25、ソフトクリームの機械を作ってミニパフェを試作する
「わっ! アブ兄、どうしたの? 何してんの?」
そんな食堂のエプロンをしてると、なんだか照れる。別に深い意味はないんだけど……。
「ちょ、オーナーさん、それはないだろ。来た初日にクビとか言うなよ?」
「あー、バイトだ。そういえば、そうだった」
「アニス、相変わらずだな。ははっ、まぁ、変わってなくて安心したぜ」
アブサンは、ニッと笑って、ウインクをして、親指を立てた。ほんと、チャラいんだから。
「私はいつも元気だよ。アブ兄は、学校どうだった?」
「あー、騎士学校な……今朝の入学式に、二人来なくてさ。殺されたんじゃないかと騒ぎになってる」
「うん? 寝坊とかじゃないの?」
「入学式に寝坊するかよ。寮からも消えてるんだ」
「へぇ、逃亡しちゃったのかな」
「お気楽だな、おまえ。あはは」
アブサンは、お客さんに呼ばれて、接客に向かった。女性客二人組だった。なんだか親しそう。あー、見えちゃうんだ、騎士学校の友達なのね。
私は少しイラッとしたけど、でもちょっと待って。アブサンが、わざわざお客さんを連れてきてくれたのかもしれない。うん、そうだよ、きっと。
アブサンがいることで、騎士学校の学生が来るなら、なおさら、かわいいカフェスペースを作らなきゃね。
私は、買ってきた椅子のセットを終えた。不要な椅子は店員さんが片付けてくれていた。
一応、カフェスペースを区切るために、テーブルを少し動かし、通路を作った。
「こっちの席は何?」
ふいに、後ろから声をかけられた。アブサンの騎士学校の友達ね。私は、営業スマイルをはりつけて振り返った。
「こちらは、カフェコーナーを新設しようと考えております。椅子も座り心地の良いものを選んできました」
「へぇ、じゃあ、食後のコーヒーは、こっちで飲んでもいい?」
「はい、もちろんでございます。まだ、出来ていないのですが、近いうちに、カフェコーナー限定のメニューもご用意します」
「なんだか楽しみね。それに、店員さんが可愛いわ」
「えっ? 私ですか?」
そう聞き返すと、うんうんと二人は頷いている。なんだ、いい人達じゃない。うふふ、やっぱロリータ系は最強ね。
「ありがとうございます。照れますー。お席はお好きな所へどうぞ」
そう言うと、彼女達は、窓際の席に座った。そして、椅子が座り心地がいいって言ってる。盗み聞きをするつもりじゃないけど、聞こえちゃうんだから仕方ないよね。
アブサンが、彼女達に、コーヒーを持っていった。
やっぱ、カフェコーナーの差別化をしようと思ったら、メイドカフェだけど、女性客に長居して愚痴ってもらうには、地下アイドルみたいな男子店員かな。
オルガくんの背を高くして、カフェコーナーで接客してもらおうと思ってたけど、タイプの違う人もいる方がいいかもしれない。
でも、アブサンは、どちらかといえば、食堂の方が似合うかな。食堂が暇な時間は、カフェコーナーを手伝ってもらおっか。
私は、厨房で、スイーツの試作品作りを始めた。店には、何人かの女性客がいる。まずは女性客をつかまなきゃね。
そういえば、この世界には、アイスクリームはあるけど、ソフトクリームはない。だから、パフェもない。パフェの試作品を作ってみようかな。
でも、ソフトクリームの機械がないよね。うーん。うん? もしかして、いけるかも。
私は、手に魔力を集めた。頭の中にはソフトクリームの機械。中がどうなってるかなんて知らない。
電化製品もあるけど、この世界の発電はすべて魔力を使う。だから、全く同じ機械じゃなくて、材料を入れて魔力を流せばソフトクリームができて……レバーを引けば、うねうねとクリームが出てくる感じにしたい。
頭の中でイメージが固まると、手に集まった魔力がパッと機械に変わった。うん、完璧ね。
厨房の作業台に、どーんと現れたソフトクリームの機械が幅をきかせている。この場所だと、ちょっと邪魔かな?
次は、バニラアイスの材料を揃えなきゃ。生クリーム、牛乳は、あるけど、バニラエッセンスみたいな香料や、ゼラチンみたいなものはない。魔法を使えばいいよね、うん。
私は、大きなボウルに牛乳をいれ、闇を入れながら混ぜ始めた。そして、生クリームもいれて混ぜ合わせた。ゼラチンっぽいものを魔法で投入、バニラエッセンスっぽいものも魔法ね。
少し味見をしてみると、まぁまぁな感じ。でも、これを冷やし固めると甘さをあまり感じないかもしれない。
「おいしくなーれ、おいしくなーれ」
私は闇を追加した。そして味見。うん、こんなもんかな?
混ぜ合わせた材料をソフトクリームの機械に流し入れた。そして、スイッチオン。魔力を流し込むと中で混ぜながら冷やされていった。そして、しばらくすると動きは止まった。完璧ね。
オットーさんや何人かの視線が突き刺さるのは無視して、適当なガラスの器を用意した。本当ならコップにしたいけど、長いスプーンがないんだもの。ミニパフェしか作れないな。
モーニング用のコーンフレークを出して、ザザッと器に入れた。そして、その上からソフトクリームをうねうねと、うず巻き状に入れ、トッピングは、冷蔵庫に入っていたチョコを、風魔法でハート型にカットして、ソフトクリームに乗せた。うん、かわいい!
私は作ったばかりの試作品を、女性客に持っていった。
「まだ試作品なんですが、よかったらどうぞ。あっ、サービスですので、お代はいただきません。感想を聞かせてもらえたら嬉しいです」
「わぁ、かわいい。ありがとう。アイスクリームね?」
「ソフトクリームです。下にコーンフレークを敷き詰めて、ミニパフェ風にしてみました」
「パフェ? 聞いたことないわ」
私は、営業スマイルを振りまきながら、女性客へと配っていった。アブサンの友達にも当然、持っていった。
「わっ、見たことないよー。やわらかいアイスクリーム?」
「はい、そうなんです。好評ならカフェコーナーのメニューにしたいと思ってます」
「美味しい! かわいいし、コーンフレークに溶けたアイスがしみてて、これもいいね。メニューにしてよ」
「うん、これ、美味しいよ。やみつきになりそう」
「ありがとうございます」
私は営業スマイルで、女性客に感想を聞いて回った。サービスだからか、みんな美味しいと言ってくれた。まぁまぁ、かな?




