘブンズの情報をお(さら)いしていた。


 「ドロシー、貴女、この間から内緒で何か極大魔術の実験をしているでしょう?」


 「あぁ、ちょっとした対抗意識だよ……」

 ステラ姉に訊かれて、悪戯(いたずら)が見つかってしまった子供のような言い訳をしてしまう。


 「最初はちょっとした好奇心だったんだが、ナンシーの宙域レベルの最終兵器、星団をもただの一撃で滅却し、しかも周囲への影響を最小限に抑える暴威が魔術で再現できるか、試していたんだ」


 「発動の並列処理を一点に集中させるのに、魔術回路の圧縮保存を思い付いて、コーデック方法を造り上げた……ヒュペリオン文明のルーツ、メイオール銀河の技術を応用したら、出来た」

 「カーネル・パニックを回避するのに悩んだが、ディレー式にしてこれを解決した」


 「安全のため厳重に封印してあるが、破格級のクラスタに圧縮された幾億個もの並列処理をするシーケンシャル魔術回路が、()()を可能にする」



 一拍置いて、指揮所センターは妙な雰囲気に包まれた。

 心なしか、みんなの視線が硬い。


 「ちょっ、ちょっと、ちょっとおおおっ、何、ドン引きしてんのよおおおおおおおっ!」




 ***************************




 太公望の術式に3000年もの間を(とら)われて過ごした九尾、無事に邂逅(かいこう)を果たして私の眷属になったシャルは、二度目のハネムーンという訳ではないが、プリと一緒に、ここゴンドワナ大陸に先乗りさせて魔族討伐を遂行させていた。

 無事に落ち合って、これから誅殺する都市と邪宗門徒に付いて何か聞き及んだか報告を受ける。


 (シナゴーグ夜宴教? 寡聞(かぶん)にして知らぬな)

 意外に物識(ものし)りなプリが知らないとなると、思ったよりも新興勢力なのだろうか? ここはまた、困ったときのナンシー頼みか?


 (それより、跳ねっ返りのエルフ娘よ、いつにも増してムスッとしておるな、何かあったか?)

 何故かプリは妙に、エリスに絡みたがる。馬が合うのか、犬猿の仲なのか、よく分からない関係だった。


 「煩瑣(うるさ)いよ、プリのくせに……あんたのご主人様が現人神(あらひとがみ)を辞めて、破壊神になったって話、それも宇宙規模のね」


 「エリスってば、し・つ・こ・いっ、あれはねぇ、実用レベルにはなってるけど、飽く迄も研究開発だからっ!」


 「だって、必要無いじゃん、何処で使うっていうのよっ、その終末級崩壊魔術……もう()っくの()うに、秘儀的魔法理論や神的魔術体系は()うに及ばず、惑星一個が滅びるって有り得ないステージさえ超えちゃってるよ!」


 「そっ、そりゃあ……そうだけどさ」



 (あのう、身共は以前に聞いたことがあります、ゴゴ・ゴンドワナ大陸に巣食う悪魔信奉の一派で、(いにしえ)の頃から繰り返した悪魔崇拝集会は作者不詳の古い文献“ガザリ派の誤謬(ごびゅう)”によると、当時はサバトではなく()()()()()と呼称していたようです)


 「おおっ、シャルは詳しいな、知ってることを全部聴かせてくれ」


 (……しかし身共のは(はる)か以前の知識なので)


 「い、い、か、らっ」




挿絵(By みてみん)




 私達の街、ババダインの中央教会にパレルモ・ゾゾズーマ教皇国でも高名なブールボワィアン大聖教の当代教祖様が布教にいらっしゃるという。

 近隣の村々からも一目ご尊顔を拝しようという熱心な女神教徒達が三々五々集まってきたので、布教の説法は市民公会堂に急遽変更することになった。


 「教祖様の神々(こうごう)しいお姿って、素敵よねぇ、是非貴賓席でお話を伺いたいわぁっ!」

 姉のアリシアのいう通り、ブールボワィアン大聖教の教祖聖下は数多い宗教者の中でも、とてもお姿が()い。

 そのせいばかりではないだろうが、女性信者の多い宗派だった。


 奉礼祭服はハイ・チャーチ聖公会の流れを()むもので、黒を基調とした厳粛ではあるが、かなり豪華なばかりか、司教冠のミトラやジュズルと呼ばれる権杖に至っては高価な宝石が散りばめられていた。

 にもかかわらず、権威を象徴している筈のそれらの華やかに彩られた正装も(かす)むほどに教主様のお顔は美麗だった。

 縦襟司祭服の黒いキャソックにチャジブル、ストールを重ねた一団に(かしず)かれ、まるで祭儀時の行事のように静々(しずしず)と登壇する姿に私達は一辺で(とりこ)になり、その場でブールボワィアン大聖教の女性司祭を目指して神学校入学の手続きをした程だ。

 家族を説得して、当面独身を貫くことになるだろう。

 法王庁から祝別を頂いている教祖様の説法は心撃つものだったが、その後に複数の臨時告解室が設けられ、副司祭様達が近隣の信者達の“悔悛(かいしゅん)秘蹟(ひせき)”をお受けになられた。


 後で聞いた話だが、この時の痛悔(つうかい)でアリシア姉さんは領主の息子との愛人生活の悩みを告白したそうだ。

 一緒に暮らしていても私は毛程も気付かなかったが、歳若い惣領跡取りは変わった性癖の持ち主で、姉に獣姦を強要するのだそうだ。

 最初は嫌がっていた姉も、度重(たびかさ)なる仕打ちに次第にその行為を待ち望むようになった自分を恥じて、懺悔(ざんげ)を求めたとか……。

 婚約者リチャード・バクスターの妹、フロイラインは活発で男勝りな性格だったが、まだ幼い心に闇を抱えていた。

 兄を男として恋慕(こいした)い、リチャードが旅に出た頃には、既に兄を想っての夜毎(よごと)の自慰行為を覚えていた。

 私は許嫁(いいなづけ)の長い不在に、最早経験済みの肉体を持て余し、有り余る性欲から領主館の下級使用人(サーヴァント)で従僕というか、フットマンの男と過ちを犯していた。

 そればかりか領主、ハイド・シュトローベンが初夜権の前払いとばかりに昼間から館の片隅で無体(むたい)に及ぶこと度々(たびたび)で、リチャードには申し訳ないと思いながらも繰り返される痴悦を受け入れ続ける自分を、担当の副司祭に吐露した。


 スコラ派ブールボワィアン大聖教は全てを許容する。

 告解を受け入れた副司祭様達は、恥じなくて良い、欲望を受け入れて良いと例外無く(さと)された。

 信じてみよう……と、改めて教義をなぞり始めた瞬間だった。



 五月蝿(うるさ)く翻意を(うなが)す家族を説き伏せるのは断念して、強引に着の身着の(まま)、身の回りのものだけで旅支度(たびじたく)をし、本拠地のへヘブンズ・シャングリラに引き揚げる教祖様一行に追従した。


 本当に信仰する対象が、グノーシス主義の“偽の神=アルコーン”で至高の超越的創造主デミウルゴス・ヤルダバオートであると知らされたのは、フィールドワークの伝道実習を終えた後だった。

 些細なことに拘泥(こうでい)する女神教の枠を超えて、欲望に正直になることを可とした教義を素直に受け入れる私ハンナと、姉のアリシア、少し歳下のフロイラインは、その週の週末に執り行われた魔宴、サバトに参加して乱交を受け入れた。


 良い子でいるのが嫌で嫌で(たま)らなかった。誰にも言ってないが良く小さい頃、蜥蜴(とかげ)飛蝗(バッタ)、蝶々を捕まえて解体するのが好きだった。

 人間の原罪を追及し、それを操ろうとするシナゴーグ夜宴教に身を置くことが心地良かった。


 やがて私達は夜宴教秘蹟のギフトを与えられ、十二使徒の一角として行動隊幹部職の重責を(にな)うようになる。




 ***************************




 それは、陽が中天に差し掛かる真昼に突然降りてきた。


 最初に気が付いたのは鐘楼に登っていた鐘撞(かねつ)きの修道士だった。

 陽の光の中に影があった。影は見る見る大きくなりへヘブンズの都を(おお)い尽くした。都は影にすっぽりとくるまれて、闇夜の(ごと)き有様になり、人みな押し並べて度肝(どぎも)を抜かれ、狂乱に逃げ(まど)った。

 つまり空に浮かぶ何かは、確実にへヘブンズ・シャングリラより大きかったからだ。

 暴力的な質量が大気を巻き上げ、突風が吹き荒れ、磁場に影響を与えるかとさえ思えた。

 逃げる(すべ)も立ち向かう(すべ)も持たぬ住民は、当てもなく右往左往して走り回る者、口争いだけでは済まず殴り合いの喧嘩(けんか)を始める者、神の(さば)きにただただ許しを()う者、これで天国ならぬ地獄に行けると狂喜乱舞する者など様々だったが、やがて巨大な船の船底から何本もの雷光かとも思われる眩しい光が()して、暗闇の街区と宗教伽藍(がらん)煌々(こうこう)と照らし出した。


 人々が何故、それが船と分かったかというと降りてくる影が巨大な船の形をしていたことと、これもまた巨大な見たことも無い女神の船首像が羽を広げて、舳先に鎮座ましましていたからだ。

 美しい像は、一眼見れば女神だと分かった。

 (おそ)れ多い女神の船首像も、神の御座(おわ)す天界の巨船も何もかもが神々(こうごう)しく白金色に輝いていた。


 生き残れる者は少なかったが、要塞艦ナンシーが衆人にその姿を現した瞬間だった。

 やがて一人の女神の姿が大きく大きく映し出され、天空を覆った。

 船首像と瓜二つの顔を持った息衝(いきづ)く女神の投影像は、背徳の都を見下ろして自らをドロシーと名乗った。

 その巨大な映し身は、都の何処からも望め、都の殲滅を宣言した。




 ***************************




 「暗殺カルト教団シナゴーグ・アサシン、司教法令(カノン)を犯し、悪魔崇拝の為の密儀、サバト、魔女の夜会“ヘロディアスの奇行”を繰り返す禁忌外道の(やから)よ」


 「お前達を粛清する……」

 準備は整った。いきなり最後通告を突きつけることにする。


 (ナンシー、ナノマシーン投下!)


 (……ナノマシーン投下します、艦底戦術攻撃ハッチ、9番、17番、32番、46番、78番、85番、94番、113番解放)


 超弩級巨大要塞戦艦は活動の多くが宇宙域だったが、その巨体にもかかわらず地表での作戦行動を主体にデザインされ、設計・建造されている。

 舷側下の胴体にも、艦底側にも様々な回転式プラットフォームの砲塔、銃塔、ミサイル・ターレットが装備されているが、底面は主に宇宙機雷などのトラップ系散布用ハッチが大部分を占めていた。

 密集したナノマシーンが投下された瞬間、大気中の水蒸気を(まと)った白い煙になって、それは降り注ぐ。



 およそ狂信的な暗殺者程、始末に負えぬものはない。


 金銭の対価で仕事として請け負う商業的暗殺者の方が、まだ人間的に救いがあるだろう。

 シナゴーグ夜宴教の司祭は皆、驚異的なまでに優秀なメンタリズムの技術者であり、人心を(まど)わすノウハウに関してはおそらく人智を超えた域にまで昇華(しょうか)されている。

 それはもう、悪魔的なまでな心理操作のテクニックで、正常な価値観を徹底的に塗り潰す。時間を掛け善人を人格破綻者に造り替える邪法と言っていいだろう。

 対象が何を忌避(きひ)し、何に心地良さを覚えるのか、どう誘導すれば教団の教義を心から信じるようになるのか……このカルト教団の連綿と熟成されてきた闇の歴史により練り上げられた手法は、当然のことながら門外不出の知的財産というのも(おぞ)ましい極秘中の極秘として受け継がれていた。



 下に望むへヘブンズ、悪徳と()じ曲がった想念を厚化粧のような(まが)い物の信仰で覆い隠した希代(きたい)の宗教都市に向けて、再び隅々(すみずみ)までに行き渡る言霊(ことだま)を放った。


 「我等は旅する者……ツーリストだ、昔犯した姦淫(かんいん)の罪過を(つぐな)うために贖罪の旅に出た、敬虔(けいけん)かどうかはわからぬがときに巡礼の真似事(まねごと)などをしている」

 「手を差し伸べて欲しいと請われれば力を貸すこともあるし、あたし達の裁量で救えるものは救う、逆もまた(しか)り、()()()()()()()と思うものあれば、これを討ち滅ぼす……例え相手が魔族ではなく、人だとしても!」


 「あたし達が信奉するのは、心の中の神……それはともすると偶像かもしれない、だが正しき神とはこうあって欲しいと願う姿だ」

 「だから、これから下す天罰は神が与えるのではない……あたし達の独断と偏見が()するものだと思ってくれて構わない、だから恨んでくれて構わないし、(あらが)ってくれても構わない、ただ……いずれにしても罪ある者は(さか)らえない死が下るだろう……」


 「先程投下されたナノマシーンは、人間の目には()まらないごく微細なものだ、これが罪人を判定し、(さば)く」

 「己れの心に(かんが)みて、シナゴーグ夜宴教に深く関わってはいないと思う者は、小一時間程の猶予(ゆうよ)を与える、家財道具を(まと)めて、この都を去るが良い」

 「ただし真の咎人(とがびと)は、この都から出ることは(かな)わない」


 「無事生き残れた者は、この都の最期、正義の鉄槌が見舞われることを考えもしなかった馬鹿者共の末路(まつろ)を、(のち)の世に伝えて欲しい」



 下界は暴走が始まっていた。皆我先にと、手ぶらも同然に都の外壁を目指して駆け出していた。

 肉屋であれ麵麭(パン)屋であれ、魔女崇拝に入信した者はおろか、少しでもそれと知って恩恵を受けた者は走る途中で昏倒し、バタバタと倒れていった。

 教団の教えにある“沈黙の掟(オルメタ)”から、たとえ家族であれ信者である事実は打ち明けられない。(たお)れる家族を振り返らず、そのまま見捨てて走る悲劇がそこいら中で見受けられた。


 知らなかった、では通らない。全てはナノマシーンが事実を(あば)き出し、有罪か無罪かを裁定する。背徳の都に生まれ、暮らしたことを呪いながら多くの者が、ナノマシーンの与える圧縮された幻覚痛、ファントムペインに苦しみ抜いて死んでいった。

 実際は一瞬の出来事だったが、圧縮された幻の仮想痛覚は伸展すると二、三週間分に相当する。つまり罰を受けた者は、二、三週間に渡る長い間ずっと、気が狂うような痛みに(さいな)まれて死ぬのだ。実に残忍な仕打ちだった。

 だが、やらねばならぬ。不心得な邪教徒が二度と台頭せぬように徹底的にやらねばならぬ。

 無残な死顔は恐怖と苦痛に歪み、二目と見られぬほど歪んでいた。


 行商その他で訪れていた、関係省庁の出向で首都から駐留していた、などの外部の者を含め、

 全くの無垢(むく)に近い者だけが生き残れて、都の外に脱出した。




 ***************************




 予想外で未曾有(みぞう)の大災厄に私達の都、ヘヘブンズ・シャングリラが蹂躙された。


 私達が信奉するアルコーンが一柱、デミウルゴス・ヤルダバオートの救いの手は無く、晴天の霹靂(へきれき)の如く降って()いた自称、巡礼の徒という存在が与えた罰は情け容赦無く、信徒は()うに及ばず住民の多くが死に絶えた。



 私達暗殺教団シナゴーグ・アサシン行動部隊の司令塔たる十二使徒は、ミミニギ大聖堂の礼拝堂前広場のファサードに集められていた。

 どのような脅威の術法かは皆目分からないが、最早私達に行動の自由は無かった。集められたときから、身じろぎもできないのだ。

 あちらこちらに倒れ伏した教団の闇司祭や闇修道士達、聖職者の仮面を(かぶ)った魔女崇拝の同胞(はらから)達は、その肉体を何か(おぞ)ましいものに(むしば)まれ、まるで木乃伊(ミイラ)のように(しな)びてしまった肢体をビクビクと痙攣(けいれん)させて、口から血の混じった泡を吹いている。

 恐怖しかなかった。私達は、自分達のこれからの運命を半ば悟っていた。


 目の前には、今も天空を(おお)う巨大な御船(みふね)から降り立った存在が目が(つぶ)れるかと思われる程に光り輝いていた。

 到底信じられなかったが、諜報暗部からの報告に受けていた西の大陸、アルメリアで出現したという“3人の御使(みつか)い”、“阿修羅(あしゅら)の進軍”として知られる存在に違いなかった。本当に居るとは思わなかった。


 過ぎた美貌は最早凶器とさえ思える完璧な美の女神――ドロシーと名乗ったこの人がおそらく、狂戦士(バーサーカー)“一心不乱の阿修羅(あしゅら)”として知られる戦女神なのだろう。

 私と姉アリシア、フロイラインの前に、その戦女神が進み出た。

 「お前達の意に反して生き延びたリチャード・バクスターはあたし達が(ほうむ)った、お前達への復讐のために無関係の者の命を(もてあそ)んだ責任を取って貰った」


 「この者の悲願だった復讐心を()み取り、シナゴーグ夜宴教をことごとく討ち滅ぼすことにした」


 リチャードが生き残っていたことも驚きだが、そのリチャードの意思で我等地下の盟友、闇に結ばれた夜宴教徒と、その全てともいえる本拠地のへヘブンズが完膚無(かんぷな)きまでに失われることに、喪心(そうしん)するほどの動転を覚えた。



 「シナゴーグ夜宴教の幹部は先んじて全て粛清した、遺伝子を引き継ぐ者は乳飲み子に至るまで、総てことごとく(むご)たらしく死に行くだろう……一族郎党、連帯責任で一律皆、差別無く(おの)れ等の罪の代償を深く味わって貰うため、わざわざ狂い死ぬ程の苦痛を長く長く与える科刑で縛った」

 「善悪の区別のつかぬ幼子を除き、皆平等に一年から数ヶ月、悶え苦しみながら緩慢(かんまん)に死んでいく、肉体の生体活動が停止してもなお、耐え難い断末魔の痛みが絶えず襲ってくる……楽に死んで欲しくは無かったのでな」

 「幼子だけは楽に死ねる……人の道に外れる無慈悲な仕打ちだが、因果を断ち切るためには必要と理解頂きたい、まぁ許しを得るつもりなど無いのだがな」


 「信者と教団関係者、この者達の魂は地縛霊となりて、暫くはこの地に立ち入る者を遠ざける、その後は消耗して消え去るのみ、輪廻転生の魂の循環に(かえ)って行くことは許さない……それとは別に、お前達に言っても分からぬだろうが、先程散布したナノマシーンが、永遠にこの地を封鎖する結界を創り、許されざる者がこの地を訪れることは(かな)わなくなる」


 「従って特異な暗殺師養成職能集団、シナゴーグ派の腐った歴史はここに(つい)える、お前達にも刑罰を用意した」

 「この都、ヘヘブンズ・シャングリラは今日を最後に途絶える、天罰を下すのは神ではない、どうにも生かしてはおけぬと思ったあたし達の独断だ」

 「以降、愚かにも(おぞ)ましい頽廃の悪行の象徴として、決して(ゆる)すべきではない鬼畜な罪への警告として、朽ちて滅びた遺構が人類への(いまし)めの旗幟(きし)……墓碑として残る」


 「非人道的とは思ったが、どうにも我慢がならなかった……このような腐った人でなしの連中に掛ける情けも哀れみも、どうやら我等には持ち合わせが無いようだ……思っていたよりも自分達が狭量なので驚いている」

 語る女神の言葉が私達を縛る。

 全てを見通す透徹眼かと思われる暗い視線が、私達を射貫(いぬ)く。

 強烈な固縛魔法と絶対魅了(ギガチャーム)の魔術が自由を奪い、心も身体も何ひとつ思い通りに動かせるものは無い。


 「我等は魂滅却の術を成す、(ほふ)った者共の魂は正常な輪廻転生のことわりに戻ることは無い、二度と再びこの世に生を受け産まれ(いず)ることは無い……鬼畜には鬼畜に相応(ふさわ)しい罰を与える」

 「街の住人で、今迄一度もこの精神病質者(サイコパス)の集団と関わりの無かった者は退去して貰っている最中だ」


 「接触のあった者は、係累も含めてこれから迦楼羅炎(かるらえん)で浄化する」


 「浅くも深くも、二度とこのようなものに関わる不心得者が出ないよう、スケープゴートになって貰う、同じように輪廻転生の輪には戻さない、魂まで抹消する」

 「この都は廃墟と化し、愚かな暗殺者集団の、その愚かさ(ゆえ)に怒りに触れ滅ぶことになった墓標として、後の世まで残る」

 「お前達には愚かで腐った邪教集団の犯した罪を語り継ぐ、語り部になって貰う」

 「あまり意味は無いかもしれないが、これから与える(むく)いに可愛らしいその顔は瞬く間に腐れ落ち、見るも無惨な肉塊と化すだろう、しかし気にするな、誰もお前達を可哀想だとは思わない……真実を知ることになるからな」


 「この蜂の特殊な複合神経毒を思うモノに調整するのに、丸一日掛かったよ」、見ると女神の指に、黄金色に輝く蜜蜂ほどの一匹の蜂が留まっていた。


 「これの毒は、一刺しごとに死ぬか精神をヤられる程の激痛を(もた)らすが、逆に痛覚は増幅され鋭敏になっていく」

 「例えどんなに疲弊し、耐え難い苦しみがあろうとも、気が触れること、ショック死することは無い……針には延命の加護がある」

 私達ハンナ、アリシア、フロイラインを初め、一欠片(ひとかけら)の慈悲も無い逃れられぬ運命を聞かされる十二使徒達は、絶望に発狂し、まるで石像の如く立ち尽くした。


 突如として地鳴りがし、激しい振動に立っていられないまでなのだが、動かない身体は直立不動、指一本動かせない。

 抵抗できない横揺れに、横倒しになる者、棒倒しの前のめりに顔面を打ち付ける者なども居た。


 「不思議か? すでにお前達は縛られている、自由になるものは何一つ無い」

 「祭壇を用意した、十二の生贄を(ささ)げるための祭壇だ、多くを犠牲にしたお前達のために特別にしつらえた祭壇だ」

 「知り合いを、(かつ)ての家族や伴侶を、最も効果的な供物(くもつ)として差し出したお前達自身が人身御供になる日が来るとは、思ってもいなかったろうな?」


 「お前達はそこに横たわり、永劫に近い時を掛け、ゆっくりと苦しみ抜いて死んで貰う」


 「分かっていると思うが、楽には死ねない、お前達が世間を(あざむ)き聖者面の下に隠した醜い心根で犯してきた全ての罪を、清算して貰う」



 「リチャード・バクスターと交わした約束を履行(りこう)する……」


 「彼の者が息を引き取った後、墨刑(ぼっけい)の面相を治癒して尚且(なおか)つ残る苦悶の表情をも()きほぐした……最後には歳相応の若者の顔に戻れた」


 「大罪人なれど、丁重に(とむら)った、彼の者の魂が生まれ変わるときにと、幸運の加護を宿して見送った」

 「リチャード・バクスターの魂は救われるだろう」



 やがて私達シナゴーグ教徒の総本山たるミミニギ大聖堂の地下に眠る魔女神殿や儀式の場だった“秘密の花園”は、土中から盛り上がり、激しい轟音と共にせり上がる祭壇に蹂躙されて、何も彼もが粉々に跡形もなく崩れ去った。

 (まと)わりつく瓦礫を押し退け、掻き分けるようにして出現したピラミッド状の祭壇が天を突き、我等(とら)われの十二使徒を空に近いところへ押し上げた。

 いつの間にか引き揚げた神の御船(みふね)は、いずこかへと立ち去り、倒壊した都も僧院の伽藍(がらん)も関係無く、空だけがいつものように青かった。

 何故か抜けるように青い空を見ながら、(すべ)らかな金属の髑髏(どくろ)達に取り押さえられた。


 「天気が好くて良かった、この世の見納めに良く()ておくことだ」


 「お前達の身体はこれから、この特別に培養し飼育された毒蜂に(おお)われ、間断無い苦悶に責め(さいな)まれ、常時煩悶苦吟(はんもんくぎん)する地獄を味わうことになる」



 「だが、真の苦行はここからだ、蜂の毒にはお前達が正気を取り戻すための精神遡行(そこう)の術式を付与してある、薄皮が()がれるように一枚ずつ、狂ってしまったお前達をベールをむくようにして真面(まとも)な状態に戻していく」

 「普通だったら耐えられない、お前達の犯してしまった所業を心の底から悔いることになる」


 「狂うことも許されず、今すぐ死ぬことも許されない、救いなど何処にも無い……これがお前達の罰だ」



 「悔いるがいい……」




 ***************************




 始末する前に教団関係者を総舐めにして、実行部隊の統括本部が握っている情報の裏を取った。各地に散っているアサシンや支援部隊、布教活動と称して暗躍する僧侶達の足取りを(つか)むためだ。

 水銀魔術で造り上げた工作員タイプに特化した髑髏(どくろ)達を派遣して、人知れず抹殺する準備は整えてある。

 根絶やしにしなければ意味が無い。


 「あたし達が勇者に魅了されていたとき、クズに命令されれば、肉親を、あるいはソランを手に掛けたと思うか?」



 「……したでしょうね」


 「違うっ、そんなことは無い!」


 「エリス、違うって言いきれる? あたし達は下種勇者のために何でもしたんだよ、逆らったことなんか一度も無かった」


 本当はエリスにもことの成否は分かっている筈だ。ただ認めたくないだけなのだ。認めてしまえば、裁く者と裁かれる者が等しく咎人(とがびと)になってしまうから……

 私達の境遇が、ソランや親しい知己(ちき)を手に掛けなかったのは偶々(たまたま)でしかない。

 運好く、その可能性を拾わなかった、というだけに過ぎない。



 夜宴教一派の終焉を見守るために呼び寄せた“スキッドブラドニール”の艦橋からハンナ達、十二の死に体を見詰めていた。

 殊更無関心を(よそお)って、要塞艦“ニンリルの翼”、ナンシーはいつもの滞空高度へと戻って行った。


 最期を看取(みと)るつもりも更々ないが、充分に苦しんでいるのか彼女等に呼び掛けてみることにした。


 (邪教の徒は、(おの)れ等の信じる邪神と実際に相目見得(あいまみえ)るとき、一体どうするのだろう?)


 (例えば、お前達の信奉する邪神様は、お前達の信心などお構いなしに、ただ餌として喰らうだけかもしれない……喜んで喰われてやるのか?)

 (あたし達は違う、あたし達の信奉するのは自分の心の中の神……信ずるに足ると、心の中に創った理想の神だ、心の中に祭壇があり、偶像以上のものとして確かにそれは鎮座ましましている)

 (それ(ゆえ)、もし天上に住まう実在の女神が敵対し、立ち(ふさ)がると言うのなら、我等は一瞬の躊躇(ためら)いもなく牙を()くことができる)

 (神々が行手(ゆくて)の邪魔をすると言うのなら、全力を以って……力尽(ちからず)くで押し通るのみだ)




 ***************************




 ガチガチと震える私達の恐怖にお構いなく、断罪の女神は何処からともなく真四角の文箱程の大きさの、魔法の養蜂箱を取り出した。

 私達十二使徒が寝かされ、(くく)りつけられた(にえ)の祭壇脇にそれが置かれると、瞬く間に(あふ)れ出た金色の毒蜂は、何千匹いるのか何万匹いるのか、空を埋め尽くす猛威は、やがて私達にたかった。


 最初の一刺しが、同時に何十ヶ所だかも良く分からない。

 ただ想像を絶する激痛に悶え苦しみ、意識が薄れていくと同時に、覚醒の麻薬でも打たれたように目まぐるしく思考が(はし)り出す。

 痛みは尚更(なおさら)とはっきり感じられる。


 想像もしていなかった耐え難い苦痛に大声で絶叫しようにも、それはすぐに(かな)わなくなった。

 開けた大口にも蜂が入り込み、中から咽喉を刺された。


 もう何も見えない。聴こえない。


 蜂の毒が回って、それが始まった。


 私達が何を間違え、何を捨てて、何に堕ちたのか……裏切ってはいけないものを裏切り、犠牲にしてはいけないものを犠牲にしてしまったのかが、今ハッキリと心の内に刻まれ始める。

 それは徐々にだが、確実に私達の心を引き裂いた。


 号泣しようにも、おそらく糜爛(びらん)してしまった肉体はただの溶けた肉塊と化していることだろう……常の新陳代謝はもう跡形も無いのだと思う。


 ご免なさい! 今更、貴方に謝ってもどうしようもないけれど、取り返しのつかない無残な行いで貴方を傷付けた。

 貴方の人生を奪い、死なせた。


 リチャード、愛していたわ、本当よ。

 不倫の過ちを貴方に懺悔(ざんげ)するべきだった。共に歩むと誓ったのに、貴方に真実を告げずに、私は自分を正当化した。

 やがて快楽に(おぼ)れた私は、吐き気を催すような(ただ)れた交わりを平気で受け入れた。狂っていた自分が、今はっきりと認識できる。

 裏切りを正当化するつもりが、更に許されない裏切りを重ね続けることになるなんて……何処で私は間違えたんだろう?

 例え薄汚れた身だと分かっていても、貞淑を美とする女神教の教えを手放(てばな)すんじゃなかった!

 私が、リチャード、貴方を実行部隊のアサシンとして手駒のひとつに堕とし、アルコーンへの背信を不徳として黥面(げいめん)の刑に処した。

 自分の許婚(いいなづけ)に対して、何の良心の呵責(かしゃく)も感じなかった私は許されるべきじゃない!

 これは私が受けるべき、当然の罰なんだ!


 それだけじゃ無い。悪魔への(みつ)ぎとして、私は自らの両親も、故郷(ふるさと)の知り合いも、全て殺した。

 化粧水の新商品が出るといつも取り置きしてくれた薬屋のポメリーさん、時々簡易裁判を行ったマナーハウスで守衛をしていたヨセフの叔父さん夫婦、炭焼き職人のロセッティとアーサー……皆んなっ、皆んな私が殺した。

 私は未来永劫に渡って、決して許されることの無い罪人なのだ。

 許される筈もない。許されてはいけない。



 姉のアリシアの心の声が聴こえた。


 ゴメンナザイ! ゴメンナザイ! ゴメンナザイィィィ……!

 本当に殺す気なんか無かったんでずうぅぅっ。

 あだじがぁ、領主の跡取りの(なぶ)り者になっていても見て見ぬ振りの父上、母上なんて死んでしまえばいいって思ってまじだあっ。

 でも、本当に殺ず心算(つもり)は無かっだんでずぅ!

 ズイマゼン! ズイマゼン! 女神教の教えに(そむ)きまじだあっ。

 夜宴教の教えが心地好(ここちよ)かっだんでずぅっ!



 そうか……こういうことか、私達の心の声は、きっとこの廃墟になった都の外まで、四方八方に放たれているのだろう。

 他の女達の悔悟(かいご)のおめき声も聴こえる。


 アッグウウゥゥッ、痛いよぉっ、痛いよぉっ、痛いよぉっ、痛いよぉっ、痛いよぉっ、痛いよぉっ、痛いよぉっ、痛いよおおおぉっ!

 兄ざんと愛じ合えない世の中なんて壊れでしまえば良いと思っだあああぁっ!

 一緒になれないなら、いっそ兄ざんなんか居なければいいと思っだあああああぁぁっ‼︎

 兄さんの妹とじて生んだ両親が憎がったぁ……そんなことで逆恨(さかうら)みじた私を許しでくださいいいぃぃっ‼︎

 お父ざんっ、お母ざんんんんんんっ‼︎

 貴方達を殺したのは私の意思でずううううぅっ‼︎

 無念で悲惨な死に方をさぜてしまって申じ訳ないけれどぉ、どうが天国で安らかに眠ってくださいいいぃぃぃっ‼︎

 次の人生では馬鹿な娘に出会わないことを祈っていますっ‼︎

 私はごのまま罰を受げ続けます‼︎


 これはフロイラインちゃんの声だ。


 リチャード、許されないのは分かっているけれど、私は貴方に謝り続けるわ。そして、もう二度と生まれて来ない。

 何年も、何年も、ここで気が狂いそうになる痛みに耐えながら、懺悔し続ける。もう二度と、こんな邪悪な宗教が蔓延(はびこ)ったりしないように……………




 ***************************




 「キキ、無理して聴かない方がいい、心が(にご)る……」


 「でも、ドン底まで腐った人間の末路、もっと強くなる為には見ておかなくちゃならない……何物にも動じない強い心を持つために」


 「そんなことしなくても、お前は母さん達が最強にする、心配しなくていい、お前はまだ幼く、やがて母さん達を超えて行ける筈だ、焦る必要はない」


 「行こう、ドロシー、もう見ていてもしょうがない」

 エリスは早く立ち去りたいようだった。


 「……結局、同族嫌悪だな、あいつ等が無性に(ゆる)せなかった、人が畜生道に堕ちるのは紙一重なのかもしれない」

 「人って、自分の(おちい)り易い落とし穴に(おちい)るんだろうな……」



 「似たような罪を犯したあたし達は、いったい誰が罰してくれるというのだろう?」


 「勿論(もちろん)、ソランしかいないよっ!」


 「……あぁ、エリスのいう通りだな、結局あたし達の旅の辿(たど)り着く先は、ソランが用意してくれる絞首台なのかもしれない」


 「でも、子供が出来て事情が変わった、今すぐはおいそれと討たれてやる訳には行かなくなった、ソランへの謝罪と対価の支払いは、悪いけれど当面待って貰うしかない」



 (例え、ソランが復讐心に駆られ、あたしを、あたし達を(しい)そうと焦燥を覚えているとしても……)

 そう心の中で呟いた、その時の私の顔がとても(さび)しそうだったと、後からキキに聞いた。






古エッダ=17世紀に発見された北欧神話について語られた写本で9世紀から13世紀にかけて成立したとされている、古ノルド語で書かれた歌謡集〈詩群〉であり、主に北欧神話や北欧の英雄伝説について語っている/一般に「古エッダ」と呼ばれているものは発見された王の写本をその根底としている……本来「エッダ」とはスノッリ・ストゥルルソン著である「新エッダ」のことを指していたが、その中で言及されている古い詩の形式や後に再発見されたそのような形式の詩を指す言葉としても用いられるようになったため、この二つを特に区別するために「古エッダ」と呼ばれるようになった

スキーズブラズニル=「古エッダ:グリームニルの言葉」第43節でイーヴァルディの子らがフレイのために作ったと語られているが、続く第44節では船のうちで最もすばらしいのがこのスキーズブラズニルだと説明される/「スノッリのエッダ」第二部「詩語法」では制作の経緯が詳しく語られていて、全ての神族を乗せうるほど巨大な帆船であるが折りたたむと袋に入るほどの大きさになると言う

ロングシップ=主にスカンディナヴィアのヴァイキングとサクソン人が建造し使用した船で、彼らがヨーロッパ中世に海岸や内陸の集落を襲った際に用いたのがこの船であった/優美で、長く、細い船体形状で前後が対称となっており後退も素早く行え、ロングシップにはほぼ全長に渡ってオールが取り付けられた

CIC=Combat Information Center:現代の軍艦における戦闘情報中枢のことであり、レーダーやソナー、通信などや自艦の状態に関する情報が集約される部署で指揮・発令もここから行う/性質上多くの機密情報を扱うため運用時間中は乗組員であっても立ち入りには制限が加えられ、戦術情報処理装置や戦術データ・リンクをはじめとする各種のC4Iシステムが装備され、これらはオペレータとともにマン・マシン・システムを形成して戦闘中の情報処理を一括して担う、すなわちCICは艦のC4Iシステムとオペレータとを連接するためのマンマシンインタフェースとしての役割を持っており、その設計は艦のシステム統合にあたって極めて重要である

キャソック=聖公会の聖職者の平服に用いられている立襟の祭服で、外見は足丈のマオカラースーツに似ている

チャジブル=ミサ・礼拝の時にアルブやストールの上に着用する牧師が着用する祭服の一種で、外見はポンチョに似た貫頭衣

ストール=礼拝の際に使用する首から掛ける帯のことで、カソリック系ではストラと呼称する

グノーシス主義=1世紀に生まれ、3世紀から4世紀にかけて地中海世界で勢力を持った宗教・思想である:グノーシスは古代ギリシア語で「認識・知識」を意味し、自己の本質と真の神についての認識に到達することを求める思想である……旧約聖書に登場するヤハウェと名乗っているデミウルゴスを、固有名で「ヤルダバオート」と呼び、旧約聖書において愚劣な行為を行い、悪しき行いや傲慢を誇示しているのは「偽の神」「下級神」たるヤルダバオートであるとした


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挿絵(By みてみん)

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別口で“寝取られ”を考察するエッセイをアップしてあります
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