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64、嫌がらせからひらめいた、ポテトチップス

 オットーさんから食材を受け取って、じゃがいもの皮を風魔法でむいていると、視線を感じた。うん? 何? みんな見てるの?


 次々とじゃがいもの皮むきをしていると、オットーさんは、ますます不思議そうな顔をしている。


 10個くらい皮をむいたところで、風魔法で、ちょー薄くスライスした。ちょっとアク抜きのために水魔法、そして風魔法で表面を乾かした。キッチンペーパーも不用ね。


 油は、フライパンを使おうかな?


 フライパンに油を入れて、火にかけた。油の温度は、低めでサッと揚げて、塩をパラパラとふって、完成ね。


 一枚、味見をしてみた。パリッとしてて、うん、懐かしい味ね。お皿に紙ナプキンをのせ、その上にザザッと入れた。


 他のお客さんにも、試食してもらおうかな? ワゴン販売みたいな感じの押し売りもいいよね。


 カフェスペースには、いま、10席くらいかな? 私は、15皿に分けた。皿から、こぼれそうなほど山盛りになっちゃった。



「ポテトチップスだよ。食べてみる?」


 まだまだ大量に余っているポテチを別の皿に入れると、次々と手が伸びてきた。みんな、初ポテチね。でも、ちょっと作りすぎたかな?


「わっ、パリッとして何ですか、これ」


「だから、ポテトチップスだってば〜。手軽なおやつだよ」


「じゃがいもが、こんなおつまみになるとは知りませんでした」


「オットーさん、おつまみじゃなくて……まぁ、おつまみでもいいけど」


「では、これを、食堂でも提供していいですか?」


「うーん、見た目が同じだと、カフェから文句を言われるかもしれないけど……。あっ、食堂の方はフレーバーつけよっか。ガーリックバター風味とか何でもいいけど、オジサンが好きそうな感じにするといいかも」


「ガーリックバター風味!? それはいい! すごくお酒がすすみそうですね」


「うん、一応、差別化しておかないとねー」


「じゃあ、この余ったものをいただいて、合いそうなガーリックバターを考えてみます」


 そう言うとオットーさんは、どっさりポテチを持って行ってしまった。新メニュー開発に熱心ね。




「じゃあ、手の空いている人、ポテチを持ってテーブルを回ってきてください。ワゴン販売的な感じにしたいの。あ、ワゴンを作ろっか」


 私は、創造魔法を使った。シンプルな銀色のワゴンが完成。魔法って便利よね。ホテルのルームサービスみたいなオシャレなワゴンになった。


 そして、ポテチの皿を並べた。一段には、3皿しか並ばないわね。まぁ、いっか。二段あるから、6皿ね。


「新メニューだから、お試し価格で、一皿銅貨1枚の特別価格にしようかな。新メニューお試しいかがですか〜って、ワゴンをガラガラ押して、席を回ってきてください。価格も言ってね」


「じゃあ、僕、行ってきます!」


「いや、俺、いまヒマなんで行きますよ」


「じゃあ、二人で行ってきて。別テーブルから同時に声がかかるかもしれないから」


「はい!」


「了解っす」


「私は、一足先に、あのお客さんに持って行ってくるわね」




 私は、ポテチを一皿トレイに乗せて、窓際の女性4人組の席へ歩いていった。


「お待たせいたしました。ポテトチップスです。手でそのままつまんで、お召し上がりください」


 営業スマイルを浮かべながら、ポテチの皿をテーブルに置いた。それを見て、4人とも妙な顔をしている。


「あ、あの、アニスさん、これは食べ物ですか? なんだか、虫のヌケガラみたいに見えるけど」


「ふふっ、芋を油で揚げました。私の前世では、有名なお菓子なんですよ」


「えっ? 貴女も転生者なの?」


 好戦的な態度の女性が、意外そうな顔をしていた。ふぅん、彼女は、転生者じゃなくて勇者の子供なのね。


「そうですよー。勇者ではありませんけどね」


「当たり前じゃないの。勇者は、選ばれたひと握りよ。まさか勇者が、こんな店で働くなんてあり得ないわ」


 私の素性を知る女性は、ハラハラしているみたいだけど、私は争う気なんてないよ。


 勇者が、勇者らしくない言動をするだけで、ぼわっとエネルギーが出てくる。闇堕ちさせればどうなるのかなー。


 私は、営業スマイルを浮かべ、軽く会釈をして厨房へ戻った。彼女達は、虫の抜け殻に見えるのか、まだジッとポテチを眺めている。


 たぶん、別に塩からいものが食べたいわけでもなかったんだと思う。嫌がらせをしたかっただけよね。



 私が厨房に戻ると、ポテチのワゴン販売が始まった。


 二人の店員が接客していた席のお客さんは、すぐに買ってくれたみたい。やっぱり、ワゴン販売っていいね。つい、頼みたくなるもの。


「わぁっ! すごい、美味しい」


「初めて食べたわ。面白いお菓子ねー」


「ありがとうございます。オーナーが、いろいろアレンジできると言ってました。そちらのフルーツソースをかけていただいても、面白いかもしれません」


「フルーツソースはもうないわぁ。アイスをこれですくって食べるのも面白いかしら?」


「はい。ただ、割れやすいお菓子ですので、お気をつけくださいね」


 カフェ店員は、うまく接客しているみたい。すぐにポテチが割れるから、逆にそれが楽しいのかな? ポテチを割らないでアイスをすくう競争をしているテーブルもある。


 その様子を見て、次々とポテチは売れていった。銅貨1枚っていうのも、よかったのかな。買わなきゃ損だと感じるお客さんもいるみたい。


 そして、窓際の女性4人組も、ポテチを食べ始めたみたい。この人達は、そのままプレーンで食べている。



「オーナー、ポテトチップスのおかわりの注文が入ってるんですが……」


「あー、オットーさんが持っていっちゃったのよね。今日は、お試しなので、売り切れと言っておいてください」


「えっ? なんなら俺、じゃがいも買いに行ってきますけど?」


「ふふっ、今日は売り切れよ。もう少し食べたいという印象を持ってもらえたら、作戦成功ね」


「なるほど。また、すぐに来たくなりますもんね。かしこまりました」


 カフェ店員は、売り切れを伝えに行った。案の定、お客さんは、もうちょっと食べたかった〜って言ってる。


 ふふっ。ポテチって食べ始めると、なかなか止まらないのよね〜。しばらくは、ワゴン販売だけにしようかな。



 さぁて、そろそろ朝ごはん食べようかな。私は食堂の厨房へ、お腹減ったと言いにいった。


「あっ、アニスさん、忘れてました。少しお待ちください」


 オットーさんは、ガーリックバターの香りをさせながら、私のご飯を作り始めた。



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