12、服を着替えて、大天使の信徒の店に行くよ〜
私は悩んでいた。かわいい、どれもかわいい。選べない、どう考えても選べないよ。
そうだ、わかった! これ、全部買えばいいんだ。
「これ、全部だといくらですか?」
「ええっ? これ全部ですか。少しお待ちください」
店員さんが計算を始めた。
ゴスロリ風のワンピースが6枚、ロリータ風ワンピースが2枚、スカートの中にはく膝上丈のカボチャぱんつが3色、ショートブーツ、ぽこっとした靴。
店員さんが計算している横で、さらに増えていった。ついつい目についたものを追加してしまった。かわいい下着、きれいなタイツ、キュートなソックス。どれもかわいいんだもの。
でも、エプロンはないのよね。頭にメイドっぽいカチューシャも欲しいところだけど、ないよね。
「お客様、こちらの分もあわせますと全部で、銀貨21枚と銅貨60枚になります」
(わぁおっ! 持ってるお金で余裕で買える!)
「じゃあ、全部ください。えっと、いま着替えたいんだけど」
「はい、試着室をご利用ください」
私が、金貨1枚を出すと、店員さんは驚いた顔をした。まぁ、そうよね、私みたいな子供が金貨を持ってるなんてね。
「あ、あの、両替に行って参りますから、少しお待ちくださいませ。あ、ゆっくり着替えていただいて……」
店員さんは慌てて、奥にいた別の店員さんに金貨を両替に行かせた。買い物に金貨は不便なんだ。銀貨の方が使いやすいのね。
オルガくんは、なぜか真っ赤な顔をしていた。あっ……しまった。オルガくんが立っているすぐ近くに、私は下着をいっぱい広げてしまっている。
「あ、店員さん、ごめん。出しっぱなしで……」
「いえ、大丈夫ですよ。すぐに片付けますから。あっ、男の子には刺激が強かったですね、ごめんなさいね」
さすがよく見ているわね。店員さんは、オルガくんのフォローもキッチリしてくれている。こういう気遣いってポイント高いよね。けっこう勉強になる。
私は、黒のゴスロリ風ワンピースに着替えた。スカートは何枚重ねなんだろ? 一番内側が白くて膝丈くらい。その上には少し短めの光沢のある黒、その上はさらに短めの薄い生地の黒。
くるりと回転すると、スカートがふわっと広がって、スカートの中に、はいている白いカボチャぱんつが見えてしまう。
うん、これはカボチャぱんつ必須ね。逆に言えば、カボチャぱんつをはいているから無敵だわ。いやいや、無敵って何よ……いったん落ち着け、私。
あまりにもかわいい服を着ると、テンションが上がりすぎて壊れてしまうみたい。気をつけなきゃ。変な人になってしまう。
白いふわふわのソックスを履いて、靴はぽこっとした黒い靴を履いた。うん、完璧。
着替えが終わり、着ていた服をまとめていたら、店員さんが袋に入れてくれた。買った他の服も合わせると、かなりの量になってしまった。欲張りすぎ、反省。
「お客様、魔法袋はお持ちじゃないですか?」
「持ってないです」
「そうですか。小さな物で良ければ、取り扱っていますがいかがですか? これくらいの荷物ならすべて収納できますよ。腰に装備すれば何の重さも感じない優れものです」
すると、オルガくんが割り込んできた。
「アニスちゃん、小さな魔法袋は使えないから、買うならダンジョン産の容量の大きなものがいいです」
「そっか。でも、荷物たくさんあるよ? 買い物しすぎちゃった」
「大丈夫です。これも魔法袋なので、ぼくがお持ちします」
そういえば、オルガくんは、肩から布袋を下げている。
「じゃあ、お願いしちゃおうかな」
「はいっ、お任せください」
オルガくんは、嬉しそうな顔で買い物袋をせっせとカバンに入れていた。手をかざすだけで、スッと消えるのね。
「お釣りお待たせしました」
店員さんからお釣りをジャラリと渡された。うーん、財布がパンパンになってしまうのは嫌だな。
私は、銀貨78枚は財布にいれ、銅貨40枚はオルガくんに渡した。
「えっ? アニスちゃん、これは?」
「財布がパンパンになっちゃうから、あげる。荷物持ってもらうし」
「ぼく、こんな大金困ります。小遣い制だし、父ちゃんに叱られる」
「じゃあ、これで甘い物をおごってもらおうかなー。財布がパンパンになったら、かわいくないもの」
「はぁ、うーん」
そう言いつつ、オルガくんに銅貨を押しつけた。
「仲良しさんですね。ご姉弟かと思ったけど違うんですね」
「この子は、ウチの店の店長の子なんですよ」
「まぁ、そうなんですね。何のお店かしら?」
「食堂です。ここからは少し遠いけど」
「あら、また機会があれば寄らせてくださいね。1206番地の端の方なのかしら?」
「いえ、1204番地です」
「じゃあ少し遠いわね。何て名前のお店かしら?」
そういえば、私は店名を知らない。オルガくんの方を見ると、口を開いた。
「名前は変わるかもしれないけど、ひまわり食堂です」
(ひまわり食堂? 店のイメージとは違いすぎる)
「わかったわ。あちらには友達がいるから、探してみようかしら。こういう出会いのために、私はこの仕事をしてるようなものだから。うふっ、楽しみだわ」
私達は、店を出て、さっきの道を戻った。
「アニスちゃん、ほんとにあの大きな店に行くんですか」
「当然! ワクワクするよねー」
オルガくんは複雑な表情をしている。闇属性は立ち入り禁止だなんて、差別だよね。
入り口で、魔族の警備員に止められた。
「お客様、当店は子供や一部の特殊な属性の方の入店は、お断りしております」
「ねぇ、それって私に言ってるの? さっき、大天使様にお会いしたのよ。入店を拒否されたって言ってこようかな」
「えっ……あの」
「大天使様って、魔族が嫌いみたいね」
「俺は人間ですが」
「うふっ、私、嘘つきは嫌いなの。殺したくなっちゃうんだもの。なんだかまだ不安定でさ〜」
「げっ、転生者!? でも、子供連れは」
「子供じゃないよ」
「どう見ても子供ですが」
「もうっ、仕方ないなー。魔法を解いてあげるわよ」
私はオルガくんに、変身魔法と幻惑魔法をかけた。意外にもイケメンになっちゃった。なぜかアブ兄に似ている……あはは。
「あれ? 魔族じゃないんですか。闇属性の魔力を感じると思ったのに、魔法のせいだったのか」
「ふぅん、魔族なのに見抜けないんだ」
「あ、いや、あの……。足止めをさせてしまい申し訳ありません。どうぞ、いらっしゃいませ」
(ふふっ、ちょろいわね)




