39、カフェ店員の面接
コンコン!
「アニスちゃん、もう昼ですよー。面接が来てますよ〜」
うん? オルガくんの声がする。面接? 何よ、面接って〜。まだ眠いんだから〜。
私は無視しようと決め、再び目を閉じた。
コンコン! コンコン!
「おい、アニス、いつまで寝てるんだよ。入るぞ!」
ガチャリと扉が開く音がした。そして、ガバッと掛け布団をひっぺがされ、鼻をつままれた。痛いっ、こんな凶暴なことをするのは……。
(ハッ! アブサンだ)
「ちょ、痛いってばー。もうっ! どうして、いっつも、アブ兄は凶暴なのよーっ! へ? 何で?」
ベッドの上に座っているアブサンを見て、私は顔が熱くなった。ちょっと、これってどういう状況?
「何で? じゃねーだろ。面接に来た人をいつまで待たせるんだ? おまえ、この街に来てから、ますます朝が弱くなったんじゃねーの?」
「えっ、あー、バイトの面接……なんでアブ兄がここにいるの?」
「バイトに来たら、何回もこの子が起こしに行っても、おまえが起きないって聞いたからさ。鼻をつまめば起きるって教えたんだけど、できないっていうから」
扉の所には、オルガくんがいた。なぜかオロオロしている。私が怒ってると思ったのかな。
「そんな凶暴なことをオルガくんに教えないでよーっ」
「嫌ならさっさと自分で起きろよ。髪ぐちゃぐちゃだぜ。ちゃんと整えて降りてこい。二度寝するなよ?」
私はパッと頭を触った。確かに、髪はぐちゃぐちゃになってて……それをアブサンに見られた!?
アブサンは、私が慌てる様子を見て、ニカッと笑った。そして、部屋から出て扉を閉めた。
(あー、もう最悪……)
アブサンは、私のことを手のかかる隣の家の子供だとしか思ってない。私ばかりが意識して、顔が熱くなって、でもアブサンは私の気持ちに気づきもしない。
私は、シャワーを浴びながら、湧き上がる怒りに震え……そして、フッと我に返った。
すべては、私がいけないんだ。今も、彼が起こしに来てもなかなか起きれなかったし、子供のように反論した。
(うぅ〜、自己嫌悪だよ、はぁ)
髪を風魔法で乾かし、茶色い髪を手ぐしで整え、ヒート魔法を使って巻き髪にした。
服は、黒のゴスロリにしよう。水色のロリータ服にしようと思ってたけど、そんな気分にはなれない。
私は、どんよりした気分で、店に降りていった。
「アニスさん、おはようございます。昨日、依頼したギルドのカフェ店員募集で、面接に来られてますよ」
オットーさんは、いつもどおりね。そうね、私も気分をきりかえなきゃ。せっかく面接に来てくれたんだもんね。
スゥハァスゥハァ
うん、大丈夫。気分を上げていこう。明日からカフェコーナーの営業を始めるんだから、準備しなきゃ。
「わかったよ。オットーさんも一緒に面接してくれる?」
「はい、かしこまりました」
「では、カフェのスペースで今、皆さんにはランチを食べてもらっていますから、アニスさんも一緒に召し上がりますか?」
「私は朝ごはんだけどね。うん、そうする」
あれ? いまオットーさんは、皆さんって言ったよね? 面接は一人じゃないの?
私は厨房から、カフェのスペースを覗いてみた。カフェコーナーは区別のために、テーブルクロスをしている。
結構な人がいるわね。あ、そっか、今はランチ時だから、カフェコーナーの方も、食堂のランチ客がいるのね。
私は、オットーさんからランチプレートを受け取り、カフェコーナーへと歩いていった。空いているテーブルは1つしかない。私は空きテーブルにランチプレートを置いた。
「いただきます」
小さな声で呟いて、私は朝ごはんを食べ始めた。この場所からは、カフェコーナーが見渡せる。どの人が面接なんだろう?
なんだか、やたらと見られるような気もするけど、ま、いっか。しかし、眠いなー。あと10分眠ればスッキリしたかもしれないのに。
食堂の方は、半分以上の席が空いている。時計を見ると、1時を回っていた。でも、今、新たに来るお客さんもいる。
食べ終わる頃に、オットーさんが紅茶を持ってきた。
「あれ? アニスさん、面接せずに食べてるだけですか?」
「うん? だってどの人が面接に来たのかわかんないもん」
「頭の中を少し覗けば、わかりますよね?」
「あー、そうかも。ねぇ、食堂のお客さん増えたんじゃない? メニュー変えた?」
「メニューは変えてないですよ。そうですね、アニスさんが来られる前と比べると、売上は三倍以上になってますね」
「あ〜、百人連れてきたおじさんの意地悪のせいね」
「それだけじゃないですよ。外装が変わったからか、ランチ時以外にも、お客さんが来られるようになりましたからね」
「ふぅん、そっかー」
私が紅茶を飲んでいると、オットーさんが、何か手招きをしている。すると、カフェコーナーにいた全員が一斉に立ち上がった。ひとつのテーブルに二人座ってたりしたから、15人以上いるかも。
「皆さん、当店のオーナー、アニスさんです。これから面接を始めさせてもらいます」
「えっ? オットーさん、こんなにたくさんの応募があったの?」
「はい、もっといましたけど、客商売に合わない礼儀のなってない人は、私の独断でお引き取りいただきました。これが、最終選考ですよ」
「そんなに?」
「はい、70人くらいでしょうか」
「どうして!? バイト代、安いよ?」
「そのあたりは、皆さんに尋ねてみてください」
私が、彼らの方を向くと、みな一気に緊張したようだ。オットーさんに緊張するならわかるけど、私は15歳だよ?
「じゃあ、皆さんに質問です。なぜ、この店のカフェ店員募集に応募したんですか?」
この人数をしゃべらせるのは時間がかかる。でも声を聞くことは必要かも。
彼らは、順番に動機を話していった。私はそれぞれの顔を見て声を聞いているけど、話は聞いていない。頭の中を覗く方が圧倒的に情報が多いもの。
みんな、昨日の私のギルドミッションのことを知っていた。動機はいろいろね。素直に働きたい人もいるけど、私との繋がりが欲しい人の方が多い。
打算的なのは悪いことじゃない。
「お客さんへの挨拶、きちんとしてもらうけど、できるかな?」
「アニスさん、メイドカフェ風の挨拶の話はしています」
私は、軽く頷いた。
「ここは、お客さんに癒しを与える場所にしたいの。だから、貴方達には、個性的な接客してもらいたい。家族のように、恋人のように、執事のように、憧れのアイドルのように……自分に合ったキャラを演じてもらいたいの」




