46、カフェ開店準備、メニューリスト作成
コンコン!
「アニスちゃん、起きてください!」
コンコン!
「カフェの開店できなくなりますよ。アニスちゃん!」
うーん、オルガくんの声が聞こえるような気がするけど……。きっと夢ね。うん、まだ眠いもの。
ドンドン!
「アニス、いつまで寝てるんだ! 入るぞ」
あれ? アブサンが起こしにくる夢? 騙されないんだからね。まだ真夜中だもん。
バサッと、掛け布団がひっぺがされた。リアルな夢ね。子供の頃の横暴なアブサンみたい。スゥスゥ〜。い、痛っ!
「こら! アニス、開店準備はしないのかよ。俺が来たってことは午後だぜ? わかってんのか」
「鼻が、痛いよ! なんでアブ兄が起こしにくる夢なのに、鼻が痛いのよ」
「おまえ、夢じゃねーぞ。まだ寝ぼけてんのか。キスするぞ」
(えっ? か、き、キス?)
私はパチリと目を開けた。鼻が痛い。アブサンが私の鼻をつまんでいる。ど、どういうこと? な、なぜキスするとか言ってんの。
「あはは、やっと起きたか。さすがに鼻をつままれて、口もふさがれたら、窒息すると気付いたか」
「なっ!? アブ兄〜っ!!」
「早く着替えろよ。そんなに顔真っ赤にして怒るなよ、あはは」
バタンと扉が閉まった。顔が熱い。心臓がバクバクする。な、何? 今の嵐のような出来事。
ふと時計を見ると12時半。な〜んだ、まだ、ランチ時じゃない。ん? 12時半? カフェのオープンは私、何時って言ったっけ。
頭がうまく働かない。とりあえずシャワーしよう。
私は、シャワーを浴びてながら、やっと目が覚めて、いろいろと思い出してきた。
昨夜は、あのあと、大量のバニラアイスと、飾りクッキーを作ったんだっけ。ソフトクリームの機械も満タンにしたよね。
カフェ開店時のサービスで、バニラアイスを無料で出そうということに決めたんだ。
アイスって、味にかなりの差があるから、食べたことないと注文しないみたい。アイスが不味いかもしれないと思われたら、パフェも注文しないもんね。
そういえば、飾りクッキーは作業台に放置してたっけ。冷まそうと広げていて、そのまま忘れてた。湿気でふにゃふにゃになってたらどうしよう。ヒート魔法かければ、サクッとするかな?
(ハッ! 大変!)
う〜、忘れてた! クッキー&クリームを作ってないじゃない。あんなに必死にココアパウダーを手に入れたのに。
カフェのオープンって、確か……2時! マズイよ、ヤバイ、まずい。のんびりシャワーしてる場合じゃなかった〜。
私は、慌てて髪をドライ魔法で乾かし、白が多めのゴスロリ服を着て、エプロンをつけた。
そして、食堂へと、階段を駆け下りた。
「うるせーぞ、アニス。ドタバタするなよ」
「だって、時間がないんだもの。クッキー&クリームを作ってないの」
「アニスさん、昨夜の大量のクッキーなら、小分けにして魔法袋に入れてありますよ。魔法袋なら時間が止まっているので、昨夜のサクサクな状態を維持できますから」
「オットーさん、ありがとう。でも違うの。ココアクッキーを入れたアイスクリームを作るの」
「えっ? アイスクリームのショーケースは、もうスペースがありませんよ? 昨夜、アニスさんが、空いていた円筒にすべてバニラアイスを作ったじゃないですか」
そこで、私は大失敗に気づいた。そう、昨夜は確かに全部埋めなきゃと思ってた。だから店員さんが慌てて牛乳や卵を買いに行ったんだった。
「あぅ、やらかした〜」
あんなに、リンにも慌てさせたのに、ココアパウダーを使ってないとマズイわ。絶対にマズイ。
あっ、でも、食べ放題に行ったときに、『焼きそばできました〜』とか『唐揚げできました〜』って、チリンチリン鳴らされたらテンション上がったよね。
(うん、それにしよう)
「オットーさん、鐘あるかな? チリンチリンでも何でもいいんだけど」
「へ? 鐘ですか? 入り口のカランコロンではダメなんですか?」
オットーさんには通じてない。まぁ、そりゃそうよね。食べ放題みたいにしたいって言ってもわかんないよね。
あっ、なべとお玉でもいいか。いや、違う。シンバルみたいなものの方が……いや、それだと別の料理になる。
「オーナー、あの、鈴なら、すぐ近くの雑貨屋に売ってますけど?」
カフェバイトの一人が、ナイスなアイデアを出してくれた。うん、鈴でいいよ、うん。
「じゃあ、なるべく音が大きなものを買ってきてくれる? お金はオットーさんから……あ、うん、それでお願い」
「了解っす。いってきます」
オットーさんは、素早くお金を渡していた。さすがね。
「アニスさん、慌てなくても準備は大丈夫ですよ。メニューリストの確認をお願いします。値段はカフェバイトの人達と相談して一応決めています」
そう言って、オットーさんは、大きなメニューリストを持ってきた。食堂にあるものと違って、オシャレね。これを店内に貼るのね。
紅茶、コーヒー、オレンジジュース……銅貨10枚
アイスクリーム……銅貨10枚
ソフトクリーム……銅貨10枚
フルーツパフェ……銅貨20枚
うーん、メニューが少ないし、それに高い。全然ワクワクしないわ。これではダメよ。
「高くない?」
「これくらいの方がいいということになりました」
「でも、ワクワクしないのよね。オシャレなのに、これだけしか書いてないのは、わかりにくいもの。変えていい?」
「はい、もちろん」
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【飲み物】銅貨8枚
●紅茶
●コーヒー
●オレンジジュース
●フルーツソーダ水
※紅茶はおかわり自由です。
※ソーダ水は日替わりでフルーツが変わります。
【トッピング等】銅貨2枚
●ミルク
●スイートミルク
●スライスレモン
●ソフトクリーム
※紅茶、コーヒー、ソーダ水にどうぞ。
【パフェ】銅貨20枚
●やみつき気まぐれパフェ
●フルーツたっぷりパフェ
●キラキラゼリーパフェ
※お好みのリクエスト承ります。
【アイスクリーム】
●シングル……お好きなアイス1つ、銅貨5枚
●ダブル……お好きなアイス2つ、銅貨9枚
●トリプル……お好きなアイス3つ、銅貨12枚
※ショーケースからお選びください。
【ケーキ】1ピース銅貨10枚
※ショーケースからお選びください。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
できた! うん、カフェっぽい。
まだ、軽食メニューはないけど、とりあえずこのくらいでいいかな。値段は高いけど、その分は飾りをつければいいよね。
ソーダ水と、ゼリーを作らなきゃ。勢いでメニューに書いてしまった。あっ、ケーキは、焼けたら鈴を鳴らせばいいよね。うふっ。




