第六話 「領主令嬢」
いや~しかし昨夜は参ったな。
クラリスには庭の事で叱られ、ブルーノはよく分からないが家族に迷惑をかけるかもとか言って謝ったかと思えば夜遅くまで庭掃除させられるし、まあ最後のは自業自得だけど。
おかげで今朝から稽古は家の裏側にある丘の中腹まで来てやっている。
その丘に今、ブルーノと一緒に朝の稽古をしに来ているがブルーノときたら、まだ心ここに在らずと言った感じだな。
「父様」
「……………」
「父様!」
「……………」
「父様!!」
「んあ?…な、何だ?ヴィンス急に大きな声出して」
完全に呆けているなブルーノときたら…。
「急に大きな声を出してはいません。先程から呼んでいたのですが」
「あ?ああ、そうか……何だ?」
「昨日デュークさんに実践的な稽古をつけて頂きましてなかなか筋が良いと褒められました。そこで父様にも見て頂きたくて1つ実戦稽古をつけて頂けないかと…って、父様!?聞いてます?」
「あ?あ、ああ、聞いているとも。実戦稽古な、いいだろう」
ブルーノは何だか生返事で答えるとフラフラと夢遊病者みたいに歩き出し近くの木の枝を取った。
「よし、来い」
右手で枝を中段に構えるブルーノ。
大丈夫かな?
そう不安に感じながらも俺も中段に構える。
例の抜刀術ではボーっとしているブルーノには危険だと思うからだ。
「行きますよ?」
「ああ、来い」
大丈夫かな…??
俺は一足飛びに間合いを詰め俺の間合いに入ったところで上空へジャンプ!
ブルーノの頭に狙いを定め枝、もとい木剣を振りかぶる!
ハッとするブルーノ!
防御しようと右手の枝を上げるが間に合わない!
俺の剣も今更止まらない!
!!
乾いた木の折れる音が朝の静かな丘に響き渡る。
「と、父様!?」
ブルーノは白目をむきながら仰向けに倒れる…!
俺は着地と同時にブルーノに駆け寄る!
「父様!大丈夫ですか?!」
ブルーノは白目をむいて泡を吹いている。
まずい!!
まだ治癒魔術を使えない俺は猛ダッシュで家に帰りクラリスを呼んできて治癒魔術を施してもらう。
「が…っは!!!」
治癒魔術をかけられブルーノの意識が戻った。
「父様!大丈夫ですか!?」
「あ、ああ、大丈夫だ…」
頭をさすりながら首を左右に振りながら答えるブルーノ。
「あなたどうしたの?ヴィンスは剣の才能があるってデュークが言ってたけどまさかヴィンスに一撃入れられて気を失うなんて…!」
「ああ、ちょっと油断してたな…」
首をコキコキと鳴らしながらもバツが悪そうだ。
「油断というより考え事していたのでは?」
「…ああ、そうだな」
「昨日は僕に稽古中考え事するなって怒って僕の剣を取り上げたのに?」
「こらヴィンス!!お父さんになんて口の利き方してるの!?」
クラリスが俺を咎める。
「ごめんなさい父様、口が過ぎました…」
確かに昨日剣を取り上げられた事を根に持った卑下した言い方だった。
「いや、クラリス…ヴィンスのいう通りだ、稽古とは言え油断していれば大怪我する。俺がいけなかった。
分かったなヴィンス、油断したり他の事に気を取られているとこうなるって事だ」
「はい。父様」
何だか調子が狂うな…。
「ま、まあ、とりあえず今朝の稽古はこれ位にしてみんなで朝食にしましょ、ね!」
クラリスが場の空気を読んでか一旦仕切る。
「はい!」
実は昨日から体動かし続けているからか腹ペコだったからちょうどいい。
「しかし、ヴィンス。見違える程の剣技だな」
「はい。剣術は大変面白いです!」
やはり褒められると気持ちがいい。
「はいはい。早く朝食にしないとブルーノは仕事に遅れちゃうし、ヴィンスはデュークとの稽古に間に合わないわよ」
「はい!」
「……………」
ブルーノの表情が冴えない。
やはり昨日言ってたお咎めとやらが気になるみたいだ。
~
皆で朝食をとった後ブルーノは仕事に行き、俺はデュークさんとの稽古前に準備運動をしながら体を温めていると程なくしてデュークさんが来た。
朝と同じ、丘に移動しての稽古だ。
「なぁ、ヴィンス。ブルーノの奴、少しは調子戻ったか?」
「いえ、まだ何か引きずってるみたいで…心ここに在らずって感じです」
「そっか…」
あえて俺に一本取られて気を失った事までは言わなかったがデュークさんも何となく分かっているだろう。
「ようしヴィンス、ここなら思う存分闘えるな!」
「はい、お願いします!」
~
稽古を始めて1時間位経った頃だろうか?
家の方にブルーノらしき姿が見えた。
「デュークさん!あれ、父様じゃないですか?」
「んあ?こんな時間にブルーノは帰って来ないだろ」
「でもあれ、ほら!」
「ん?あ、ホントだ、ブルーノじゃねーか。どうしたんだ?行ってみるか」
「はい!」
ブルーノに話を聞いたところ取りあえず処分が決まるまで自宅謹慎との事で帰って来たとの事だった。
取りあえず今何か出来る訳でも無いから俺はいつも通り過ごせと言われたのでデュークさんと再び丘に戻り稽古を続けた。
その後、家へ戻り昼食をとり休憩していると家の扉がノックされた。
もしかして、ブルーノの処分が決まって担当者が通達に来たのかな?
「は〜い」
クラリスが対応に出た。
「ヴィンス~、ソフィーちゃんよ~!」
「え?俺?」
俺に来客??誰?と一瞬思ったが、今の俺にこの世界に知り合いはいなくとも前の俺に知り合いがいても不思議じゃないか。
そう思い玄関に行くと女の子がいた。
黄色っぽい金髪のセミロングで毛先がゆるく巻いてる女の子だ。
俺より2~3才年上だろうか?
二重の大きな目で瞳の色が紫色なのが印象的だが、口はへの字に曲げ何やら見た感じ不機嫌そうだ。
服装は特段派手と言った感じでもなくただの赤いワンピースだが何やら育ちの良さというかお嬢様オーラを発している気がする。
「……髪の毛、ホントに金色になったのね、聞いたわよヴィンス、あなた『きおくそうしつ』になったらしいじゃない」
え?誰?とか言いたかったけど取りあえず機嫌が悪そうなので相手に合わせる事にした。
「はい、そうなんです。だから君の事も思い出せないので、名前を伺っても?」
「くっ…この私の名前まで忘れるとは……ま、まぁ、仕方ないわね…ソフィア・カルヴァートよ。思い出したでしょ?」
「すいません。思い出せません」
「ぐっ…。ふ、ふん!分かった、照れてるのね」
「いえ違います、思い出せないのです」
「ちっ…!な、なかなかいい度胸じゃない?この私を前にして…」
「いい度胸ではありません。思い出せないだけです」
実際思い出せないのだから仕方ないと思うのだがソフィアと名乗る女の子はますます機嫌が悪くなっているのが分かる。
「ヴィンスゥ~あなた…きおくそうしつなのをいい事に随分と生意気になったんじゃない…?」
「生意気も何も記憶な無いのは事実なので…」
「ま、まあまあソフィーちゃん、ヴィンスも。取りあえず中に入ってお茶でもどうかしら?」
今朝と言い、なかなかクラリスは空気を読むタイプみたいだ。
まぁ、俺的にはなかなか面白い子だと思って半分楽しんでいたのだが。
「ク、クラリスさん、ありがとうございます。それではお言葉に甘えて」
ソフィアちゃんは組んでいた腕を解き、優雅に頭を下げクラリスにお礼を言う。
「ええ。どうぞ、入って。ソフィーちゃんは相変わらず礼儀正しいわね。流石貴族の子は違うわね」
へぇ〜。このソフィアちゃんって子は貴族なのか?
貴族でも平民の家に遊びに来たりはアリなのか?
「クラリスさん、貴族とかは関係ありません。私はデューク師匠の弟子でありヴィンスのお友達としてここに来ているのですから階級の事は口になさらないで下さい」
「そうね。ソフィーちゃんは貴族ぶらない優しい子だもんね」
「だからクラリスさん、私を貴族として見ないで下さい。私はヴィンスのお友達なのです。そうでしょ!?ヴィンス」
「いえ、だから記憶喪失なので覚えていないと…」
「ヴィ、ン、スゥ、そこはウンっていうトコでしょ」
「あ、ウ、ウン…」
「ふん!分かればいいのよ」
ふぅ~、やれやれだぜ。
廊下を進み居間に入る。
「ブルーノさん、御機嫌よう…って感じでは無い……ですね」
「おう、ソフィーちゃんか。流石領主のカルヴァート家には筒抜けだな」
長椅子に座っているブルーノがソフィアちゃんに答えるが今、領主って言った?やっぱりソフィアちゃんはお嬢様の様だ。
「バルドックの家で何やら揉めたとか揉めないとか…」
「揉めたんです」
「ヴィンス!話の腰を折らないの!」
期待通りのツッコミ、やはりクラリスは空気読むなぁ。
「ま、まぁ、あのバルドックの事です。どうせ理不尽極まりない事を言ってきたのでしょう。私もブルーノさんも本意では無いでしょうけどブルーノさんが許可して下さるならウチが間に入ってバルドック家を黙らせる事も出来ますが?」
「いや、気持ちはありがたいが遠慮しとくわ。身から出た錆って奴だ、カルヴァート家にはまったく持って関係ねー話だ」
ブルーノは伏目で覇気なく答える。
「ブルーノさんならそう言うと思ってましたが、私がヴィンスとお友達と言う理由では理由になりませんか?」
「ヴィンスとは引き続き友達でいてくれりゃ本当にありがたい。だからこそだ、息子と息子の友達を引き合いに出して保身したとあってはギャレット家は世間のいい笑い者だ」
「まぁ、家名を重んじる気持ちは分かりますが…」
ソフィアちゃんも何だが力になれず申し訳なさそうにしている。
「そう言う事だ、ソフィーちゃんが気にする事じゃねーさ、で?今日もヴィンスと一緒にデュークと稽古か?」
「え、ええ、そうですの。今日もこの私が師匠との稽古ついでにヴィンスと遊びに、もとい鍛えてあげに来たんです」
パッと切り替えができる子みたいで明るく可愛らしい表情を見せるソフィアちゃん。
「そうか、ヴィンスの奴、記憶が無くなった上に性格も変わってるから面白いと思うぞ?」
「…みたいですね。面白いかどうかは分かりませんけど確かに性格は変わったみたいですね」
そう言ってソフィアちゃんは俺の方を見るが、今の今までブルーノと家名やら領主やらの話をしていたのを端から見ていた俺は何だか気後れする。
「あ、よ、宜しくどうぞ…」
かぁあ…!!とっさに出た言葉とは言えこんな幼い女の子に俺は何、恐縮してんだ?!
さっきまでの威勢の良さはどうした?俺!
「あら!?ようやくいつもの感じになったじゃない?まぁ、さっきまでのヴィンスも嫌いじゃなかったけど?」
「そうですか、ならさっきまでの感じとやらで失礼します」
「……やっぱり何かムカつくわね」
ソフィアちゃんはキッと目を吊り上げ俺を見る、いや、睨む。
「お!ソフィーちゃん来たか?」
デュークさんも居間に来た。
「あ、これはデューク師匠、御機嫌よう。今日も宜しくお願い致します」
ソフィアちゃんはクラリスが言う様に礼儀正しい。
「だから師匠はやめろっての。貴族のソフィーちゃんに師匠なんて呼ばれたらくすぐったくて仕方ねー」
「師匠は師匠ですわ。デューク師匠の魔術指導は貴族専属の教師なんかよりよっぽど身につきますもの」
ん?魔術とな?今日は魔術を稽古するのか?
「貴族専属教師より身につくかどうかはさて置き、俺としては楽しんでくれてるなら何よりだ」
「ええ、楽しみながら学ばせて頂いてます」
「んじゃ、早速魔術の稽古と行くか?」
やっぱり魔術だ!剣術も楽しいけどやっぱ魔術、使ってみたいよね~。
「お願いしますと言いたいところですが、ヴィンスがきおくそうしつになって私の事も忘れたみたいですから稽古の前に少しヴィンスと遊びながら話でも出来ればと思っているのですが」
そう言いながらソフィアちゃんが俺の方を見る。
「ああ、そりゃ構わねーぜ。ヴィンスもソフィーちゃんと遊んで何か思い出すきっかけがあるかも知れねーしな」
「あのぉ…僕ならソフィアちゃんと遊ばなくてもいいのですが……それより僕も魔術を是非とも学びたいですし」
「な!?ヴィンスぅ〜あんた、この私が遊んであげるって言ってるのに私と遊ばなくてもいいですってぇ〜?」
「はい。それより魔術の方が学びたいです」
「私と遊ぶ事が、そんな事よりですってぇ〜?」
ソフィーちゃんは信じられないと言った表情、と言うよりはそれを通り越し頭に血が上ったのか目を白黒させている。
「そんな事よりとは言ってません、それよりって言いました」
「どっちだって同じよ!!ヴィンスあんた私をバカにしてるわね?」
白黒させていた目が吊り上がり怒り心頭って感じだ…。
「バカにはしてませんが面白い人だなぁとは思ってます」
「な、な、何ですってぇ〜?面白いのはあんたの顔でしょ!!私をバカにしたら許さないんだからね!」
ソフィアちゃんは俺の顔を指さし怒り心頭って感じで怒っている。
「はぁ…やれやれ。やはり貴族様だからプライドが高いのですね…」
「だからさっきから貴族だとか階級の話はするなって言ってるでしょ!!」
ちょっとやり過ぎたかな…?
「じゃ、じゃあ何で上から目線なんです?」
「私の方がお姉ちゃんだからに決まってるじゃない!!」
ああ…そうか!ソフィアちゃんはお姉ちゃんだから俺に対して上から目線だったのか。
実際、貴族とか階級を引き合いに出されるのを嫌ってるしな。
「ごめんなさい。ソフィアちゃん。僕が調子に乗りすぎました。」
「っ!? な、な、何よ?いきなり謝って…ま、まぁ分かればいいのよ、分かれば」
ソフィアちゃんはホント面白いな。
顔を真っ赤にしながらもお姉ちゃんぶって、まぁ中身がおっさんの俺から見たら可愛いお子様だ。
「ソフィアちゃん!これからも僕と友達でいて下さい!」
「っ!?ど、ど、どうしたって言うの?ヴィンス、生意気だと思ったら急に改まって友達でいてくれだなんて…!」
俺の態度の急変に少しだけどぎまぎした感じを見せるソフィアちゃん。
「ま、まぁ、仕方ないわね!い、いいわ。ヴィンスがそこまで頭下げて私と友達でいたいって言うなら、と、友達でいてあげたっていいんだから…!」
「はい!ありがとうございます!」
頭は下げてないが…ま、いっか!
俺は俺自身にこの異世界で初めて出来た友達に手を差し出す。
「な、な、な、何よ?手なんか出して…?」
「いえ、記憶を無くしてから初めて出来た友達なんで改めて宜しくお願いしますという事で」
「ふ、ふん…!この私と握手出来るなんて感謝しなさいよ…」
「はい!ありがとうございます!」
ソフィアちゃんが照れながら差し出す手を俺は感謝と嬉しさに満ちた気持ちで強く握りしめた。
「ちょ、ちょっと!ヴィンス、嬉しいのは分かるけどちょっとぐらい力加減しなさいよ…!」
「あ、ああ、すいません…。つい嬉しくて…!」
俺は素直に自分の気持ちを言ったが素直過ぎたのか、予想外の返事だったのか、ソフィアちゃんは顔を見る見る赤くして、手が汗ばむのが分かる。
「い、いい加減、離しなさいよ…!ヴィンス!」
「あ、すいません…」
「ふ、ふんだ…!そ、それからソフィアちゃんじゃなくってソフィーって呼んでもいいわよ、と、特別に…!」
ソフィーちゃんは顔を赤くしながら腕を組みソッポを向く。
「いいねぇ…若いってのは」
デュークさんがニヤけた顔で冷やかす。
よく見れば奥のブルーノとクラリスもニヤニヤしながら見ている。
「ちょ!?し、師匠っ!?何冷やかしてるんです?!そ、それにブルーノさんにクラリスさんまでニヤニヤして!?」
「いいじゃないですか!ソフィアちゃん、じゃなかったソフィー、若いって言うのは僕らの特権ですよ?何ならハグしましょうよ!?」
っ!?
ん?
殴られた?
事態を飲み込めない俺は視界に入っている天井と鼻の痛みと口の中に広がる鉄の味から判断した。
確認する為、仰向けに倒れたまま視線を下に向ければ右手を振り抜き立っているソフィーが見えた。
ああ…ソフィーは手が出るタイプなのね…。
学習しました…って、んん???
右ストレートを放った余韻か、はたまたイタズラなそよ風か分からないがソフィーの赤いワンピースの裾がユラユラとなびき花柄の布地が見え隠れする。
へぇ…この世界でもいわゆるパンツは花柄だったりするんだ?
なぁんて考えていたら鳩尾に激しい痛みが襲って来た!!
ソフィーが右足をピンポイント的に俺の鳩尾を踏み潰したのだ!!
擬音効果をつけるなら間違いなくズボッ!!!って感じに見事なまでに鳩尾に突き刺さったよ?
「あんた調子に乗って殴られたクセにどこ見てんのよ?まったく、記憶を失くした代わりにエロさを手に入れたみたいね?」
「す、すいません…」
本来なら『お前みたいなガキのパンツ見たって何とも思わねーよ!』って言うトコだが何故か少し興奮した。
俺ってロリコン無かったよな?あったっけ?
前の体の持ち主の記憶がそう思わせるのかな?
それとも同じ様な年頃だから?
ソフィーがようやく足をどかしてくれ俺はむせびながらも何とか起き上がる。
おーい、パパママ、叔父さん。
息子が目の前で暴力を受けましたよ〜。
「はっはっは、まぁ今のはヴィンスがいけねーな」
「ヴィンス、女の子に対して失礼過ぎるわよ」
「かっかっか!ヴィンス、お前もようやく男の子らしくなったじゃねーか!」
皆、ソフィー寄りだ…。
そりゃそうっスよね〜。
「ブルーノさんにクラリスさん!それに師匠!!笑い事じゃありません!」
プンスカと言った感じのソフィー。
「すまんすまんソフィーちゃん、だけどソフィーちゃんとヴィンスのおかげで少しは沈んだ気持ちが楽になったぜ」
「……な、何ですか?それ」
さっきまでしょぼくれてたブルーノも少し顔色が良くなった。
「父様の気持ちを楽になったなら良かったです。僕は大分痛い目にあいましたが…」
「んじゃヴィンスよぉ、今度俺が美人なおねーちゃんがお茶淹れてくれる店に連れて行ってやるぜ?」
「デュークさん!マジっスか!?」
「…ヴィンス?」
「はい?」
っ!?
ソフィーに呼ばれるがまま振りかえるとソフィーに左フックのいいヤツを貰った!!
う〜ん…ソフィーは右左打ち分けられるのね…。
「ほら!ヴィンス!!さっさと立ちなさい!行くわよ!?」
や、さっさと立てって……貴女の左フックで脳がぐらんぐらんに揺られてんスけど…。
「ほら、ヴィンス、早く行かないとソフィーちゃん行っちゃうわよ?」
や、ママン…だから脳が…。
「ヴィンス?いつまで効いたフリしてんだ?」
や、ダッド…フリじゃなくって…。
「ヴィンス…さっさと行ってこいよ、魔術の訓練する時間無くなるぞ?」
う…くっ…。
はいはい分かりましたよ、気合いで立ち上がって行ってきますよ。
遠慮無しにズンズン歩くソフィーの尻を追う様に俺はふらつきながらも追っかけた。
「ソフィー、どこまで行くです?」
「……………………」
ソフィーは俺の事など無視してズンズン歩く。
もしかしてまだ怒ってんのかな?
ソフィーは家の裏庭に出て昨日デュークさんと枝という枝を折った木の所まで行きようやく歩くのを止めた。
そしてソフィーが振り向き俺と向き合う。
っ!?
もう1発来る??
身構える俺にソフィーが言った言葉は意外だった。
「ヴィンス、あんた隠し事あるでしょ?」
「へ??」
ソフィーは幼いながらに鋭い眼光で唐突な質問をしてきた。




