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88、暗黒竜神とおしゃべり

 私が結界の中に入ると、中に居たゾンビが一斉に私を見た。ひぇ〜、ハロウィンどころじゃないよー。


 そして、ゾンビ達は、一気に襲いかかってきた……と、思ったら、私のすぐ近くでピタリと静止した。やだやだ、くっさーい!!


「なんだ、新入りか」


「まだ、不死の呪いには至っていないようだが」


 ゾンビがしゃべったぁ〜。いや、違う違う。彼らは、暗黒神や、その血を引く魔族だよね。なんだか、前世の知識が邪魔をする。ハロウィンだと思ったのがいけなかったのね。


「小娘が怯えているぞ? 少し離れてやったらどうだ?」


 遠くから声がした。すると、ゾンビ達はサーっと離れていった。でも、まだ臭い。この結界の中って臭すぎるよー。



「お嬢さん、それは水神竜の呪いか?」


 遠くからの声は、妙に落ち着きがある。声のする方を見ても姿は見えない。暗いし、何かネットリとした空気。これが呪いのオーラってやつなのかな?


「さぁ、わかんない」


「なぜ、ここに収監された?」


「ん? 収監? なんだか牢獄のような言い方ね」


「ふっ、やはり、わかっていないのか。まぁ、大抵の者は騙されてここに入れられる。もうその身が滅ぶまで出られないぞ」


「えっ? やっぱり、騙されたんだ。私、死ぬのかな」


「その呪いは強いものだ。今は身体が抵抗しているだろうが、ただの魔族には荷が重い。だからここに早々に収監されたのだろう。そして、暗黒神の血が邪魔をする。不死の呪いに変化するだろう」


 うーん、私、騙された? だから、オットーさんは何も説明しないで買い物に行けって言ったの? 


 でも、それならポーションをくれたのはなぜ? ここに閉じ込めるなら、ポーションなんていらないじゃない。



「暗黒竜神って人はいる?」


「ふっ、お嬢さんのように若い者が、ワシのことを知っているのか」


 この声の主は巨大なドラゴンなんだ。ここのヌシなのね。だから、みんなサーッと引いたんだ。


 オットーさんが好機だと言っていたのは、呪いを受けていると、こんな風に新入りだと思われるからなのかな?


 さっき、ゾンビ達が襲いかかってきたもんね。あれ? 食べようとしたの?


「あの、さっき、私に襲いかかってきた人達が、私の近くでピタリと止まったのは、貴方が止めたの?」


「いや、そろそろ、間引きに来る頃だからな。間引かれたくない奴らが侵入者を排除しようとしただけだ」


「死にたくないから?」


「ワシは、いい加減、自己転生したいのだがな。もうわからないほどの年月が流れた。襲ったのは、お嬢さんと同じ魔族だ。彼らは、ここに来てまだ日が浅い。治ると考えているのだろう。ワシから見れば、ここにいる誰もが手遅れだがな」


「そっかー。でも私は魔族じゃないよ」


「ほう、それは失礼した。お嬢さんが身につけている何かで、素性がよく見えないのだ。暗黒神らしくないから魔族かと思ったのだが……と言うとまた失礼だったか。ハハハ」


 なんだか、このドラゴンと話していると癒される。この環境が私には心地が良いのかな? いやいや、ないないない! こんなに臭いんだもの。


「こないだも、暗黒神らしくないって言われたわ」


 暗黒竜神は、ハハハと笑っている。笑すぎじゃない?



 あっ! ちょっと気づいちゃった。もしかすると、いけるかも? シトラスさんが私に与えた知識をあれこれと探していると、呪いの反転効果っていうのを見つけた。


 呪いを受けているときは、魔法が反転して逆作用を引き起こすことがあるから注意が必要。呪いが強ければ強いほど、反転の可能性が高いんだって。


 私は頬に触れてみた。うん、熱を持ってるし、身体はダルくて眠い。今も思いっきりウィルさんの呪いは継続中ね。



「暗黒竜神さん、私はアニス。シトラスさんの転生者なの。ちょっとひらめいちゃった。試してみてもいいかしら?」


 私がそう言うと、ゾンビ達が殺気立ったのがわかった。ふぅん、鋭いね。でも私は、ほんとに捨てられたのかもしれないんだけど。


「ほう。ワシも、あの方の転生者だ。とは言っても、もう何十億、いや何百億年も昔のことだがな」


「えっ!? シトラスさんって、そんな、婆ちゃんなんだ。随分と若作りしてるよねー」


「プハハ、もう顔も忘れるくらい長い間、会っていないが」


「見た目はねー、30歳前後って感じだよ。かわいいゴシック調のドレスを着てるの。話さなければ、どこの令嬢かと思うくらい美人だよ。話さなければね。大事なことだからもう一度言うけど、話さなければよ?」


「そうか。プププ、確かに、あの方は見た目は美しい。見た目はな」


「奇遇ね。意見が合うわねー」


「確かにそうだな、ハハハ」


「ここ、いいね。いくら悪口を言っても、怒鳴り込んでこないし、そもそもバレてないよねー」


「ふっ、退屈だぞ。新入りが来るといろいろな話が聞けて楽しいが、すぐに皆、話さなくなるからな」


 なんだか、ゾロゾロと集まってきたみたい。暗くて近寄らないと見えないけど、殺気の数がすごいことになってる。でも、ゾンビ達はみんな弱いわね。つまらない。


 暗黒竜神が、ゾンビを誘導してるのかな?


「なんだか、集まって来ちゃって」


「ふむ、皆、アニスの話が聞きたいのだろう。試してみたいこととは何だ?」


「うん、貴方達に、蘇生魔法を使ったらどうなるかしら?」


「暗黒神が蘇生魔法など使えないだろう? まぁ、そうだな、闇系に蘇生魔法は、どんな攻撃魔法よりも強いダメージを与えるが」


「でも呪われていると効果は反転するよね?」


「うん? あぁ、そうかもな。皆、これ以上ない強い不死の呪いを受けているからな」


「じゃあ、いけるかも」


「アニスは、蘇生魔法を使えるのか?」


「ただの回復魔法も使えないわ」


 なんだか、まわりがザワザワしてきた。


「ふむ、即死魔法を反転させる気か」


「さすがだねー。正解!」


「確かに、即死魔法が反転すれば、強烈な蘇生魔法になる。そしてワシらは、蘇生魔法を受けると反転して即死魔法、いや、強烈な光魔法の反転で呪いが弱まり、闇エネルギーの補充になるか?」


「難しいことは、わかんない。でも、呪いに刺さるよねー、強烈な光魔法が〜」


「なるほど」


「私をここに来させたオットーさんが好機だって言ってたの。反転効果のことじゃない?」


「だが、そんな即死魔法を撃つには、かなりの魔力が必要だ。いくらアニスが呪いのせいで、能力が増幅されていてもな……」


「やってみなきゃわかんないよ。失敗したら、ダメージを受けるだろうけど、成功したらみんなの呪いが吹き飛ぶかもだよ?」



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