表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
175/255

175、横流しの黒幕、そしてシルフの災難

「アニスちゃん、横流しの黒幕が、まさかの太陽超神だなんて……」


 大階段、地下二階のガラス扉の前で、リンちゃんが、ポツリと呟いた。


「光系の神の誰かだとは思ってたよ。闇系なら、人間じゃなくて魔族を使うでしょ。でも、超神って、みんな変わってるからさ〜。彼らのやることなんて、いちいち気にしてらんないよ」


「うん……」


 リンちゃんの表情は暗い。まぁ、そうよね。ダークなことを光の神が人間に強いるなんてね。太陽超神は、彼女が信じている大天使様の上位神だもの。ショックなんだろうな。


 でも超神って、つまらない領地争いとかしちゃってたり……強欲で傲慢で、はっきり言ってみんな性格悪いと思う。


 リンちゃんの上位神は、もしかしたらピュアな人なのかも。だから、彼女は、ダークな神々にショックなのね。


 シトラスさんみたいな人が上位神だと、性格が悪すぎて、憧れも尊敬も無縁なんだけどな。でも、ある意味、そこはシトラスさんの良さかもね。何も、取り繕わないんだもん。彼女は超神の中で、一番正直者かもしれない。


 まぁ、服やインテリアのセンスは悪くないもんね。それに、話さなければ美人だし。話さなければだけど。



 地下二階への扉を開くと、もうお客さんが入ってるみたい。あっ、テスト営業なのかも。レジとかの動作確認かしら。


 ガランとした空間だったのに、とても高級感のあるスーパーになってる。素敵ね〜。


 リンちゃんは、急にオーナーの顔になってる。


「アニスちゃん、じゃあ、店の仕上げをするわね」


「うん、リンちゃん、よろしくね〜」




 スーパーを横切って、建物内の階段の方へ進むと……うん? オルガくんが何か怒ってるみたい。


 私の姿を見つけて、小さな生き物がワッと寄ってきた。えっと、何? 虫? あ、じゃなくて、シルフかしら。


「アニスさんですよね? あの、大変ですぅ」


 かわいい妖精みたいね。あ、そっか、シルフって、風の妖精だっけ? ちっちゃくてかわいい〜。


「どうしたの? 皆さんは、シルフかしら?」


 そう尋ねると、みんな一斉に頷いてる。かわいい〜。


「あの、連絡をもらって準備に来たんですけど、魔物が襲撃してきたんです」


「ん? 魔物?」


「はい、どこからか突然現れて、私達の居場所を奪ってしまって」


 うん? えっと、何を言っているのかしら。地竜のこと? でも地竜は違うか、あれから地震はないし、何より、ドラゴンだもの。


 私達の居場所って何のことかしら? 席を奪われたの? でも、ここは地下二階だから、座席なんてないわよね。


「ああ〜! 魔物がぁ〜っ!」


 シルフ達は、パッと弾けるように散った。慌てて魔物から逃げてるのかしら。うーん、うん?




 パタパタと、こちらに駆け寄る足音が聞こえる。あれ? どうして、ここにいるの?


「あにすちゃん、みて〜。かわいいの」


 サクラは……シルフを捕まえているの? 頭から触手を伸ばしてシルフを頭に乗せている。髪飾りにしているつもりかしら。


「コラ! もう、ダメだって言ってるだろ」


 オルガくんが怒ってる。なるほど……。


 サクラには全く悪気はないみたい。スライムって、スライムを頭に乗せて積み上がってたりするから……その感覚なのかも。


「サクラ、シルフのお姉さん、嫌がってるよ? 頭に乗っけてもいいか、聞いてみた?」


 私がそう言うと、サクラはハッとした顔をしている。


「アニスちゃん、サクラが虫を捕まえるみたいにシルフを捕まえて遊んでいるんです」


「それをオルガくんが叱ってくれたんだね」


「はい、でもサクラは、ぼくの言うことなんて全然聞かないんです」


 ふふっ、彼氏の愚痴に聞こえるんだけど。


「サクラ、まずはその頭に乗せたお姉さんを解放しよっか。じゃないと、プセルさんに嫌われるよ」


「ぷせるちゃん……いやっ」


 サクラは、頭の触手をパッと放した。だけど、捕まっていたシルフは動かない。羽を傷つけたのかしら。


「オルガくん、シルフに使えるポーションある?」


「はい、あります。また、羽を傷つけたんですね……すぐに治療します」


「サクラ、シルフのお姉さんの羽が傷ついてるよ。ごめんなさいしなさい」


「あ、あぅ……」


「プセルさんに嫌われるよ」


「いやっ、ごめんなしゃいっ」


 わわっと、あぶない。サクラが勢いよく頭を下げるから、シルフが落ちちゃったじゃない。オルガくんが、とっさにキャッチしてる。すごい反射神経ね。


 そして、手のひらで、ポーションをかけている。うん、もう大丈夫そうね。


 他のシルフ達が、恐る恐る戻ってきた。スーパーの中を飛び回っているのも危険だもんね。


 そっか、シルフから見れば、サクラは魔物なのね。スライムだから、まぁ、そりゃそうよね。




「あら、どうしたの? シルフ達から救難信号が届いたんですけど?」


 プセルさんが、階段を降りてきた。彼女の姿を見て、サクラは一瞬嬉しそうな顔をしたけど、ハッとして、しょんぼりとうなだれている。


 シルフ達がプセルさんに寄っていったから、サクラは心配しているのね。


 というか、なぜ、サクラがここにいるのかしら。まぁ、時空スライムの魔王だから、太陽神の結界バリアがあっても転移して来られるんだろうけど。


「プセルさん、サクラがシルフのお姉さん達を捕まえて、髪飾りにしていたみたいなの。羽も傷つけてしまったみたい」


「えっ? 髪飾り?」


「ぷせるちゃん、ごめんなしゃい。のせていいか、きかなかったの。かわいいから、つかまえたの」


 サクラは、ポロポロと涙を流している。


 プセルさんは困った顔をして私を見た。うーん、とりあえず、シルフの誤解を解かなきゃね。


「シルフのお姉さん達、ごめんなさいね。この子は、時空スライムのサクラ。気に入ったものを頭に乗せたがる習性があるの。たぶん、頭に乗せて仲良くなりたいんだと思う」


「サクラちゃん、捕まえられるとシルフ達は、サクラちゃんを怖れるわ。もう、しない?」


「うぐぐぐ……うにゅん」


 サクラ、何を言っているかわかんないよ。でも、プセルさんは、優しい笑顔を向けた。


「じゃあ、約束ね」


「はい……ぐしゅん」


 本気泣きね。顔が涙と鼻水でぐしゃぐしゃだわ。


 プセルさんは、サーッと手を振るとハンカチを出して、サクラの鼻水を拭いてくれている。


「プセルさん、ありがとう。ごめんね。サクラには留守番をするように言ってたんだけど」


「ふふ、大丈夫よ。私がサクラちゃんに、お店に遊びにおいでって誘ったから」


「そうなの?」


「ええ、サクラちゃんが出入りしてくれると安心だもの」


 いやいや、シルフを捕まえる子だよ?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ