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第五話 「落とし前」

 ~~ブルーノ視点~~


 日も傾き掛けた夕方の街を俺は歩を進めながら考える。


 主犯であるガスラン君のトコに行き何をするんだ?…と。


 ヴィンスが橋から落ちた真相は現場の状況証拠とチャド君とルロイ君の証言から分かった。


 まぁ、それでもヴィンスの髪の色が変わった事と性格が変わった原因は分からないままだが、それはそれとして事故の真相を知ると言う目的は果たしたのじゃないか?


 ならば、ガスラン君のトコに行く理由は?


 謝罪させる?

 罪を償わせる?

 間違いを正し更生させる?

 チャド君とルロイ君が言っていないかも知れない真実があるか追求する?


 きっとどれも理由なのだろう。

 色々な理由があるにしても綺麗ごとを並べ努めて冷静を装っているが要するに俺は腹の虫が収まらないのだ。


 しかし俺は頭を冷やし冷静でいなければならない。


 加害者側の主犯格と恐らくその親も同席するであろう場面で果たして冷静にいられるか?

 相手は偉そうな貴族()だぞ?


 冷静でいられる自信がないなら行くのをやめるか?


 つまりそれはガスラン君がヴィンスにした事を見なかった事、聞かなかった事にすると言う事になる。

 チャド君とルロイ君には説教して主犯にはしない?

 まさか!

 それはフェアじゃない。

 いや、フェアとかフェアじゃないとかの問題では無い。

 俺自身が納得出来ないし、見逃す事は誰の為にもならない。


 ついさっきチャド君とルロイ君に俺自身が言ったではないか。

 家族を守る為なら相手が貴族だろうと王族だろうと引かない覚悟があると。


 なら何故俺はこんな事を考えているんだ?


 相手が貴族だから怖気(おじけ)付いた?

 貴族を怒らせたら自分の立場が危うくなる事に怖気付いた?


 ああ、これだ。

 自分の立場を考えて色々悩みだしたのか…。


 昔の俺なら感情の赴くままに突っ走っただろう。

 処罰やしっぺ返しを恐れる事なく、自分の信じた正義なら突き通した筈だ。


 が、しかし、今の俺には守るべきものがある。


 家族だ。


 愛する息子の為に真実を知りたい、突発的な事故なら無くしたいと言う思いから今回の事故、事件に首を突っ込んだ筈がその事を突き詰めれば突き詰める程に家族を傷つける結果になるかも知れないと危惧しているのだ。


 俺の感情次第では貴族()の機嫌を損ね、最悪職を失い家族を路頭に迷わせる事だってありえる訳だから。


 じゃあどうする?

 このままガスラン君の所へは行かず家に帰るか?


 いや、それは出来ない。


 家族を傷つけられ黙ってるなんてできる筈が無い!

 それなら貴族()の機嫌を損ねない様に歯に衣着せながらも真実を吐かせ謝罪させる?


 いや俺がしたいのは謝罪させる事じゃない。


 ガスラン君に悪い事は悪いと諭し、2度とこの様な不幸な出来事を誰に対してもさせない様にする事だ。


 本当にそうか?

 何を言ったって、何を引き合いに出しても結局は頭に血が上ってるのを誰かのせいにして鎮めたいだけなんじゃないか?


 などとウダウダとした自問自答しながら歩いて気づけばガスラン君の家の前に俺はいた。


「これはこれは街の騎士ブルーノじゃねーか、ご主人様に何か用か?」


 ガスラン君ん家の門番アルゴスが話しかけてきた。


 えぇい!ままよ!


「あー、ガルロ様と言うかガスラン君はご在宅かな?」

「ああ、ガスラン坊っちゃんはご在宅だが何の用だ?」


「昨日、我が子が世話になったのでな」

「ああ、聞いたぞ。ガスラン坊っちゃんがヴィンスを助けてやったって話だな。そうか、礼でも言いに来たのか?お前にしちゃあなかなか良い心がけじゃねーか、よし、ちょっと待ってろ」


 礼を言いに来た訳じゃ無いが筋肉馬鹿、もとい、用心棒アルゴスは勝手に解釈して中に聞きに行ってくれたので手間が省ける。


 10分位待っただろうか、用心棒アルゴスが戻ってきた。


「おう、ブルーノ。ガルロ様とガスラン坊っちゃんが会って下さるそうだ。ついて来な」

「助かる」


「しかし何だろうな、ガスラン坊っちゃんは礼なんかいいって言ってたが……珍しいな」


 だろうな、やましい事があるんだからな。


 豪奢な門をくぐると石畳の道になっており、左右は立派に整えられた庭になっている。

 門から50mほど進んだところで堅固そうな木の両開き扉の玄関へと辿り着く。


 その両開き扉の玄関脇にこれまたマッチョな用心棒がいて、そいつが扉を開ける。

 こっちのマッチョ用心棒はグレオス。


 アルゴスとグレオスは元々チンピラくずれの賞金稼ぎだ。

 強盗やら暴行、窃盗等で幾度となく捕まったが街の有権者であるこのバルドック家に拾われる形で用心棒として雇われる様になった輩だ。


「分かってると思うがくれぐれも粗相のねぇ様にな」

「………ああ」


 玄関の扉を潜るとすぐ右に玄関ホールから続く部屋?と言うかスペースに招かれた。

 まあ、俺みたいな騎士位じゃ敷居はまたがせないって事だろう。

 簡単な作りだが見るからに豪華なテーブルとチェアがあるが俺は立ったまま待っていると家の中からガスラン君とその父親であり貴族でありこの街の権力者であるガルロが現れた。


 ガスラン親子は俺と同じ位置に降りる事無く一段上から見下ろす形で家からいわゆる土間にいる俺を見る。


「おお、ブルーノよ。何やら昨日の事で礼を言いに参ったとか」


 ガルロは相変わらず濃い顔にイヤミったらしい目つきで人を小馬鹿にした様なトーンで話す。


「は。ガルロ様。今日お伺いしたのはガスラン様にお話がありましてこうして参りました」

「ガスランに話とは何やら固いモノいいだな。それに礼を言いに来たわりには手ぶらと見受けられるが?」


「それがガルロ様、どうやらガスラン様からガルロ様に報告されている話に若干のズレと申しますか解釈の違いがある様でして」

「は?どういう事だ?」


 ガルロのイヤミったらしい目に加え、いい年のくせに妙に整えた細い眉毛がピクリと上がる。


「それにつきましてはガスラン様から改めて話される方が宜しいかと」


 俺はガスラン君を見る。

 するとガスラン君は目を逸らす。


「何だブルーノ?どうやら貴様、礼を言いに来た訳じゃ無さそうだな?何が言いたい?」

「ガスラン様、私から話をしても宜しいですかな?」


 一応、ガスラン君に同意を得てみる。


「質問しているのはこの私だブルーノ。言いたい事があるなら言ってみろ、但し!我がバルドック家を愚弄とも取れる内容ならタダじゃあ済まないがな」

「分かりました、なら私の口から説明させて頂きましょう」


「ま、待て!ブルーノ!ヴィンスはきおくそうしつ治ったのか?」


 ガスラン君が割って入る。


「何故気になりますガスラン様?」

「な、何故…って、そ、それは…」


 返事が出来る訳無い。


「ブルーノよ、貴様…立場と言うものをわきまえろよ?先程から質問しているのは我々だ。貴様ごとき騎士が我々に質問など出来る立場に無いぞ!」


 事態が飲み込めてはいない様だが相当にイライラしているなガルロは。


「失礼ながらガルロ様。私はガスラン様ひいてはバルドック家、更にはこの街の行く末を案じ今日お伺いしたのです」


「礼を言いに来たと言うから会ってやればこの私に貴様ごとき騎士が意見するなどあり得んわ!それが貴様んトコのガキを助けてやった我々に対する態度か!?」


 ガルロのイヤミったらしい目に怒りがこみ上げてきているのが分かる。


「私の息子を助けた……それで良いのですか?ガスラン様?」


 怒りに爆発しそうなガルロの事は放っておきガスラン君に確認する。


「う……くっ…そ、そうだ!それのどこが悪い!?」


「私は先程、現場の橋に行って参りました。そこにあったのは沢山の手形と足跡、これで分かりますかな?」

「そ、そ、それが……な、何だっていうんだよ!?お前の顔見てるとヴィンスを思い出して気分が悪くなるからもう帰れ!それからヴィンスにはもう遊んでやらない、絶交だと言っておけ!分かったな!!」


 やれやれチャド君にルロイ君はわがままな悪ガキだがまだ子供らしい素直さがあったが、ガスラン君ときたら…。


「聞こえただろうブルーノ、貴様の顔など見たくも無いそうだ。私もガスランと同じ意見だ、さっさと引き取れい!この私に余計な力を行使させないうちにな」


「ガルロ様、今のガスラン様と私のやり取りを聞いていれば真実は他にあるとお思いになりませんか?」


「貴様こそ聞いていただろう?貴様ごとき騎士が我々に質問や意見するなどあり得ないのだ!おい!お前ら何ボーッとしている、さっさとこの恩知らずの礼儀知らずを摘み出せ!!」

「「はっ!!」」


 ったく、どうしようもねぇなこのバカ貴族は。


「おい!ブルーノ、テメーは帰れとの事だぜ」


 用心棒グレオスが俺の肩に手をかける。


「おい!聞いて…ってこいつ!?う、動かねぇ」


 グレオスが俺の肩に手をやり揺するがその程度の力じゃ俺は動かせねぇぞ?


「あ?何やってんだグレオス?おい、ブルーノてめぇいい加減にしろよ?」


 うぉ!?流石にマッチョ2人に揺さぶられれば動いちまうな。


「お前ら、責任持ってその生ゴミを捨てて来い、いいな?」


 ガルロは本当の生ゴミを見るかの様な目で俺を見下げ用心棒達に指示を出し家の中に入ろうとする。


「っ!?」

「うぉ!?」


 間抜けた声を出したのは用心棒の二人だ。俺が瞬発的に飛びガルロの進行方向の前に立ったからな。


「な!?」


 ガルロはいきなり進行方向に俺が現れたもんだから驚く。


「土足で失礼致します。ガルロ様、話はまだ終わっておりませんので」


「おい!ブルーノ!!てめぇ早くこっちに戻りやがれ!」

「ぶっ殺されてぇのか!?ブルーノ!!」


 俺に出し抜かれ顔に泥を塗られた格好になった用心棒が慌てて吠えるが知ったこっちゃあない。


「き、貴様ぁ…ふざけるのも大概にしろよ?!」


 細く整えられたその特徴的な眉毛を吊り上げ激昂するガルロは壁に掛けてある剣を抜き取り俺に振りかぶる!

 俺は避けようと思えば避けれたが剣の(きっさき)が届く程度だったのであえて避けない。


 次の瞬間、俺の頬を(きっさき)がかすめた。

 頬を血が伝う。


「話を聞いて下さい…ガルロ様」


 俺は動じる事無く淡々とした表情と声でガルロに訴える。


「私は貴様に帰れと命じたのだぞ?おい!お前ら!!!」

「「はっ!!」」


 慌てて駆け寄った用心棒グレオスが俺を羽交い締めにして連れ出そうとする。


「!?……待て。くっくっく…」


 ガルロの目がイッてる。

 こりゃあ何やら危なさそうだ。


「そのままブルーノいや、賊を羽交い締めにしていろ」


 そういうとガルロは剣を上段に構え間合いを詰める。


 ちっ…仕方ねぇな……。


 俺は羽交い締めにしているグレオスに身を預ける形で後ろに寄りかかり、振り下ろされた剣の柄目掛け右足を振り上げる。


 俺に蹴り上げらた剣はガルロの手から離れ天井に突き刺さる。


「な!?」


 呆気に取られ剣が突き刺さった天井を見上げるガルロ。


 蹴り上げた足に反動をつけ着地すると同時に俺を羽交い締めにしているグレオスを背負い投げの様に前方、つまりガルロに向け投げ飛ばす。


「うぉっ!?」


 逆さまになりながらすっ飛ぶグレオス。

 そのまま天井を見上げていたガルロとぶつかる。


「ぎゃあぁ!?」

「ぐお!?」


 2人は絡まる様にして倒れ込む。


「テメー、ブルーノ!!」


 もう一人の用心棒アルゴスが俺に殴り掛かろうと右手を振りかざし駆けてくる。

 いわゆるテレフォンパンチだ。

 力任せに右拳を馬鹿正直にストレートで打ってくる。

 風切り音が聞こえるんじゃないかと言う位の剛拳だが当たらなければどうと言う事は無い。

 俺は冷静にスウェでかわし右手を振り抜きガラ空きになったアルゴスの背中を押しバランスを崩す。


 するとアルゴスは自分のスピードと体重でバランスを崩し回転しながら倒れる。

 倒れた先にはガスラン坊っちゃんがいるのは計算通りだ。


 大のオトナ3人が一瞬にして倒れる様を目のあたりにしたガスラン坊っちゃんは驚くと同時に股間が濡れている。


「ガスラン様、嘘はいけませんよ。いくら身分が高かろうと、その身分にそぐわない行動は品位を下げるだけです」

「あ…あ……」


 まあ、反省なんかしないだろうな。


「くっ…どけ!このウドの大木が!」


 ガルロは自分に覆いかぶさっているグレオスに足蹴にしてどかす。


「ブ、ブルーノ!!貴様ぁ…貴族の私に対し暴力を振るってタダで済むと思うなよ…」

「私は誰に対しても暴力は振るっておりません。ただ自分に降りかかる暴力を避けたまで」


「ハッ!笑わせる!そんな言い訳が通じると思うか?貴様と私の立場を理解していない様だな」

「貴族と騎士という立場は理解していますが、ああでもして避けなければガルロ様に切り捨てられていましたから致し方なく避けた次第です」


「それが生意気だと言うのだ。貴族に対する、いや高貴な私に対する無礼の代償は貴族ごときの命でも足りんわ」

「命は1人に1つしか無い親先祖から受け継いだ大事なもの。それを身分や階級が違うというだけの理由で差し上げられるものにありません。それは大人だろうと子供だろうと同じです、ガスラン様」


 一応ガスラン君にも言っているつもりだが分かっているのかどうか…。


「何を知った風な事を。それに今、貴様と話してやっているのはこの私でガスランでは無いだろうに!」


「これ以上の論議は無駄の様ですので、これにて失礼致します」


 どうやらこの親子にこれ以上言っても無駄な様だ、せめてガスラン君には伝われば良いのだが……。


「ブルーノ…貴様ごとき騎士、代わりならいくらでもいるという事を忘れるなよ?」

「肝に銘じておきましょう」


「その言葉忘れるなよ?おい!お前らいつまでも座って休んでないでさっさとこのゴミを摘み出せ!!」


「「は、はっ!!た、直ちにぃ!!」」


「要らぬ。頼まれなくともこれにて引き上げる」


 最後にガルロを、そしてガスラン君を見る。

 ガルロは怒りに打ち震え、ガスラン君もまた同じく怒っている。

 はぁ…この親にしてこの子あり、か…。


 俺は明らさまな溜め息を残しバルドック邸を後にした。




 〜



 完全に夜になった街を1人歩き家路につく。


「はぁ…やっちまったな…」


 バルドック家に行く前にグジグジと悩んでいたのは何だったんだ?

 結局の所、感情的になっちまった。


 まぁ、流石に死刑って事は無いにしろ何らかのお咎めはあるだろうな…。


 こっちに言わせれば息子を死の危険に追いやられたっていう大義名分はあるんだがそれを立証するのは難しいだろうな。

 それに貴族であるバルドック邸で暴れた?って言う事実もあるからには立場的には不利だし相手は関係各所に顔がきく。


 家族を守りたかっただけなのに……なぁにやってんだかなぁ俺は…。


 とりあえず家族(やつら)に何て説明するかな…。

 まぁヴィンスの前でわざわざ記憶から無くなった苦い経験を思い出させる必要は無いにしろ、バルドック家にたてついたって言う事を正直に言うしか無いよな。


 また家族に迷惑かけちまうな…。


 そんな事を考えいる内に家に着いた。


「ん?何だ?」


 我が家の庭が荒れに荒れている。


 枝が無数に落ち着いて芝も大部分がはげている。

 何やらちょっとした戦場跡みたいだ。


 よく見れば無数の枝は俺がヴィンスにあてがった木剣の様にも見える。

 全て折れているから一瞬ただ単に枝が散らかっているのかと思ったが木剣としての残骸か?


 考えられるのはデュークとヴィンスだ。

 いや、一昨日まではヴィンスとは考えられなかったが今ならヴィンスだと直ぐに頭に浮かんだ。


 恐らく稽古の跡だろう。

 庭の木の枝も無くなっているし、庭は散らかったままだし、芝ははげてるし、さぞデュークとヴィンスはクラリスに雷を落とされただろうな。


 そんな事を想像していると何だか微笑ましい気持ちになるのと同時に、その何倍も申し訳ない気持ちになる。


 よし!ここはやはり家族に迷惑を掛ける事を素直に謝ろう!


 俺は扉を開け家に入る。


「……帰ったぞ」

「お帰りなさい」


「ねぇあなた!お庭見た?」


「ああ」

「ああって…それだけ?」


「あ、いや、その何だ、デュークとヴィンスか?庭荒らしたのは」

「すまねぇブルーノ…」

「ごめんなさい、父様」

「あなたからもビシッと言ってやって!」


「ん?あ、ああ…その前にちょっと話があるんだが…」

「………………」

「………………」

「なによ?改まって」


 怒られると思っていたデュークとヴィンスは無言で拍子抜けした様な顔をしている。

 クラリスにしても拍子抜けした様な顔だが何を感じている様だ。


「…すまん!!」


「ちょっと何?どうしたのよ、あなた、いきなり謝るなんて」

「お、おい…ブルーノ?」

「父様…?」


「じ、実は…………」


 俺はヴィンスの経緯は割愛し、簡潔に理不尽な事がありバルドック家に行きちょっとした騒動になったと話した。

 その際、自分としては防衛しただけだがガルロとガスラン君に直接的暴力こそ働いてはいないが相手方の警備の者と揉め、結果的にバルドック家に被害を与えたとも付け加えた。


「……………………」


 長い沈黙だ…。

 そりゃそうだな、何せ一家を守るべき立場の俺が一家を窮地に立たせたのだからな。


「ちょっとあなた…」

「…ああ」


 俺はどの面下げてクラリスの顔を見りゃ良いのか分からないまま顔を上げる。


「いつまで一家の大黒柱が頭下げてんのよ」


 っ??予想外の言葉に一瞬言葉を失う。


「……だが、お前らに迷惑かける事になるかも知れねぇんだぞ…」


「迷惑なんか今更?ってなものよ」

「ちげぇねーな、ブルーノの迷惑は昔から掛けられてんから慣れっこだ」

「僕は迷惑かけられた記憶は無いですけど、きっと何とかなると思います」


「お前ら……」


 家族の温かみに目頭が熱くなる。いかん!涙があふれそうだ…!


「そんな事より!!お庭の事の方がよっぽど一大事よ!特にデュークにはビシッと言ってやって!!」

「ちょっと待てよ!姉ちゃん!今の流れだともう庭は良くねぇか?」


「いいわけ無いでしょ!何でいいのよ!ちゃんと後片付けしなさいよね、ねぇあなたからも言ってよ!」

「無駄だねぇクラリス、今ブルーノは反省中でしょんぼりしてんからな」

「はい、記憶喪失の僕から見ても父様しょんぼりしてますね」


 いつもと変わらない姉弟のやり取りに顎に手をやり生意気なポーズをとるヴィンス。


「ちょっとデューク!あんたのせいでヴィンスまで変な影響受けてるじゃない!」

「何だよ変な影響って?いい影響じゃねーか、なぁヴィンス?」


「さぁ?いい影響かどうかはまだ分かりません」

「ちょ、ヴィンス?お前そりゃねーだろ」


「もういいわ!あなた達2人でお庭片付けて来なさい!」

「え!?か、母様?ぼ、僕も?」


「当たり前だろヴィンス、俺とお前は共犯なんだからよ」

「共犯って…デュークさん」

「いいからさっさと行きなさい!」


 ふん…。こいつら…。

 こいつらなりに気ぃ使いやがって…。


「ブルーノ、何1人でニヤニヤしてやがんだ?何だか知らねーけど反省してんならお前も一緒に来んだよ」

「な、何!?」


「そうですね、僕達に頭下げる様な後ろめたい事があるならそうすべきだと思いますよ、父様」

「な!?ヴィンスまで何言ってんだ!?それとこれは関係ねーだろ?!」


「ごちゃごちゃうるさい!いいからあなた達3人とも夜風に吹かれて頭でも冷やしながらお庭を掃除して反省して来なさい!」

「な!?クラリス、お前まで何言い出すんだ!?」


「ちっ…しゃーねーなー、ほらヴィンス、ブルーノ、行くぞ?」

「は〜い…」

「ぐ……な、何で俺が……」


 その後、俺とヴィンス、デュークで庭をキレイに片付けて俺の長い1日は終わったのだった。

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