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118、アニス、カフェバーで相談する

「アニスちゃん、いいこと思いついたって、カフェ体験?」


「それとは別だよ、リンちゃん」



 カフェ店員が紅茶を運んできた。あれ? アイスボックスクッキーを紅茶の受け皿に一枚置いてある。


「お待たせしました、お嬢様。紅茶はおかわり自由です。お気軽にお申し付けください。新作の持ち帰り用クッキーを添えております。ご試食くださいませ」


 カフェ店員は、リン、お姉さん、私の順に紅茶を置いた。レディファースト、若い子ファーストができてるね。


 別の店員が、パフェとカクテルとポテチを運んできた。どれを誰に置くのか迷ってる。私が全部注文したもんね。


「やみつきパフェはリンちゃん、スクリュードライバーはお姉さん、ポテトチップスは真ん中に置いて」


「はい、かしこまりました」


 パフェには、葡萄飴も飾ってある。彼女は、小さくアッと声をあげていた。


「アニスちゃん、これってキウイ飴のぶどう版?」


「そうだよ。飴でコーティングするとツヤツヤになるから、飾るとかわいいの」


「キウイ飴もかわいかったよ。あっ! ポテチ?」


「うん、懐かしいでしょ」


 彼女は、うんうんと頷き、手を伸ばしている。


「うす塩味だね。でもなぜ、カフェにポテチ?」


「甘い物に飽きたお客さんの無茶振りがあってねー。それから定番メニューになったの」


「カフェにも、そんなお客さんいるんだ」


「うん、勇者ご一行様だったみたい」


 彼女は、なるほどという顔をした。スーパーも勇者のクレームがあるのかも。


「スクリュードライバーなんて名前も、懐かしいよ」


「リンちゃん、お姉さんのまで奪う気? ふふっ」


「私の娘なんだから、いいでしょ」


 彼女は、お姉さんが飲む前に奪ってる。パフェが食べたかったんじゃないの?


「あら、それなら、私がパフェをいただこうかしら?」


「それはダメよ。パフェは、私のなんだから」


 彼女の娘は、母親をからかって遊んでいるのね。ふふっ、なんだか不思議な関係ね。


「リンちゃん、子供パワー全開ねー、ふふっ」


「アニスさん、そうなんですよ。ほんと、母ったら、最近子供っぽさが半端なくて」


「反抗期かしら? リンちゃんって、自己転生して5年くらいでしょう? 見た目は10歳くらいだけど……」


「そうですね。5歳児だと考えれば仕方ないわ」


 彼女は、ふふっ、ふふっと低く不気味な声を出している。リンちゃん、それ、コワイんだけど〜。


 そっか、その声、機嫌が良いときの笑いなのかも。





「で、アニスちゃん、いいことって、葡萄飴?」


「違うよー、ちょっと待っててね。いま接客中みたいだから」


 私は、カフェ店員に、あの二人の手が空いたら、ここに来るように伝言を頼んでいた。二人揃うまで待っているのかしら? 若い方は、厨房にいるみたいなんだけど。


 リンは、パフェを食べながら、ポテチにも手を出し、幸せそうな顔をしている。懐かしさもあるんだろうけど、やはり娘さんと一緒に、奪い合いながら食べるのが楽しいみたい。


 うん、リンちゃんが楽しそうで、よかったよ。気分転換になったかなぁ?


 超神会議で、彼女を連れてきた超神の声が、私の頭の中に、今もまだ鮮明に残ってる。


 操りの神の言葉だからかな? でも、それ以上に、不遇すぎる状態を訴えていたのが、印象的だったんだと思うの。


 だから、そんな彼女が笑っていられる時間を作ってあげたいと思う。この店は、いろんな運命を背負った人達の癒しの場なんだもの。



「お待たせいたしました。ご指名ありがとうございます」


 悪戯っ子のようにウインクをして、ウィルさんが席にやってきた。すると、二人は驚き、真っ赤になって固まってる。


「ちょ、えっ、あ、あわわ」


「リンちゃんは会議で会ったよね? お姉さんも知り合いかしら? ウィルさんです。店の防犯を兼ねて、カフェバーのお手伝いをしてくれているの」


「大天使様が親しくされているから、存じていますわ」


 お姉さんは耳まで真っ赤ね。リンちゃんの赤面症が遺伝したのかしら。


 それを面白いと思ったのか、彼はお姉さんの真正面の席に座った。私の隣ともいうけど。


「アニスさん、彼はまだ時間かかりそうです。先にご用件を承ります」


「そう、わかったわ。ちょっと相談があるのよ」


 私がそう言うと、彼は目を輝かせた。


「アニスさん、貴女のためなら私は何でもいたします」


 その彼の様子に、母娘二人は、ポカンとしてる。


「リンちゃん、お姉さん、どうしたの?」


「えっ、だって、超神がいないのに敬語……」


「ウィルさんって、普段は俺様系?」


 二人は同時に頷いた。そっか、いつもの接客態度は随分俺様な感じだけど、あれでも丁寧なんだと誰かが言っていたっけ。


 ウィルさんをチラッと見ると、苦笑いをしている。ふぅん、でも、私にはいつもこんな言葉遣いだよね。やはり呪いのことを気にしているのかしら。


 彼はコホンと咳払いをした。


「アニスさん、あの、どのようなご相談でしょうか」


「さっきね、リンちゃんの店にクッキーを届けに行ったんだけど、属性のない魔族が襲撃してきたの」


「おや、それはまた楽しそうな……あ、いえ、大変でしたね。アニスさんが制圧されたんですか」


 ふぅん、噂どおり、ウィルさんって戦闘狂かも。私も人のことは言えないんだけど。


「私は暴れてないよ。あちこちバリアを張って店に被害が出ないように準備ができたとこで、うっざい邪魔が入ったの」


「あらら、警備隊か保安隊かでしょうか」


「何かわかんないけど、大天使様の治安部隊ね」


「そうでしたか、残念でしたね。では、大天使の牢にご一緒しましょう。ご案内しますよ」


 ちょっと待って。何か勘違いしてない? ウィルさんは、好戦的な笑みを浮かべている。


「ウィルさん、私は別に彼らを始末したいわけじゃないわ。もう、どうでもいいもの。でも、もし再びリンちゃんの店を襲撃したら殺しちゃうかも」


「ほう、アニスさんは寛大でお優しいですね。素敵ですよ」


 また大げさなことばっかり言ってる。変な人ねー。


 私の心の声が聞こえたのか、ウィルさんはまた苦笑いしてる。


「では、ご相談とは?」


「狙われやすい店に、防犯店員を置けないかしら?」


「えっと、私がアニスさんの店を手伝っているように、ということでしょうか?」


「うん、そう。治安維持は、大天使様が願われていることでしょ? ギルドにそういう募集を出してもいいと思うの」


「属性のない魔族を抑えられる戦闘力が必要ですね。しかも、かなりの人数が必要です」


 ウィルさんは、難しい顔をしている。


 あっそうだ! いいこと思いついちゃった。



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