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4、敵意を隠さない大天使

 私は、思わず、アブサンの顔を見た。大天使様に人質だなんて言われて怖がってるかと思ったら、違った。彼は、ニヤッと笑っている。


 そして、私の視線が向いていることに気づくと、彼は親指を立てた。チャラい。でも私は、少しホッとした。アブサンが怖がってなくてよかった。これならきっと、私の種族を聞いても怖がらないよね、たぶん。


(私は、暗黒超神の下僕だっけ?)


 一応、私は神だと言われたっけ。下級神とか? そういえば、種類は聞いてない。死神とかだったらどうしよう。さすがにアブサンも怖がるかな。



 コホンと、大天使様は咳払いをして、話を続けた。



「あなた達の潜在能力は、私には解放できません。あわよくば、今の無害なままの人間として、生涯を終えていただきたいものです」


 どよめきが起こった。なんだか、大天使様の敵意を感じる。大天使様って、神々の調整役でしょ? なぜ、転生者にこんなことを言うのかな。この中には神もいるんだからね。まぁ、私の場合は、何の神かはわからないけど。


「そろそろ迎えが来ていることでしょう。軟禁期間中は、この中央都市ガラムから外へ出ることはできません。もし、勝手に魔導障壁を越えるなら、今あなた達のそばにいる、同行者の命はないものと思いなさい」


 大天使様は、残った人達をキッと睨み、冷たく言い放った。この態度って、どうなの? いくら大天使様だからって、ちょっとひどくない?


 さすがにこの発言には、皆の表情は凍りついた。シーンと静まり返っている。その様子に大天使様は、嘲笑うような嫌味な笑みを浮かべた。そして、スゥ〜と、上へと消えていった。


 バタン


 大天使様が消えると、すべての扉が一斉に開いた。出て行けということね。




「アニス、大丈夫か? ビビって漏らすんじゃねーぞ」


「ちょ、アブ兄! 私は子供じゃないんだからねっ」


「あはは、泣きそうな顔より怒ってる方がいいぜ」


 そう言って彼は、また親指を立てた。ほんとチャラいんだから。でも、心配して、元気づけようとしてくれてるのはわかった。。人質だとか命はないとか言われたアブサンの方が、私より怖いはずなのに。


「迎えが来てるって言ってたっけ」


「うん、そう聞こえた」


「とりあえず、みんな出て行くみたいだから、ここから出る方がいいよな。大天使聖堂には、魔族は入るのを嫌がるみたいだし」


「そうなんだ。うん? アブ兄、私が魔族だと思ってる?」


「魔族か勇者かは、これから決まるんだろ?」


「そうなの?」


「おまえ、転生のときに説明を受けたんじゃねーのか? あ、まだ思い出してないのか。あなた達の潜在能力は解放できませ〜んって言ってたもんな」


「アブ兄、その言い方ってマズイよ。大天使聖堂の中で……」


「あはは、誰も聞いちゃいねーよ。で、おまえのお迎えはどれだ?」



 私は、キョロキョロとあちこちを見回した。確かにたくさんの迎えが来ている。一人の転生者につき2〜3人かな? いや、もっとたくさん来てる人もいる。


「わかんないよ。名前を呼ばれるのかな? あ、でも、転生後の名前や姿って、知ってるのかな」


 転生前の、ガラガラ抽選をした私は、20歳で黒髪の少し地味めな日本人だった。でも今は、髪は茶髪だし、顔も目鼻立ちがはっきりしているから全然印象が違うと思う。それに年齢もまだ15歳だし。


「でも、みんな迎えがわかってるみたいだぜ? 迎えが多いのは魔王かな?」


 アブサンが言うように、先に出て行った人達は、迎えの人と無事に会えたみたい。でも、転生のときに私が会ったのは、あのゴシック風のドレスを着た冷たいイメージの暗黒超神だけだったからなぁ。


 迎えが多いとアブサンが言ってた人は、十人以上の人に囲まれている。うん、魔王なのかもしれないね。くじを3回引いた人が、私の他にいても不思議じゃない。




「アニスちゃんですかー?」


「はい。えーっと」


「おっ、アニスにもお迎えがいて、よかったな」


 私の目の前に現れたのは、5〜6歳に見える男の子だった。私の迎えって子供?


 でも、この子供は、アブサンをギロッと睨んだ。何? 怖いよ、この子。


「あなたが、私の迎え?」


「うん、父ちゃんが行ってこいって言うから。すんごい待った。これなら、父ちゃんでも間に合った」


「そっか。お迎えありがとう」


「うん。で、コイツがアニスちゃんの下僕?」


「アブサンは、私の幼馴染だよ。隣の家に住んでたの。いつも勉強や剣術を教えてもらってたんだよ」


「でも、同行者でしょ。さっさと殺せば、アニスちゃんは自由になれるよ」


「ちょ、殺さないでよ? そんなことしたら許さないよっ」


 私の声が大きくなってしまったのかもしれない。男の子は、ヒッと顔を引きつらせ、そしてその場に土下座した。


「アニス様、申し訳ありません。許してください。アニス様の同行者は殺しません。アニス様には二度と逆らいません。お許しください、うっうっぐっ」


 あまりの変貌ぶりに、私は驚いた。泣いてる?


「おーい、アニス、ちびっ子を泣かしてどーすんだよ。おい、おまえ、泣くなよ、男の子だろ?」


 アブサンは、男の子の頭を撫でた。すると、ちびっ子は、その手をはらった。


「気安く触れるな! 人間っ」


 この子、何者? 人間じゃないことはわかったけど。


「あはは、元気だな。おまえ」


 私はこの状況に驚いていたけど、アブサンは平気な顔をしている。怖くないの?


「おまえ呼ばわりするな!」


「ねぇ、あなたの名前は?」


「はっ、はい、あの、えっと……」


「うん? 名前を忘れちゃった?」


「いえ! でも、名前はその……まだ、生まれてから誰にも教えたことがなくて……」


「そう、じゃあ、いいわ」


 私がそう答えると、ちびっ子は、また泣きそうになった。


「うん? なぜ泣きそうな顔をしているの?」


 私は、思わずちびっ子の頭を撫でた。


 しまった。また気安く触れるなと怒鳴られる……かと思ったが、彼の反応は真逆だった。パァ〜ッと明るい表情になった。


「アニス様、ぼくは、暗黒神オルガです。自己転生をしたばかりで、見た目や感覚は子供ですが、能力は変わりません」


「ええ〜っ? ちびっ子が暗黒神?」


 アブサンは、思わず叫んだ。オルガくんは、ギロッと睨んだが、何も言わなかった。


「ぼくは、アニス様に忠誠を誓いますっ」


「どういうこと?」



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