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202、下の階層の異変

「でも、食堂に居てもアウグストさんなら、ここの制御はできるんでしょ?」


 私はオットーさんに尋ねた。すると、彼は、ちょっと困った顔をしちゃったわ。えっと?


「アニスさん、彼の性格上、そんな面倒なことは……」


「えっ? もしかして、このダンジョンって放置されてるの?」


「よほどのことがない限り、干渉されないだけですよ」


 それを放置って言うのよーっ!


 ちょっと待って。先行した騎士学校の学生と連絡が取れないって言ってたわよね? 大天使様は、暗黒竜神のすみかでは力が発揮できないのかもだけど、オットーさんでさえ交信できないの?


 だから、大天使様は深刻そうな顔をしていたのね。



「オットーさん、下の階層って、変なのはいないよね? アウグストさんが招いた魔族とかだよね?」


「いえ、彼の居住区やそこへの通路以外は、自由に開放しているみたいでして……」


「えっ? 無断で誰でも?」


「無断ではないようですよ。一応、ダンジョンの性質上、ここで倒されても、闇系の魔物ならすぐに復活できますし、チカラのある魔王であっても死ぬことはないので、使用料代わりに、宝箱やアイテムを設置させているようです」


「冒険者用の宝箱?」


「ええ。なので、一部の闇系の魔王は、このダンジョン内で小競り合いをしています」


 魔王の小競り合い? つまらない順位争いってことよね。もしかしたら、騎士学校の学生さん……アブサンは、それに巻き込まれているのかも。


 オットーさんは、困った顔をしている。私の考えは見えているはずなのに、返事に困ってるってこと?


 大天使様は、さっき、サクラを探していたみたいだった。あれは、魔王同士の争いなら、魔王ランク99位のサクラに、なんとかしてもらいたいということね。



 私は、下の階層をサーチした。10階層付近は少ないけど、20階層より下には、たくさんの人がいる。


 さらに下へとサーチしていくと、31階層、そして33階層に、強力なバリアがあることがわかった。さらにその下を見ようとしても見えない。ふぅん、33階層ね。


「オットーさん、33階層に魔王が居座ってる?」


「私にはわかりません。30階層あたりまでしか見えないのですよ」


「31階層と33階層に強いバリアがあるの。それより下が見えないわ」


 あれ? オットーさんが変な顔をした。何? それを誤魔化すように笑顔を張り付けてる。


「オットーさん、33階層に何か心当たりがあるの?」


「えっと、いえ、ただ、ゾロ目が好きな方の存在を思い出しまして……」


 そう言うと、オットーさんは自分の頭をトントンと叩いている。頭の中を覗けってことね。口に出したくない人物なのかな。


 えーっと、うん? 魔王ドーラ? 誰、それ?


 あー、サクラが魔王化した日に、食堂にいたお婆さんね。シトラスさんの知識によると、大昔からの魔王で、ずっと魔王ランク首位なのね。


 あっ、そうだ、思い出した。私のことを厄介だねと言ってたっけ。何かを企んでいるみたいだった。


 確か、黒魔導超神の転生者で、彼女自身は黒魔導神だったのよね。弱い超神が威張りくさってるのが嫌で、超神を乗っ取って、総神の爺ちゃんに、魔王に堕とされたんだっけ。


 弱い超神がムカつくのは、私もわかる。気が合うかもしれないわね。だけど、今は、それどころじゃないわ。強いバリアが揺らいでいる。戦闘中ってことよね。



「オットーさん、私、ちょっと行ってくるよ」


「アニスさん、魔王同士の争いへの理由なき介入は……」


「理由なら、適当に作るから大丈夫。じゃ、後はよろしくね」


「アニスさん、学生が巻き込まれていたら……あの……」


 大天使様は戸惑っている。私に依頼すると言うわけにはいかないのかも。太陽神のプライド? いや、太陽超神の命令かもね。つまんないことを言ってそう。


「大天使様、私は、私の同行者アブサンの様子を見に行きますから」


「そ、そうよね」


 大天使様は、明らかに顔色が悪い。葛藤しているのかしら? でも、まさか暗黒神に、助けてくれとは言えないわね。


「アブサンはもちろん、彼の友達が巻き込まれていたら、ついでに救出しますよ。友達が死んでしまうと、アブサンが悲しむから」


 私がそう言うと、大天使様はパッと顔を輝かせた。わかりやすいわね。でも、その顔は、すぐにいつもの表情に戻った。


「アニスさん、助かりますわ」


 でも、学生全員を助けるなんて、言ってないけどね。



 私は、33階層に転移した。




 ゴォォ〜ッ!


 あっつ〜い。


 私が転移した瞬間、私を狙って炎魔法が飛んできた。一瞬、転移場所を失敗したと思ったけど、違うみたい。私が移動しても、また同じ炎魔法が飛んできた。


 感じ悪〜い!


 私は、炎の玉を魔力で作った剣で斬り捨てた。ただの威嚇のつもりね。炎の玉は、簡単に消滅した。


 私は、この階層をサーチした。


 ん? これはどういう状況? 魔王は、たぶん四人。そして、ひとりの魔王の背後には、たくさんの人間がいる。


 その魔王が人間を守っている? あ、いや、逆ね。人質にとっているみたい。


 人質をサーチすると、騎士学校の学生ばかりね。アブサンもいる。みんなすごく弱っているかも。特に数人はボロボロね。なるほど、そういうことか〜。



「何だ? おまえは」


 魔王のひとりがそんなことを言っているけど、無視した。私に炎魔法をぶつけてきた魔王は……ドーラさんね。ふぅん、三人の魔王に同時に攻め込まれた感じ? ふふっ、楽しそうじゃない。


 ドーラさんは、私に気づいたみたいだけど、また、魔力を手に集めてる。私を四人目の敵だと思っているのかしら。


 ゴォォ〜


 同じ炎魔法に見せかけて、これは重力魔法ね。斬ると爆発しちゃいそう。私は氷魔法を使ってみた。あらら、一気に溶かされた。仕方ないから、避けようかな。


 ドガン!

 ガラガラガラ


 壁、ちょっと崩れてるかも。強力なバリアが揺れていたのは、これね。



 あっ、アブサンが私に気づいた。うーん、限界ね。今度はアブサンが、あの人質みたいにボコボコにされる。


 そう思った瞬間、やはり、彼らを人質にしている魔王の配下が動いた。そう、いきなり、アブサンに斬りかかってる。


 アブサンは、初撃をギリギリ避けたけど体勢を崩した。他の学生達が剣を抜いて、ガードしようとしてくれてる。無駄だわ。一瞬で、剣は灰になった。


「やめておきな! その坊やを傷つけたら、あんた達、死ぬよ」


 ドーラさんがそう言っても、人質にとっている魔王の配下達は無視している。私の方を見ながら、アブサンに向かって、剣を振り上げた。




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