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57、属性のない転生者以外はザコなの?

「貴様、何を言っている!?」


 突然、扉の近くにいた人が怒鳴った。この人も鮮やかな青い髪をしている。


 身体から青い光を放って私を睨んでいる人が、魔王ね。ゆらゆらと揺れて綺麗な色だけど、なぜ光ってるのかな? やっぱ、怒ってる?


「おまえ、何を言っているか、わかっているのか?」


「貴方が、魔王ジャクさん?」


「いかにも。おまえは何者だ? 悪魔族か? なぜ、強い魅了にも反応しない?」


 あー、この青い光は、魅了の光なのね。怒ってたわけじゃないんだ。よかった〜。怒りでメラメラしてるのかと思ったよ。


「悪魔族ではないと思うけど、分類はよくわかんないです。魅了って、この綺麗な青い光のことですかー?」


「おまえ……最近街に来た転生者か」


 私は、コクリと頷いた。この流れで、どうして転生者が出てくるの? それに周りの人達が急に警戒してる。


「もう三日間は過ぎたはずだが? まだやっているのか」


「うん? 何をですか?」


「しらばっくれるなよ、属性のない転生者! 魅了が効かないのは、悪魔系の魔族の力を奪ったのだろう?」


「あー、それなら、私じゃないよ。属性のない転生者は、二人とも男だよ」


「なに? 二人いるのか。どうりで報告が多すぎると思ったが……なるほどな」


 魔王はなんだか難しい顔をしていた。何か考えごと?


「どうしてその話になったのかわかんないけど、そんなことより、羽根くださいな」


 えー、また、めちゃくちゃ睨まれた。いいじゃない、2〜3本くらい。


「繰り返すが、おまえ、何を言っているのかわかっているのか? 属性のない転生者でないなら、ザコばかりだろ。そんな奴が、俺の羽根に触れられるわけがないだろ」


 ザコばかり? あー、あの二人が転生者みんなから力を奪っちゃったのかな?


「大丈夫だよ。魔法袋があるもの」


「おまえ、何に使うのだ?」


「ん? もらってきなさいって言われたの。私が使うわけじゃないよ」


 すると、魔王は大きなため息をついた。


「おまえ、頭弱そうだな。騙されているぞ。その首につけているのは魔道具か。それで素性を隠し、魅了も封じたか。いや待て、俺の魅了を封じる? そんな魔道具は聞いたことがない。おまえ、すでに何者かに操られているのか」


 何? ごにょごにょ言ってるけど意味わかんない。私は無視した。


「2〜3本くらいでいいの」


「おまえ、俺の話を聞いていたか?」


「よくわかんないもん。面倒なことは嫌いなの」


 また魔王は、大きなため息をついた。何よ。


「おまえなー。種族は? 仕事がないなら配下にしてやってもいい。俺の元にいれば教育してやる。そんな妙な依頼をする者とは縁を切れ」


「ん? 仕事はあるよ。ウチは食堂だもん。縁を切る? それはたぶん無理だと思うよ」


「ふん、生産職か。何が作れる?」


「生産職じゃないけど、アイスとかケーキとか作ってるよ」


 私がそう言うと、魔王は頭を抱えた。何?


「おまえなー、それを生産職だというんだ。魔族でもないし武器屋でもないのか。それならいらん。配下の話はなしだ」


 なんだか、コロコロ気の変わる人ねー。それに、頻繁に髪を触っている。ちょっとナルシストっぽい。


 もしかして、男に見えるけど女性だったりして。女心は変わりやすいもの。




「チッ……ちょっと行ってくる。コイツは追い返しておけ」


「かしこまりました」


 そう言うと、魔王はその場からスッと消えた。何よ、逃げたの?


 どこに行ったのか、たどろうとしたけど見えなかった。あ、そっか、ここは結界が張ってあるんだっけ。


 私は近くにいた青い髪の人に尋ねた。


「魔王ジャクさんは、どこに行ったんですかぁ?」


「お嬢ちゃん、どこから来たか知らないが、南側の草原には近寄らない方がいい。気をつけて帰りなさい」


「もしかして、勇者と魔族のケンカ?」


「あぁ、そうだよ。巻き込まれると死ぬぞ」


「大変! 魔王さんは、そこに行ったのね」


 扉を開けられた。帰れってことね。でも、いちいち洞穴の入り口まで戻ってらんないわ。


 私は南側の草原を見ようと頑張った。いろいろな邪魔なものがあるけど、一応見える。うわっ、すんごいたくさんの人がいる。


「じゃ、私行くから。お邪魔しました〜」


 私は営業スマイルを浮かべ、いま見つけた場所へ転移した。転移も、なんだか邪魔が入ったけど、頑張ったらなんとかできた。この邪魔なものが結界なのかな?




 私が転移した場所は、行きたいと思った場所とは違った。少しズレちゃった。邪魔な何かのせいね。この場所からだと、状況が全然見えないよ。


 私は、すぐ近くの高い木の上にワープした。うん、ここならよく見えるね。


 いきなり状況もつかまずに飛び込んじゃダメ。アブサンに迷惑になるかもしれないもの。


 私は2〜3人でケンカしてるのかと思ってだけど、全然違った。これって、戦乱じゃない。数えてないけど200人以上いるかも。


 左の方にいるのが魔族かな。でも鳥系ではなさそう。魔王ジャクの配下なら、鳥系かと思ってたけど、モフモフな尻尾がある。


 それから、沼地の方にいるのが、騎士学校の人達かな? みんな同じ制服を着ている。アブサンは……あ、居た。誰かと話してる。騎士学校の人達は、様子見をしてるみたい。


 ということは、右の方にいるのが勇者かな? こっちは人数は少ない。といっても、15人くらいかな。


 人数的には、魔族が圧倒的に有利に見えるけど、勇者側から、ガンガン魔法が撃ち込まれてる。そして、そのたびに数十人単位で吹き飛ばされてる。


 なんだか、これって、勇者が魔族をいじめてるんじゃないの? でも、ケンカの原因がわからないから、勇者がひどいとも言えない。


 魔王ジャクはどこにいるんだろ? ざっと眺めて捜しだけど見つからない。隠れてるのかな? 頑張って捜してるけど、わかんない。



 わっ! あれはひどい。勇者側がものすごい炎の雨を魔族側に降らせた。あっ、騎士学校の人達が動いた。やめろと仲裁をしてるようにみえる。


 げっ……嘘っ。勇者側が、騎士学校の人達の方へ、魔法弾を撃ち込んだよ。騎士学校の人達は盾で防いだけど、流れ弾が、沼地に降り注いだ。


 うわぁ、沼地がボッコボコだよ。生き物が棲んでたら爆破されてる感じ。ちょっと、勇者側ひどい!


 えっ? 沼地から強い魔力……これはマズイ!



 私は、騎士学校の学生達がいる前にワープした。


「みんな、伏せて!」


「あれ? アニス?」


 私は、騎士学校の学生と沼地の間に、おっきな防御盾を魔法で作った。


 ジュワッ!


 その瞬間、放たれた魔力で盾が溶けた。


「なっ!? なんだと?」



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