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49、やみつき気まぐれパフェ

「紅茶のおかわりは、いかがですかぁ?」


「いただくわ」


 最後のテーブルは、女性二人組だった。この人達は、食堂で見たことがある。


「カフェコーナーなんて、不要じゃないかと思ったけど、同じ店内なのに椅子も雰囲気も別世界ね」


「紅茶の味も違うのよね。でも値段は、随分と高いわね」


 あー、これはクレームかも。店を分ける方がよかったのかもしれない。まぁ、嫌なら来なければいいだけよ。


「はい、こちらは、食堂とは違った雰囲気になっております。紅茶も、店長が食堂とは違う種類を仕入れてるみたいです。お好きな方を選んでいただければと思います」


 私は営業スマイルをはりつけたまま、嫌なら来るなよという意味を込めて嫌味を言っておいた。


「そうね、気分に応じて選ぶのもいいわね」


「でも、こっちにいると優越感よね。お嬢様って呼ばれるのも、なんだか優越感だわ」


 あれ? 嫌なんじゃないの? 急に気が変わった? 


 私は、軽く会釈をして厨房へと戻った。




「アニスさん、やみつき気まぐれパフェの注文が二つ入りました」


「すぐに用意するね。パフェ作りは、アイスクリームのショーケース前でやろうかな。ソフトクリームの機械、ちょっと移動するね」


「はい」


 私は、アイスクリームのショーケースのすぐ近くに、ソフトクリームの機械を移動させた。魔法でパッと入れ替えができるって、ほんと魔法って便利よね。


 よし、これで、作業の動線はいい感じ。



 私は、カフェ店員が出してくれたパフェの器に、ザザッとコーンフレークを入れ、その上から、バニラアイスを入れた。これで底の部分はいいよね。


 そして風魔法でスライスしたイチゴを器に貼り付けるようにいれて、中にイチゴアイス、そして、サイコロ状に切ったレモンゼリーを少し入れてソフトクリーム。


 あとは、飾りつけだわ。桃、リンゴ、オレンジ、イチゴを飾った。そしてソフトクリームをうねうね。

 さらにオレンジの皮をクルクルしたリボンのように飾りつけた。うん、完璧な気まぐれっぷりだね。


 いやーん、生クリームがないじゃない!


 私は、慌てて生クリームをホイップした。闇をしっかりいれて、おいしくなーれ!


 生クリームを絞り袋に入れて、フルーツの隙間を埋めるように飾った。



「あれ? この木箱は、また届いたの?」


「はい、さっきアニスさんが紅茶を注ぎに回っているときに来られましたよ」


 中を見てみると、葡萄が入っていた。へぇ、いろいろな色の葡萄があるのね。


「あっ、これは皮ごと食べられる品種ですよ」


「そうなの?」


 私は、黄緑色の葡萄を、そのまま食べてみた。皮が柔らかいけど、少し酸味がある。フルーツ飴にしたら美味しいかも。


 私は、ポッキーを取り出して、そのチョコの先に葡萄を刺した。二つくらい刺す方がいいね。


 カフェ店員に、葡萄を刺す作業を頼み、その隙に水飴を作った。水をヒート魔法で温めながら闇をどんどん溶かしていくと、甘くとろりとした蜜のようになってきた。


 串刺し葡萄を水飴に潜らせ、氷魔法で冷やせば、うん、フルーツ飴みたいになったね。一つ試食してみた。わぁっ! これ、めちゃくちゃ美味しい!


 これを、三本、生クリームに突き刺した。


「お客さんには、この、ポッキーは手で掴んで食べてくださいって説明してね。チョコのついていない部分が持つとこだから」


「生クリームから引き抜く感じですか?」


「うん、葡萄の飴がついてると驚くでしょ」


「はい、わかりました」


 私は、飾りクッキーを数枚小皿に入れた。


「これを共同作業で、生クリームの上に適当に乗せてね。セリフはなんでもいいよ」


「は、は、はい!」


「小さなトングも人数分、持っていってね。もちろん、パフェスプーンも」


「わかりました」


「じゃあ、最後の仕上げはよろしくね」


「はい!」


 彼は緊張しながら、パフェをお客さんに出していた。共同作業の部分を他の店員もみんな見ている。こんなに見られたら余計にガチガチになるじゃない。


「最後の仕上げをご一緒にお願いできますか?」


「えっ? こんなにすっごい可愛いのに、まだ完成じゃないの?」


「はい、このクッキーを乗せて完成です。せーの、と掛け声をかけますから、ご一緒にお願いします」


「ふふ、わかったよ」


「せーの、はいっ、お嬢様のようなかわいいパフェになりました」


「やーだ〜、もうっ、ふふっ」


「あっ、こちらのポッキーは、この部分を手で持ってお召し上がりください。紅茶のおかわりも、いつでもお声掛けください」


「はーい、ふふっ」


 彼は、あやうくポッキーの説明を忘れそうになっていたが、なんとか大丈夫だったみたい。戻ってきたら、すごい汗をかいている。


「みんなが見るから、頭が真っ白になりました」


「でも、お客さん、いい笑顔だよ。頑張ったねー」


「はい!」



 パフェを注文したのは、三人組のうちの二人だったが、結局、三人で分けて食べているみたい。値段が高いから、その作戦って賢いね。


 すっごい盛り上がって、キャッキャと騒いでいるのを見て、他の人達も何か注文しようと考え始めたみたい。



 別のテーブルからも、パフェの注文が入った。やはり、一番上に書いているからか、やみつき気まぐれパフェばかりだ。


 フルーツのカットや、ポッキーに葡萄を刺す作業は店員さんがやってくれた。パフェを作るのも、適当でいいのにな。

 気まぐれっぷりを発揮して、注文ごとにオレンジの皮の飾りはレモンの皮に変えたりしてみたが、中身は同じにしておいた。別の日は、中身も変えよう。


「手の空いている人は、紅茶のおかわりを注ぎに回ってね」


「あ、僕、行きます」


 みんな、だんだん笑顔が自然になってきた。うん、いい感じね。




 パフェが落ち着いたところで、私はケーキを作り始めた。と言っても、ミルクレープ。これなら魔法ですぐにできる。


 クレープは、小麦粉に牛乳、卵を入れて、闇を少し入れながら生地を混ぜ混ぜ。そして、鉄板に生地を流して丸くして焼き上げるだけ。薄く丸く伸ばすのは風魔法、そしてヒート魔法で一瞬で焼き上がる。


 氷魔法で焼き上げたクレープを冷やし、あとはミルフィーユ状にするだけ。クレープ、生クリーム、クレープ、生クリームと重ねていった。


 そして、風魔法を使って、12分割にカットして完成。断面を一応確認したけど、ちゃんとミルクレープになっていた。一切れを味見。うん、あまり甘くなくてさっぱりしている。


 残りをケーキの大皿に入れて、ショーケースに入れながら、チリンチリンと鈴を鳴らした。


「ミルクレープができました」



すみません。ちょっと体調不良で更新間隔が空いてしまいました。ごめんなさい。


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